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178話 言う事聞かない悪い子は

「ドグラスの親父さんは、エルフをモヤシ共みたいな言い方してたケド、何処がモヤシなんだ?」


 アレ、モヤシって言われたの俺だっけ?

 マックスが鞘に入れたままの剣で、挑んでくるエルフをポンポンとぶっ飛ばしていく様を見ながら、しみじみと思う。


「その言い方的にドワーフですかな?」


「え、ああそうです」


「あの肉ダルマ達はエルフが身体強化しないと禄に戦えないとか思ってるみたいですからね、きっと自分達が鈍くさいから嫉妬しているんだと思います」


 肉ダルマって……。 ギャスランさんがこう言うくらいなんだから、エルフとドワーフは結構仲が悪いのか。

 正反対の気質で相容れないと言うより、同族嫌悪な感じなのだろうか?


「なかなか皆さんお強い! 最後はあなたですね!? 装備から見るに非戦闘員ではないのでしょう?」


 四角い顔で角刈りのエルフに挑まれた。

 一応エルフのコードは入手済みで、末尾の2行を変えていけばだいたい対応可能そうだ。

 まあ、見た感じでは、素のままでも対応可能そうだから、スティンクポーションでも投げつけてやれば良いかな?


「もきゅ!」


 俺が、どっこらせ、と戦闘準備を始めたら、マルがマル専用魔導銃を持ってアピールしている。


「ほう、コレは珍しい。 一瞬馬鹿にされているのかと思いましたが、そんな小さなモンスターなのに戦闘可能だと言うことですな? つまりあなたは相当優秀なモンスターテイマーとお見受けしましたぞ!」


