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172話 隠されているからこそ

 木彫りのペンダントのような入国許可を示す魔道具を受け取り、マックスを仲間に加えた俺ら一行は、あっさりと国境を越えエルフの国エイヴィヒバウムに入国した。

 

「入国したと言っても、木しか見えんな」


 道は一応あるが、背の高い木々が鬱蒼としており、多少の木漏れ日があるだけで空すらマトモに見えない。

 

「この辺はまだ外界との境界ですからね、もう少しすれば違った風景になりますよ」


 ギャスランさんの説明では、今通っている鬱蒼としたエリアが迷いの森となっていて、ある程度森の中を進むと普通の森になっているのだそうだ。

 まあ、確かに森全部を結界で覆うのは効率が悪そうだしな。


「空から来るものに関しては、無防備なんですかね?」


「通り過ぎるだけならそうなりますね。 とはいえ、空からは普通の木々でも視界は遮りますし、空からというのは非常に目立ちますからね普通に警備隊が対処するんですよ」


「夜陰に紛れてとかはどうなのでしょう?」


「我々エルフは、月のない夜でも生き物であればよく見えるんですよ、ですので見落とすことはありませんね」


 生き物なら見える? もしかして赤外線が見えるのだろうか?

 温度を持った物質は大体赤外線を放出している。 放出される赤外線の量は温度によって変わるので、生き物ならば見えるというのは、ある程度の温度が必要なのだろう。


「生き物ならとおっしゃいましたが、熱い湯の入った湯呑みなどもよく見えたりしません?」


「おや、よくおわかりですね? 理由は知りませんがそういった物も良く見えますね」


 やっぱり赤外線が見えるみたいだ。

 赤外線が見えるということは、当然気になることがある。

 ギャスランさんによって、小声で確認をとってみる。


「夏場の暑い時とか、服が透けて見えたりしませんか?」


「夏に服が透けてしまうのは日差しが強いからではないのですか? 妻や娘が夏場は透け対策を一生懸命やっていますよ」


「すくなくともヒューマンには透けて見えませんよ」


「なんと、そうだったのですか、べつにそういうことを気にしない人が多いのだと思っていましたよ」


 海外のビーチとかで女性がトップレスで歩いているのを見る感じで、そういう文化だと思っていたようだった。

 なんともうらやまけしからん種族だな!


「とはいえ、裸同然に見えるわけじゃないですよ、うっすら下着が透けて見える程度です」


 十分うらやまけしからんです。


「なにをヒソヒソと話しているんだ?」


「エルフがけしからんという話だな」


「あいかわらず、お前の言うことはよくわからなんな」


 しょうがないな、マックスも話に混ぜてやろう。


「実はエルフは……」


「ほう、それは凄いな。 隠し持った武器とかも見ただけで判別できそうだ」


「ああ、確かにそういう類いのものは黒っぽく透けて見えますな」


 おや、そういう方向? 真面目か? 真面目なのか!?

 下世話な話には乗ってこないとでも言うのかこのイケメン野郎は。

 嫉妬の気持ちにかられていたところ、ふとパールがスカートをまくり上げて居るのが見えた。


「なにやってんだ?」


「いやなに、会話の内容からご主人様が見たいのかと思ってな。 使用人としては要望に応えなくてはならぬだろうとな。 ほれ存分に見るが良いぞ」


 仁王立ちでスカートを完全にまくり上げたパールが俺に迫ってくる。


「馬鹿者! 貴様は何も分かっちゃいない! 暴かれた秘密の花園になんの魅力があるというのだ! 隠されているからこそ、そこに夢と浪漫があるのだと知れ!」


 ちっとも解っていないパールに対し、熱く語る。

 そういうのはハプニング性があるか、恥じらいというものが重要だというのに。


「お、おう、そういうものなの……か?」


 俺の気迫に負けパールが後ずさる。


「いやいやいやいやいや、性癖の話でエンシェントドラゴンを引かせるとか、相変わらず斜め上だな」


「もきゅー」


「ほう、ご主人様はアリーセがいないと時々おかしくなるというのかマルよ? ふむ、他の者がそのように言っておったと? なるほどこれがツッコミ不在のボケの辛さとかいうやつか」


 いやまて、それ誰が言っていたんだ!?

 人をツッコミ不在芸人のように言うなし!



「ああそうだ、話は変わるが有耶無耶のまま神剣をまだ見せてもらって無かっただろ? ちょうど良いから今見せてくれよ」


「あ? そーいや、どさくさで忘れてたな、あと神剣じゃなくて神刀だ」


「いや、お前が隠れてなきゃいけないはずなのに、フラフラとあっちこっち出かけてやがったせいだろうが」


「そんな事もあったかもしれん」


「巨大なクレバーファーラットをスパルタ指導しているテイマーが居るって噂が立ってたの知らんのか?」


 そんな話は知らないという事にしている


「おい、目を逸らすな」


「ええい、貴様など神刀ツムガリに触れて呪われてしまえばいい!」


 アイテムボックスからツムガリをとりだし、ぽいっとマックスに投げてやる。

 一応鞘はついているので、切れてしまうということはない。

 マックスは俺が投げたツムガリを流れるような動作でキャッチした。


「ちょ、お前な神剣をそんな粗雑に扱うんじゃない!」


「そうだぞご主人様! それに神聖なアーティファクトに対して、触れたら呪われるとはなんだ! ちょっとそこに座れ」


 割と、本気で怒られた……。

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