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155話 なんか出た

 HPがあっても精神的に即死する目にあったが、身体の調子はすこぶる良くなっていて納得がいかない。

 当初の目的を脱線したのが悪かったな。

 さっきの事は忘れよう……。


「すみません、奉納すると女神様より貴重な物を賜ると聴いたのですが……」


「奉納の方ですね? どちらをご希望でしょうか?」


「どちらと言うのは?」


「ああ、初めての方ですね? これは失礼をいたしました。 ご説明致します」


 聞いたところ、人の多い所でわっしょいわっしょいされながらやる奉納と、奥の祭壇でひっそりと行う奉納があるそうだ。

 って前に寄付で俺がやらかしたやつじゃねーか。

 貴族とか商人が、信仰も蔑ろにしてないよって大衆アピールする目的があるようだが、俺はひっそりやりたいし、出来れば奉納自体も秘密にしたい。


「そういう事でしたらご安心を、ストイックに信仰を示されたい方の為に、最奥の祭壇の貸し切りプランもございます。 日頃生活にお疲れなった時など、1時間銅貨1枚で女神様に心ゆくまで向き合っていただけます」


 プランってなんだよ、リラクゼーションサロンかなにかかよ!?

 医療もやってるしこの世界の宗教施設って、健康関連施設みたいになってるな。

 ってか、そんなんでちゃんとガチャ引けるのだろうか?

 まあ、駄目なら駄目ですっぱり諦めるか、別に困ってるわけじゃないしな。 


「じゃあ、3時間くらいで……」


「承りました。 退出は午後の鐘が鳴るまでです。 こちらを過ぎますと延長料が発生しますのでご注意下さい。 お部屋はこちらの通路を進んでいただいた先3番と書かれた所です。 奉納する御神体に関しましては室内の注意書きをお読みください」


 カラオケルームやネカフェみたいな案内だな!?

 奉納する部屋が複数あんのかよ。


「あ、すみませんブランケット貸して貰えますか?」


「はい?」


「あ、イエ、なんでもないです……」


 さすがにそこまでサービスは無かったか。

 指示されされた通路を進んでいくと、宿のように扉が左右に5部屋ずつあり、扉に番号が振られていた。

 ドアがガラス張りだったらカラオケルームだなこれは……。

 二部屋程、使用中の札がかかっているので、意外と利用者は多いのかもしれない。

 3番と書かれたドアを開け部屋に入る。

 室内は四畳半くらいの広さで、シックなカーペットが敷いてある。

 正面には祭壇が大中小と何故か3つあった。

 大きく金色の女神像を祀った祭壇を中心に、左側が銀色で何やらレリーフっぽい物が祀られている祭壇で、右側が銅でホーリーシンボルっぽい物が祀られている祭壇だ。

 なんというか、表彰台みたいな配置と色だな。

 それぞれの祭壇の下に、手書きの木札があり、注意書きと使用方法が絵付きで書いてあった。

 そこに書かれている内容をまとめると以下のようになる。


 銅の祭壇、銀貨以下の金銭の奉納

 銀の祭壇、金貨以上の金銭及び魔石の奉納

 金の祭壇、一定品質以上の魔石10個、及び魔晶石の奉納


 本当にガチャっぽいな!

 ノーマルガチャに、レアガチャに、プレミアガチャって感じかよ、仕事を思い出すじゃないか、お年玉ガチャがあるから正月休みが無かった事とか……。

 どうせならスペシャルスーパーレア1個確定になる10連ガチャとかも欲しかったな。

 実際はゴミの様な、名前ばかりのスペシャルスーパーレアが出たりして、ガッカリ感が凄かったりするのだが……。


 まあ、せっかくだから全部やってみるか。

 元の世界じゃ内部事情知ってるせいで課金のガチャとか殆ど引いた事無かったしな。


 よくある落とし穴で1%確率で当たるアイテムは100回引いたら1個は当たるだろうと思うのは間違いである。 これは毎回毎回1%の確率で抽選を行うため、実際に100回数引いて1%のアイテムを当てられる可能性は63%なのである。 さらに言えば1万回引いても100%にはならないので、何億円課金しても当たらないという人が出てくる可能性だってあるのだ。

 わかりやすく言えば、1回300円のガチャを引くのに1万円程度の課金をしたとしても、大体10%未満の人にしか当たらない。

 5万課金しても40%以下という、なんとも会社に優しい確率となっている。

 実際は1%より低い確率で設定されているし、その中で何種類も存在するので欲しい物を手に入れられる確率など計算するのも恐ろしい事態になるのだ。


 実際これを知っているせいで、数千円課金しても当たらなければ、もうこれ以降は何十万円も課金しなければ当らないな、と諦めていたわけだが、しかし、しかしである!

 この世界では、お金も魔晶石も無尽蔵に増やせるのでデバッグ時のように幾らでも引く事が出来るのだ!

