161話 女神帰還、竜居残り
なんとか自然派すぎるドラゴンに服を着せる事に成功し、メイドラゴンにする事ができた。
まあ、女性物のアバター衣装がウエディングドレスとか、水着とか普段着るような衣装では無いので、消去法でこれくらいしかまともなのが無かっただけである。
あと、趣味でこのアイテムのコードを持っていたわけではない。 人気のある装備やアイテムのコードはネットから拾ってきて一通り登録がしてあるというだけである。
「歩きにくいし、ちと裾が長くないか?」
オーダーメイドしたかのようにピッタリです。
「って、スカートをたくし上げて中身を見せちゃ駄目です」
レースの真っ白な下着が眩しい。 全裸の時より破壊力が上がったような気がするのは何故だろうか?
「すでに一枚着ているのだから、この巻きついてヒラヒラした服は要らないのではないか?」
「それ大事な部分だから脱いじゃ駄目です! 下着姿で歩き回ろうとしないように!」
全裸もマズイが下着姿もマズイ。 主に一緒にいる俺が!
折角着たのに、早速脱ごうとしている駄メイドラゴンを必死で説得する。
「さあ、これで問題はありませんね? ではパール宜しく頼みましたよ」
「任されよ。 万事抜かりなく遂行しよう」
服着ただけで、今後の生活とか、みんなになんて説明すれば良いのかとか、コレって魔晶石の奉納し損なんじゃないか? とか抜かりだらけで問題が全部解決したわけでは無いのですがー?
大又で歩くし、態度もでかいので、優雅さは全くない。
ん? これはこれでアリな気がしてきたな。
「パール、この魔晶石は上位世界の物ですから非常に内包する魔力量が多く、一気に使用すると調和が乱れます。 30日毎程度で送ってくださいね」
「承知した」
他にも幾つかリーラ様に指示や諸注意をもらっているようだが不安しか無い。
「あ、それで、魔晶石の対価に何が頂けるんですか?」
「なんだ、欲深いヤツだな。 我だけでは不服だというのか?」
いや、あなたは報酬というよりペナルティと言った方が近いような……。
「パール、コレだけ大量の魔晶石を一方的に貰うだけというのは、調和がとれているとは言えませんよ?」
「しかし、異界の者とはいえ、一人に大量のアーティファクトを持たせるのも、調和を乱す事とならぬか?」
なにやら、報酬もバランスをとらなければいけないようだ。
「一人で持つのが良くないのなら、仲間に渡せば問題ないってことなんですか?」
「問題は無いが、アーティファクトを持つものは神の一端に触れる力を得るということだぞ、その事の重大さを理解せよ」
服を着る事の重大さも理解してくれ。
「では、素材などでは駄目でしょうか?」
「素材ですか?」
「神の金属とか神の石とかそういう普通では手に入らない素材です。 アイテムボックスに入る無機物の素材だとなお良しですね」
俗に言うレア素材だな。 好きに色々作れると言うのは完成品を貰うよりも、嬉しいかもしれない。
ただ強い武器というだけなら使い勝手や出来栄えを気にしなければ、ゲームにあった武器や、適当にチートツールで数値をいじってヤレば作れてしまうので、要らないと言っちゃ要らない。
扱いやすくて強い刀剣類というものだけ、作ってくれないし売ってくれないので手に入らなかったから欲しかっただけなのだ。
王都に来たんだし、こっちで買えば良かったじゃないか? と思うのは素人の浅はかだ。
なぜなら武器を購入するためには、身分証明証として冒険者証を提示する必要があるからだ。
最近知ったのだが冒険者証はICカードのような魔道具になっていて、本物であることの証明や個人の情報が入っていて、武具の等の取引履歴や特記事項などが記録されているのだ。 そこに、イオリというフェルスホルストの危機を救ったCランクの冒険者は剣をすぐに壊すので、信用に関わるから頑丈な武器しか売らないように。 と、ドグラスの親父さんからの注意事項が入れられていたのである。
その為、俺はこの冒険者証を使用する限り、剣が手に入らない状況になってしまっていたのである。
「あなたがそれで良いと言うのならばそうしましょう。 どのような素材を渡すかは、その時の世界のめぐり合わせとしましょうか」
ランダムってことですね? わかります。
お試しという事で、さっそく直系10cmくらいのまんまるの金属を1個貰った。
自然の状態では存在しない金属であるそうだ。
ちょっと鑑定してみよう。
《ゴッドメタル》
:神気を帯び変質高純度のミスリル。 現存するアーティファクトの主な材質
加工は非常に困難である。
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ゴッドメタル(素材)1kg
属性 神
品質 S
加工難易度 S
潜在 9999
各種コード
………
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うわ、なんか知らない項目がついてる。 加工難易度はいいとして「潜在」ってなんだろうか?
コレで作った物につくパラメータかなにかだろうか?
アーティファクトの主な材料らしいし、ツムガリの攻撃力が9999だから関連性がありそうだな。
まあ、検証等は後でも良いか。
「ありがとうございます!」
「素材を使うにあたって、一つだけ約束をしてください」
「はい、なんでしょう?」
売るなとかそういうことかな?
「武器を作成する為に使用しないでください」
「え? そんなつまらない……、じゃなくて、理由を伺っても良いですか?」
「強力過ぎるからです。 アーティファクトは持ち手を選び、また本来の力を封印出来るように作られていますが、あなたによって作り上げた武器にはそういったものがありません。 大きすぎる力は調和を乱しますから禁則事項とします」
うーん、つまらないが仕方がないか、防具とか武器じゃない魔道具には使って良いってことだしな。
「あの、例えばこのままの状態でも高速で投げつければ、殺傷能力があるので武器になりえますけど、その辺りの線引きはどうなっていますか?」
「防具であったり道具であったり本来の使用用途が武器でなければ良しとします」
「包丁などは刃物ですが、料理の道具なのでセーフということでしょうか?」
「そうです。 ただし、包丁の持ち手に鍔がついていたり、明らかに武器としての使用が考えられている物は駄目です」
なるほど、一応逃げ道は用意してくれてるのか。
無難に防具を作るのも良いな。
「さて、いろいろありましたが、分体といえどあまり顕現していると、何らかの影響がでてしまうので、そろそろ帰りますね」
「そうか、短い時間であったが久しぶりに逢うことが出来て嬉しかったぞ」
「ありがとうございました! 次元神様にも宜しくお伝え下さい!」
「では、近いうちにまた逢えるでしょう」
リーラ様が微笑み緩やかに手を振ると足元から光があふれた。
「目がああっ! 目があああっ!!」
目を押さえてのたうち回る俺とドラゴン娘を残し、リーラ様は来たときと同じように下界から去っていったのだった。
次に機会があったらサングラスを用意しておこう……。




