156話 女神降臨
「この声はもしや女神!? レベルアップ時の苦痛を無くしてください! 解析ツールを不可視可してズーム機能つけてください! 駄目ならオープンソース化してくれるのでも良いです! 物理法則を無視出来るチート下さい! 元の世界とこっちの世界を自由に行き来出来るようにしてください!」
未だ視力が回復しないが、目の前に現れたであろう女神に思いの丈をぶつける。
「下界へ来て、会った早々に私的なお願い事をまくし立てられたのは初めてです……」
下界とか言ってるし、やはり女神か!?
女神って魔晶石10個で召喚出来るんだなぁ。
「否です。2つ以上でしたら来ましたよ」
「うへい、心を読まれた!?」
「それも否ですね、今のは口に出ていましたよ」
おっと、声が洩れてしまっていたのか。
「と言う事は女神……様は心は読めない?」
「是です。 正確に言えば、おぼろげにはわかると言った所ですね、それと私は女神リーラです。 好きなように呼んで構いませんよ、異界の子よ」
異世界から来たってのは分かってるんだな。
「では、リーラ様とお呼びします。 私はコスイ・イオリです。 太陽系第三惑星地球の日本という国から来ました」
とりあえず、自己紹介されたので、こちらも名乗りをあげておく。
やっと視界がクリアになってきて、リーラ様の姿が見えてくる。
第一印象はなんというか白い。 透き通るような肌に白に近い緩いウェーブの掛かったロングプラチナブロンドヘアーに淡い琥珀色の瞳が印象的だ。
大理石の様な半光沢の質感を持つシンプルなドレスを纏っている。
「分体とはえ神を前にしてその様に平常であるというのは、異界の子であるが故ですか……」
「分体ですか?」
「私自身は確かに女神リーラでありますが、4188番目の分体なのです。 その為十全に力は発揮できません。 これは本体が降臨してしまうと、力が強すぎて周辺環境に多大な影響が出てしまうためです」
よいばばあ? とか思い浮かんだら、なんかほどよい殺気のような物を感じたので、番号にかんしてはそれ以上考えるのは止めた。
「とはいえ、この世界の生物であれば多少なりとも畏敬の念にとらわれてしまうのですが、今しがたのように失礼な念を抱ける時点で、私の管轄から外れた存在だということです」
「よく分かりませんが、12月になれば、唯一の神の子の誕生日を祝い、年末に仏とともに煩悩を流し、新年には多神を祀る神の社に詣でて、神話の神々はとりあえず全部萌え化しとけ的な民族出身です。 この世界に来た理由はわかりませんので、ご存知でしたら是非教えてください」
「とんでもない世界から来られたのですね。 残念ながら、あなたがこの世界に来られた理由まではわかりません。 ただ一つ解ることは、あなたが居た世界はこの世界よりも上位の世界であるということだけです」
リーラ様の話では、少なくとも俺をこの世界に呼んだりはしていないという事だった。
この世界に満ちている魔素や魔力と呼ばれている不思議物質は無くてはならない物で、神様視点で常に不足しているのだが、異世界からの召喚にはこの世界の魔力を大量に消費してしまうのだという。
魔力が不足しているが故に、アーティファクトを与えるという交換条件で魔力の塊である魔晶石を奉納させているのだという。
魔晶石は停滞した魔力の淀みで生成される結晶で世界に循環しなくなってしまった魔力であるため回収して世界に還元をしているのだとか。
そこへきて大量の魔晶石が急に奉納されたので、わざわざ降臨してきたそうだ。
「分体をそんなに増やせるのならば、ご自身で魔晶石を探したりはされないのですか?」
「否です。分体とは言え私自身が長く下界に存在すると、様々な影響が出てしまいますから、それは出来ません。 しかし、何もしていないわけでは無く、使徒を使っての魔晶石の捜索は行っています」
「使徒?」
「はい、5体のドラゴンがその役を担っています。 最近そのうちの1体が行方不明になってしまったので、少し困っているのですけどね」
この話を聞いてギクリとした。
多分俺がさくっとやってしまった奴の事で間違いなさそうだ。
問題はその事をリーラ様が知っているのかという点なのだが……。
「ド、ドラゴンが行方不明になったりするのですか?」
「否と、言いたいところですが是となってしまいました。 神と言えど常に世界を見ているわけではありませんし、ドラゴン達にも自我がありますから、ずっと監視をしているわけでも無いのです。 少しヤンチャな子でしたから、もしかしたら悪戯が過ぎて討伐されたり、封印されたりしたのではないかと考えています」
リーラ様は、心底困ったわーと言った仕草をしている。
よし、バレてないっぽい!
「それはたいへんですねー、ところでわたしがもとの世界に帰る方法をご存知ありませんかー?」
露骨だが話題を変えよう。
「否です。 世界を跨ぐような権限はありませんし、それは次元神の役目です」
次元神とか居るのか、案外その神様が犯人だったりしてな。
探してみるのも良いかもしれない。
「何処に行けば会えるでしょうか?」
「神々の所在や会い方などを教えてはいけないコトになっているので、教えることは出来ません」
「それは残念です。 ちなみにリーラ様は何を司っておられるのですか?」
「循環と安定です。 経済や流通等も循環であることから、商売の神としても信仰されていますね」
「商売ですか。 それで、あんなボッタクリガチャ……もとい奉納をやってたり、寄付募る場面が多いんですか?」
あれ、なんかリーラ様が微妙にバツが悪そうに目を反らしたな。
「それは私自身が推奨しているわけでは無いのですが、少々熱心に行われているようですね」
少々どころでは無いような?
あれか、推奨はしないが、否定もしないと言うやつか?
「あ、そうだ。 この度魔晶石10個程奉納したわけですが、どんな物を頂けるのでしょうか?」
「そうですね、奉納を行うのは英雄であったり国を治める者であったりすることが多く、武器や防具を望む者が多いので、貴方には私の力を込めた神槍を……」
「剣でお願いします!」
「私の力を込めた神槍……」
「剣でお願いしまっす!!」
ここで引いてなるものか、選べるチャンスがあるなら選ぶべきだろう。
「授ける物の変更を要求されたのは初めてです……。 10個もの魔晶石の変わりに渡すものですから、創世以来最も強力な槍ですよ?」
「剣でお願いしまっすっ!!!」
「そこまでですか……。 しかし相性というものがあり、私の見立ではあなたには剣はあまり向いていませんよ?」
「魔晶石追加で出しますので、剣でお願いします!!」
さらに10個の魔晶石を追加で渡す。
「異界の子とは、これ程までに……。 本来相性の悪いアーティファクトは作成負荷が大きく無駄も多いのですが、そこまで求めるのであれば神剣を授けましょう」
俺はリーラ様の目をはばかる事なくガッツポーズを取るのだった。




