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177話 死屍累々

 程なくして、ドリルビートルは手際よく排除され、ゴンドラは再び上昇を始めた。


「せっかく新しい魔導銃を試せる良い機会だと思ったのに……」


「そいつは良かった。 危うく国際問題になるところだったな」


「そうですな、モンスターに襲われる以上の被害を世界樹に与えられたら大変な事になっておりましたね」


 なんか、俺の評価おかしくね!?

 世界樹に被害が出る前提になってるし!


「もきゅ」


 いやマル、さすがご主人じゃないってば

……。


 のんびりと登っていたゴンドラは、ようやく頂上にたどり着く。

 頂上と言っても枝葉の天辺ではなく、世界樹の太い部分辺りの頂上だ。

 ほぼ平坦になるように板で舗装がされており、その上には様々な木造の建物が建っている。

 建物は、別に枝の上にあるとかではなく、普通に建ててあるようだ。

木の板の隙間から、街路樹のように枝が伸び、ところどころに枝の隙間があるのか、穴が開いていたりはするが、いきなりこの場所に連れてこられたら木の上の街だとは思わないだろう。

 俺等が到着したすぐ近くに、先に登っていたゴンドラも見える。

 既に皆は降りて居るようで、無人のゴンドラがロープで固定されている。

 固定用のローブは切ればすぐに使えそうだな。


「なあ、どうしてあっち見ないんだ?」


「なにを言っているんだマックス? 俺は初めて来た場所を、お上りさんよろしく眺めているだけじゃないか」


「そうか、てっきり逃走経路の確認をしているのかと思ったぜ」


「もちろんそれもある!」


「いや、まず状況の確認をしてくださいよ」


 ギャスランさんが、冷静な様子でそう言うので、改めて周りを見回す。

 まず目につくのは、俺のイメージするエルフよりも大分屈強な衛兵っぽいエルフ達だ。

 それが打倒された様子で地面に這いつくばっている。

 そう、這いつくばっているのである!

 その這いつくばっているエルフ達の中心辺りに、先に頂上へとたどり着いていた我がパーティの女性陣が立っている。

 アリーセは背中に「天」の文字が浮かび上がりそうなポーズで立っているし、エーリカは杖を構えている。 空間が揺らいでいるので風の魔法の圧縮された空気が周囲にあるのだろう。

 ワトスンはランチャーの様な魔道具を構えており、ランチャーの発射口からは湯気が立ち上っている。 恐らく既に発射した後だろう。

 パールは箒を小脇に抱え、わざとらしくらい何処かで見たことあるようなスタイリッシュなポーズでトランプのカードを顔の前に構えている。

 


「はっはっは、なんか既視感がある光景だな」


「余裕だなマックス! 俺は直ちに逃走の確保と撹乱の為に設置型の地雷を容易した方がいいと思うぞ」


「マテ地雷は要らねーだろ!? コリンナ様との合流が先だろうが!」


「もっともだ、じゃあコリンナ様を確保した後、世界樹を爆……」


「いやいやいやいや、何を当然のように爆破しようとしてるんですか!? 問題ありませんから話を聞きに行ってください! はい、その手に持った魔道具もしまってくださいね」


 ギャスランさんが俺をなだめてアイテムボックスから取り出した魔晶石爆弾をしまうように言ってきた。

 この魔晶石爆弾は、基本的には魔石爆弾と同じような作りだ。

 大きな違いは、魔晶石取り扱いのセオリーとして結界石が仕込んである事と時限発火装置が着いているだけである。

 まだテストはしていないが、魔石爆弾ではうまく行ったので問題無く使えるはずなのだ。

 爆発の規模がちょっとわからないという欠点はあるが、以前ダンジョンの穴を開けた時から考えれば魔晶石1個で、せいぜい半径500m位の更地が出来る程度だろう。


「この状況で大丈夫だと言う根拠はなんですかね?」


「ドリルビートルを容易く倒したので、プライドを刺激された者達が挑んだのだと思います。 エルフは基本的に強い者に従いますから、腕試しは場所を問わず頻繁に行うんですよ。 いやはや、私も想定が甘かったですな、着いて早々こうなるとは流石に思いませんでしたよ」


 なんとまさかの「エルフは脳筋です」発言だった。

 自然の中で暮らすとなると、繊細では居られないということなのだろうか?

 もう大分俺の中のエルフ像は崩壊している。

 ドワーフはイメージ通りだったのにこの差はなんだろう?



「イオリ先生ーみなさーん、こっちですよー」


 端の方でヘンリエッテさんとグレイさんに囲まれて、優雅にお茶を楽しんでおられたコリンナ様が手を振って俺達を呼ぶ。


「あーはいはい、今行きますー」


 見た目だけで言えば一部修羅場っぽいが、コリンナ様の様子だけ見れば平和そのものである。


「案内の者があそこでのびてますので、ここで少々待つ事になりました。 その間挑まれる事もあるかと思いますが、各自殺さない程度に適当に対処して構わないとジークフリード様より窺っております」


「いやいや、修羅の国ですかここは!?」


 ヘンリエッテさんがしれっと言うので思わずツッコむ。

 よく見ると、テーブルセットの向こう側にも白目を向いて倒れているエルフが数人居る。


「ああ、スミマセンお目汚しでしたね。 今片付けますので」


 ヘンリエッテさんが雑な扱いで視界に入らない辺りまで、白目エルフ達を蹴り出していく。

 あー、うん、この人も逆らっちゃいけない系の人だな。


「いやはや、同胞がお手数をお掛けして申し訳ありませんな、代わってお詫びを申し上げます」


 ギャスランさんが申し訳なさそうにコリンナ様に謝罪をする。


「普通の特使等にはこのような事はしないと窺っておりますけど、力を示さない者に対しては心を開かないとも窺っております。 機会があれば必ず力を示すようにとお父様からも言われておりましたから問題ありませんよ」


「それはそれは、エルフに対してのご理解が深いようで感心いたしますな。 あまり良い風潮ではありませんが、我々エルフは力を示そうともしない相手を下に見る傾向がありますので、ご面倒をおかけしますが対応をお願いします」


 そんな大事なことをなぜ、先に教えてくれなかったのだろうか?

 いや、コリンナ様とかはちゃんと知ってたみたいだけども……。


「いやー、野蛮な風習だと言うのは王都に住んでみて良くわかりましたからな、恥ずかしい部分でしたのでなかなか言いにくかったんですよ」


 ギャスランさんが照れたように笑う。   おっさんがやっても可愛くは無いな……。


「そこの君達、我々と手合せしないかっ!? 先方は遅れを取ったが今度はそうはいかんぞ!」


 早速新手が現れた。

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