 マルがこれみよがしに振り回している魔導銃を見て、角刈りエルフがヤケに張り切っている。


「確かにマルは俺の使い魔ですが、俺自身はノービスです」


「はっはっは、ロットラントジョークですな? 趣深いジョークですね」


 なんか勝手に勘違いしているようだが、まあ良いか。

 マルが戦いたいみたいだし、そういう事で進めよう。

 なんかポ○モンマスターになったかのような気分の戦闘になりそうだが……。


「ではいざ勝負ー!」


「マル! ロード、ショットシェル、スタンブリット!!」


「もきゅ!」


 マルにアリーセがせっせと仕込んでいた射撃指示を出す。

 俺やワトスンが戯れでイロイロ作った特殊な弾丸をマルはちゃんと把握していて、専用のポーチから的確にピックアップし弾を込める。

 今回選んだのは麻痺の状態異常を与えるエンチャントがされた弾が9発一斉に発射される散弾だ。

 ちなみに単発型のスタンブリットも作ってあるが、大型のモンスター用なので人に使うと最悪の場合死に至る。

 取り扱いには十分注意が必要だ。


「ファイヤ!」


「きゅっ!」


 マルが掛け声ともに引金を引くと、低い破裂音が響き渡る。


「あばばばばばば!」


 マルは撃つ瞬間に目を瞑ってしまったようだが、多少狙いが甘くても広がって弾が飛ぶ散弾なので見事に数発が命中し、一瞬にして角刈りエルフの意識を刈り取った。

 なんか、テイザーガンみたいに電気が流れたような気がしたが、麻痺させる不思議魔法が使われているはずなのできっと気のせいだろう。


「なんと、あのような小さなモンスターが一瞬で黄昏の森のカクガーリを倒してしまうとは!?」


「モンスターテイマーとは戦った事は無いな、是非手合せ願おう!」


「おい、抜け駆けするな私が先だぞ!?」


 ワラワラと暑苦しくて、むさ苦しい風体のエルフ達が次々と集まってきた。

 エルフは脳筋なだけでなくバトルジャンキーなところがあるようだ……。


「……マル、リロード、ショットシェル、スタンブリット。 ラピッドショット、制圧射撃だ」


「もきゅきゅ!」


 流石に鬱陶しくなったので、マルの前に散弾式のスタンブリットが詰まったアモ缶を置いてやり、無慈悲に告げる。


「ファイヤ!」


「きゅっ!きゅっ!きゅっ!きゅっ!きゅっ!きゅきゅっ!」


 マルがせっせと弾を詰めて撃ち弾切れになったら再装填してまた撃つという作業を繰り返す。

「きゅっ!」とマルが鳴くたびに、数人のエルフがバタバタと意識を失っていく。


「くっ、手強い! しかしテイマー本人を倒してしまえば!」


「俺自身は無力だと思った? ところがドスコイ」


 マルの制圧射撃をくぐり抜けて俺の元まで肉迫してきたモヒカンエルフ顔面に、ティアーズポーションという刺激性が強く涙と鼻水が止まらなくなるポーションをぶつける。

 ようは催涙スプレーの中身みたいな物である。


「目が、目がああああああ!」


 直撃を受けたモヒカンエルフが顔を押さえてゴロゴロと転がるモヒカンエルフ。

 対人戦はいつの間にかポーションを投げつけて戦うスタイルに落ち着いてしまったな。

 ちなみにではあるが、うちのパーティメンバーに訓練等でコレをやると、うまく投げ返されたり、紙一重でかわされたり、投げた手に関節技を食らったりする。

 酷い目にあうと知っているせいで、叩き落とすとか、弾く等でポーションの瓶を割るような行為をすることはないので割りとフルボッコにされる、主にアリーセに……。

 しかし、的が小さい上に、広範囲に弾をばら撒くマルよりは御しやすいと思ったのか、回り込んで俺の方にも攻撃がそこそこに来る。

 その攻撃をひょーいひょーいとかわしながら、戯れに作った色んな臭いのランダムスティンクポーションを投げつけてやる。


「くっさ!? 肥溜めよりくっさ!?」

「ゲッホゲッホ、何週間も履いた靴下の濃縮された臭いがあああああ!?」

「強烈なおっさんの脇の臭いがするううううう」

「それらが混ざって深刻な障害が起きそうな臭いがああああ!?」


 阿鼻叫喚であるが、効果は抜群なようだ。

 泡を吹いて倒れているものも居るようだが、人体には無害だ。

 ……多分。


 俺とマルに攻撃を仕掛けた者達の末路を見て、後続の挑戦者がパタリと止まった。


「なあ、お前いかないのか?」

「いや、普通に戦って負けるならまだしも、あーなるのはちょっと……」

「外のテイマーってあーやって戦うのか、侮れないな」


 と、遠巻きにヒソヒソとやっている。


「あれは錬金術師ギルドを煮詰めたやつが服を着て歩いているようなものだからね、まともに戦うとは思わない方が良いわね」


 挑戦者が居なくなり、こちらの様子をチラ見していたアリーセが、ヒソヒソやってるエルフにその様な説明をしている。

 よくわからないが、結構酷い事を言われているのではないだろうか?


「さー、調子出てきたぞー。 俺も効果不明な謎ポーションもいっぱいあるから、どんどんかかってこんかーい実験台どもー!」


 ノリノリで怪しい雰囲気のポーションを両手に握りしめて高らかに告げる。

 エルフ達がざわりとしてから一斉に俺から目を反らした。


「そちらから来ないのならこちらから行くぞー! ふははははははははは!」


「えっ!? あ、ちょっ、こっちくんな!」

「ぎゃああ、来るなああああ!」

「くっさ! しかもなんかネバネバしてるううううう!」


 小一時間ほど逃げ惑うエルフを追いかけ回して、その場にいたエルフ全員をぐったりさせたり、気絶させたり、泣かせたりした。


「はいはい、収拾付かないからそこまで!」


「げっふ!?」


 泣きながら逃げるエルフを飽きずに追いかけ回していると、すうっとアリーセが間に割って入り、カニバサミでテイクダウンさせられた。


「突然なにをする、これから体力も気力限界に来たところでさらなる絶望をだな……って、ギブギブ!」


 抵抗を試みるも、テイクダウンと同時に足の関節をガッチリと取られており、そのままアキレス腱固めを食らった。

 バンバンと地面を叩いてギブアップを宣言するが、お構いなしにギリギリと締め上げられる。


「何度も声をかけたけどねー、言ってわからない子はこうなるのよー? もうしない?」


「イエスマム! スイマセンっしたーーー!」


 この日アリーセの徒手格闘のレベルが爆上がりしている事を知ったのだった。

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