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151話 第二王子の恐怖体験

「こんな所にモンスターだと!? 結界に阻まれていたのか!? エーミール様お下がり下さい!」


「な、なんだ!? なんだ!?」


 カマキリのポーズで威嚇しながら、油断なくじりじりとにじり寄る。

 護衛にスティンクポーションを投げつけると、反射的に剣で瓶を叩き割ってしまい強烈な臭いが辺に立ち込める。

 瓶を叩き割ったせいで中身を被ってしまった護衛が悶絶した。


「ぐわぁああっ、目に!目にしみるぅぅぅぅっ!」


「くさっ!? なんだこれは!?」


 怯んだ護衛を投げ飛ばし素早く意識を刈り取り、第二王子の方を向いてニタリと笑ってやる。


「ひぃいっ!?」


 護衛を下した所で、アリーセ達もヌッと出てきて第二王子を取り囲むと、腰を抜かしてしまい、その場にへたり込んでしまった。


「悪い子はいねがー」


「く、来るな!」


 慌てて何かの攻撃魔法を飛ばしてくるが、焦っているのか大した威力もなく、かわすまでもなくウォリクンスーツの表面で弾かれている。

 特に脅威は無さそうなので、皆で手を繋いで何かの儀式っぽくグルグルと周りを回ってマイムマイムを踊る。


「我々はぁ、邪な気が大好物だぁあ。 お前からは呪いの品の臭いがするぞぉぉぉ」


「ひぃ喋ったぁ!? の、呪いの品だと!? こ、これか!? これが欲しいのか!? こんな物ならくれてやるからどっか行けぇぇっ!?」


 持ち歩いてんのかよ……。 追加でどこかにまた持って行かせるつもりだったってことか。

 第二王子は見覚えのあるデザインのミサンガを数本取り出して投げつけてきた。


「我々はぁ、お前の様な策謀を巡らす邪な気を持った生き物も大好物だぁあぁ」


 そのまま一気ににじり寄って顔を接近させる。


「ひ、ひいいいいいいいっ」


 多少復活したのか、全力疾走で逃げ出した。

 このまま気絶させてやろうかと思ったが、逃げる気概を見せてくれたので、もうちょっと追い詰めてやることにする。

 カサカサと第二王子を全員で付かず離れず追いかける。


「来るな、来るなああああっ! 結界! 結界さえ抜ければっ!」


 王都の中心部を守る結界にさえ入れば、大丈夫だと思っているようだが、そうは問屋が卸さない。

 コリンナ様の護衛である我々は一部地域だけとはいえ貴族街に侵入できる許可証の魔道具を所持しているのである。

 王城までは侵入できずとも、貴族街にならば問題なく入れるのだ。


「はぁはぁ、ここまで来れば……」


 貴族街に入り、少し進んだ所で息を整えている第二王子の真後ろにそーっと立って、耳に息をふぅーっと掛けてやる。


「ひえっ!?」


 第二王子の顔が驚愕に染まり、反射的に反対方向に全力疾走していった。


「はぁはぁ、け、結界内にまで、し、侵入してきたっ、だと!?」


 気取られないように追いかけて、植え込みに隠れたのを確認し、第二王子がしきりに気にしている道側とは反対側にそっと隣に寄り添ってやる。

 ふと、振り返った第二王子がこちらを見て固まったので、フレンドリーに笑ってやる。

 明かりを顔の下から当てるのも忘れない。


「いひえっ!? ひいいいいいいいいいいいっ!?」


 先回りしてみたり、空から音もなく逆さまに降ってきたりと、そんな事を数回繰り返し、流石に王城に逃げ込まれると厄介だから、その前に決めるかなーとか思っていたら、王城より手前の屋敷へ入って行った。

 好都合な事に、どうやら王城ではなくこちらの屋敷に住んでいるようだ。

 一応セキュリティ的な物があったので、突破するか爆破するか悩んでいたところ。


「この程度の魔道具の無力化なら、このアンドレア・ワトスン・ウォリクンにおまかせあれー、コレ秘密なんだけどBランク以上の錬金術師にギルド製の魔道具のセキュリティはほぼ無意味なんだよねー」


 と、ワトスンが手際よくこれを解除して、あっさりと屋敷内に潜入を果たした。

 秘密って、良いのかそれ?