 まぁデバッグ時は、なぜか確率0,01%のアイテムが幾つも出ちゃったりして、頭の悪い上司がもっと確率下げろとか言い出したりするのだが……。


 それはさておき、取り敢えず銀貨をガチャ、じゃなかった銅の祭壇に奉納してみる。

 手順は、賽銭箱みたいな所に入れて、手前にある水晶玉っぽい物に触れてお祈りすれば良いらしい。

 早速やってみると、賽銭箱の下からポンと木札のような物が出てきた。

 鑑定してみると、お守り的な物のようだ、わずかばかりステータスが変化したり、ほのかに耐性的なものが付く魔道具のようだ。

 よく観察してみると、この賽銭箱の下に直接このお守りが入れられていて、お守りの自動販売機みたいな感じになっている。

 ぶっちゃけ、銀貨1枚なら錬金術師ギルドでこれより性能の良い魔道具が買える。


「なんか、魔晶石ガチャやってもアーティファクトじゃなくて、ただのそこそこ良い魔道具とか出てきておしまいってなりそうだなぁ」


 試しに何回かやってみたが、お守りしか出てこなかったので、さっさと金貨の奉納に移る。


 こっちの銀の祭壇の賽銭箱は少し装飾も付いていて、多少豪華な見た目になっている。

 手順は同じようだ。

旧王国金貨を1枚放り込むと、祭壇に後光の様なモノが射し、30センチくらいのホーリーシンボルが刻まれた短剣が出てきた。

 鑑定すると、これも魔道具のようだったが、これも錬金術師ギルドなり王都の武器屋に行けば同じ金額でもう少しマシな物が買える。

 当たりがあるのかどうかわからないので、100回くらいやってみようと、30回くらいやってみたら、途中からアイテムが出てこなくなってしまった。

 壊してしまったのかと思い、外に出て近場にいたシスターにその旨を伝えたら、何か平謝りされ、位が高そうな人が出て来て特別室に案内すると言われた。

 察するに、神様主体のゲームのガチャっぽい物じゃなくて、教会が主体で景品を手動で自動販売機に突っ込んでいるだけなんだと思う。

 特別室ってのは、たぶん高額課金者向けのレートの高いガチャがあるのだろう。

 さっきの部屋は、魔晶石っていうのが建前上で書いてあるだけで実際に奉納した人は一人も居ないのだろうなぁと予測がつく。

 と言うか、金貨だから30回でも300万円以上突っ込んだ計算か……。

 ちょっとやらかした感があるが、今更魔晶石ガチャをやらずには帰れない。

 

 案内された特別室は、扉からして作りが違った。

 触れるのを躊躇ってしまう程まで優美なレリーフがびっしりと彫られていて、おそらく神話かなにかのモチーフの絵まではめ込まれている。


「では、ごゆるりと。 何かございましたら外に控えておりますので、何なりとお申し付けください」


「あ、ありがとうございます」


 案内してくれたシスターが扉を開けてくれたので中に入る。

 室内はちょっとした会議室並の広さがあり、天井も見上げる程に高い。

 参列者席等が並んでおり、赤いカーペットも敷かれており、中央の豪華な祭壇にでっかい女神像が祀られている。

 こっちの女神像は金じゃなく白だが、天窓から射し込む光の加減で縁が真珠のように輝いているように見える。


 この特別室には、お金を奉納する賽銭箱は無く、魔石や魔晶石を置く大袈裟で装飾過多な受け皿が祭壇の前に設置してあった。

 使用人が控える様な場所も見受けられるあたり、本来はここで儀式めいた事をするのだろう。

 今は一人で貸し切り状態なので、広いしキラキラしてるしで、正直全く落ち着かない。

 部屋の4隅には結界石が設置された燭台があるので、魔晶石を奉納する為の設備が揃っているようだ。

 さっきの部屋には結界石がなかったな、不用意に魔晶石を取り出さなくて良かった。

 危うく王都にドラゴン襲来事件を起こすところだったわけか……。


「落ち着かないし、さっさと済ませて帰ろう……」


 一回で済ませようと10連ガチャのイメージで魔晶石を10個取り出し装飾過多な受け皿に置き、ここに手を置けと言わんばかりの宝石部分に手を載せる。


「アルティメットレアカモン!」


 もう、インフレを起こして何が最上級なのか分からなくなってしまったレアの分類を叫んで、アーティファクトの出現を待つ。

 すぐに魔晶石が光の粒子になって、端から徐々に消えていく。

 おお、ちゃんと奉納されてるっぽい演出だ!


 すべての魔晶石が光の粒子に変わり、消滅すると女神像がまばゆいばかりに光を放った。


「ちょ、いくらなんでも眩しすぎる!」


 光は徐々に強くなっていき、かろうじて目を細めて様子を見ていたら、一気に発光が強くなり目の前がまっ白になった。


「目がああああああっ! 目がああああああっ!」


 目を抑えてのたうち回る俺の耳に誰かの声が聞こえてきた。


「ふむ、あなたは一体何者ですか?」

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