 警備も薄いし本当に継承順位の高い王子なのか怪しんでしまうが、今日は第二王子本人がこっそり動く必用があった為に、わざと警備がゆるいのかもしれない。

 大事にされて無い説も浮上してきたが……。

 第二王子が逃げ込んだので大騒ぎして護衛がワラワラ出て来る的な展開も予想したのだが、自室らしき場所に飛び込んで布団をかぶってガタガタと震えていた。

 使用人でも警備でも呼べば良かったのに、ただ逃げ帰って来て震えているだけとは、正常な判断が出来なくなっているのかもしれないな。

 まあ、誰か来たら来たで目撃者になってもらおうかと思ったんだが、誰も呼ばないなら呼ばないで良いか。

 第二王子が震えているベッドを取り囲んで覗き込むように配置してから、布団を一気に奪い去る。


「悪い子はいねがー」


「────っ!?」


 第二王子は声にならない悲鳴を上げ、そのまま泡を吹いて気絶してしまった。


「よし、家探しして、適当に不正の証拠品が出てきたら押収して撤収! ウォリクン以外の痕跡は残すなよ」


「なんで、こんなに生き生きしてるのかしら?」


「恐怖の煽り方をよくご存知なようで、正直引きましたわ」


 なんかディスられてる!?


「まあ、コイツには同情も罪悪感もわかないけどねー」


「それは同意するわ」


「バレないと思った途端に、王族にも平気でこんなことをしてしまえる自分の感覚が恐ろしいですわ」


「それも同意するわ」


 結構ノリノリで一緒に追い立ててたのに、急に素に戻られてもな……。

 とりあえず、チートツールでスキルレベルをすべて0にして、MPの上限も5くらいにしてやった。

 ついでに他の家人に発見されないように皆で家探しをしてみたら、素人目にも不正の証拠と解るものが山ほど出てきた。

 王族の不正の証拠ってどこに持っていけば良いのか解らないが、あとでエーリカに聞こう。

 また、ランダムで「悪い子はいねがー」と言う魔道具と家具の隙間や下にプロジェクションマッピングのようにウォリクンが映し出される魔道具を部屋に仕込んで撤収したのだった。


 翌日、エーリカの薦めで不正の証拠はウィル王子に匿名で届けておくことになった。 王子本人ではなく、周りの大人達が上手く使ってくれることだろう。


 幾日かたった後、第二王子は心神喪失の為という名目で、地方の療養施設に送られることになったようだ。

 不正の証拠から実質幽閉なんだと思うが、なんでも、暗がりや狭い場所ベッドやソファーの下等を異様に怖がるようになってしまったそうなので、本当に心神喪失してしまったのかもしれない。

 複数の目撃情報や異臭騒ぎなども有り、またウォリクンが出たのだと巷を騒がせた。

 王族が襲われたことから、大規模な討伐隊が組まれ、誰かの使い魔や召喚獣である可能性も考慮され街中の一斉捜索等が行われたが成果は上がらなかったようだ。

 冒険者ギルドにも捜査及び討伐強力の依頼が来ていたようだが、Aランクのソードマスターであるマックスが手も足も出なかった等と証言をしていたため、俺以外誰もこの依頼を受けなかったそうだ。

 俺が捜索に参加した日は、なぜかいけ好かないと評判の騎士団の体長等が逆にウォリクンに襲われるという痛ましい事件もあったようで、様々な憶測が飛び交う中、程なくしてこの捜査も打ち切られ事件は迷宮入りしたのだった。




「ところでコイツどうしようか?」


「もきゅ~ん?」

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