表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

153/250

146話 その件に関しては秘書が勝手に

 呪いのアイテムの鑑定及び解析結果をエーリカにだけ伝える。

 王子を不安にさせないためでもあるが、解析ツールの詳細をあまり知られたくないからでもある。


「これ、どのくらいの時間で無力化できまして?」


 エーリカが俺に小声で確認をしてくる。


「証拠としては機能しなくなってしまうだろうが、安全に破壊するだけなら10秒もあれば粉末にも出来るぞ」


 この呪いのアイテムのコードはすぐに打ち込んだので、ぶっちゃけ更に1分もあれば改変して回復アイテムなど別の効果に書き換えることも出来る。

 スリップダメージ、つまり断続的にダメージ与える効果のコードがゲット出来た。

 この数値はプラスとマイナスが設定出来るようなので、徐々に回復させる事も可能というわけだ。


「解呪は結構難しく何時間も掛かるのが普通ですのに、相変わらずおかしなノービスですわね。 ですが、今回は非常に頼もしいですわ」


 今回はってのは余計だと思うんだが、俺が言った事を疑った様子は無いので、信用はされているようだ。


「いつだって頼りにしてくれて良いんだぜ?」


 ニヒルに笑みを作って言ってみる。


「このまま放置すると危険ですわ、ここで解呪して破壊しますが構いませんね?」


 俺のセリフを華麗にスルーして、エーリカが王子に向かって言う。

 確認はしているが、断らせる気は無さそうな言い方だ。


「ま、まて、勝手な事をするな!」


 護衛の一人から、いきなり呪いのアイテムを破壊するなど、王子が危険ではないかとストップがかけられた。

 そもそも本当に呪いのアイテムかどうかも疑わしいとか言い出したので、エーリカが王子が言っている魔力がスルリと抜けていってしまう感覚というのは、呪いを始めとした状態異常の典型的なパターンであることや、対応が遅くなれば遅くなる程、王子の命が危ない事などを説明すたのだが、こちらで信頼できる者を用意するとかいって、その護衛は譲らない。


 あちらさんがそう言っているので、王子ともなればすんごい先生とかいそうだから、任せてしまって問題はないのか? と俺が思ったあたりのタイミングで、エーリカが食って掛かった。


「今すぐに対応出来る術者が用意出来ると言うのならば出しゃばるつもりはありませんわ、ただし、こうしている間にも王子の魔力の限界がどんどん減っていっているということをお忘れなく!」


「それもこちらで対処する、余計な手出しは不要だ!」


 他の護衛からは特に意見などが出ないので、多分コイツが一番偉いとかなんだろうけど、エーリカの雰囲気から察するに魔力の上限、つまり最大MPが減っていってるということは、多分呪い解除しても下がったステータスは、そのままになってしまうのだろう。

 ナマハゲイオリくんが間接的にとはいえ関わっている事だし、このままにするのは流石に可哀想だな。

 さてどうしたものか……。


「ウィル王子。 あなたはどうしたいですか? 今のあなたは魔法を使うための魔力ではなく、その魔力を溜めておける限界の量がどんどん減っていっている状態です。 時間が経てば時間が経つほど王子の魔法の才能の1つが無くなっていってるわけです。 そのままだと一生魔法が使えなくなってしまうかもしれません」


「え、一生魔法が使えなくなる?」


 王子が一番気にしそうな部分をついてみる。

 まあ、関わると絶対面倒事に巻き込まれるだろうけど、見知ってしまった人、しかも子供が目の前で大変な目にあっているなら、助けたいと思うの人情ってやつだ。


「王子! こんな平民の口車に乗せられてはいけませんぞ! 我々が必ずお助けいたします!」


 護衛のおっさんがうるさい、いっそ殴って黙らせようか?

 ナマハゲイオリくんがやったって事で……。


「その呪いのアイテムを王子が身につけている時点で、すでに我々の無能晒しているのだから説得力が皆無だと気がついておりますか? フレーゲル卿」


 マックスがうるさい護衛のおっさんに向かって言いはなった。

 卿とか言ってるってことは、このおっさん貴族だったわけか。 平民平民叫んでるしな。


「ああ、なるほど! 自分の責任になってしまうから、王子の安全よりも、ご自分の保身のために隠蔽したいってわけですね! それで他の護衛の人に責任をなすりつける作戦ですか、よくあるやつっすね!」


「な!?」


 あえて大きな声で言うと、他の護衛がざわついた。

 実際マックスが言った通り、王子が呪いのアイテムを装備してしまっているのは事実なので、このおっさんがどう思ってようが、こういう話をしてしまえば反論しにくくなる。


「いや、俺の故郷でも結構よくあったなぁ、部下に責任取らせて首を切って、一番の責任者は責任を取らずに、地位を守るってやつ。 毎年数回くらいの頻度で聞くわー、国が変わっても、こういうのは一緒なんだなー」


 元の世界で見たテレビのワイドショーなネタなので嘘は言ってない。

 しかもこっちだと首を切るが比喩じゃなくて、物理的に首を切られるって取るだろうな。


「フレーゲル卿! 今の話は本当か!?」


「そ、そんなわけは無かろう! 貴様らこんな怪しい平民の言うことを信じるのではない!」


「そりゃ、そう言うしかないですよねー。 でも、それじゃあ、そもそも呪いのアイテムを王子に身に着けさせてしまった責任は誰が取るんでしょうねー? はい、そんなことはない、呪いのアイテムかどうかも怪しいではないか!とか言う」


「そんなことはない! そもそも呪いのアイテムかどうかも怪しいではないか! はっ!?」


 ちょっと惜しかったが、これ一回やってみたかった。

 いや、まさか本当に成功するとは思わなかったけどな!

 もっと強敵との戦闘中とか激的な場面で成功させたいところだが、そうそう成功はしないだろうな……。

 俺がそんな感じで、フレーゲル卿をおちょくっていると、何か言い返そうと、あーだの、うーだの唸っている。

 勝ったな!


「さて王子、ここで一番身分高く決定権があるのは、そこの挙動の怪しいフレーゲル卿ではなく、当事者でもある貴方です。 我々は貴方の決定に従いますよ?」


「う、うん、え? いやしかしどうすれば……」


 今まで命に関わるような危険が無かったからか、自覚症状が無いからか、王子は戸惑いを見せている。

 王子と言えどお化けをガチで怖がるような子供だ。 歳相応の反応といえばそれまでか。

 コリンナ様はかなりしっかりしているが、精神的な成熟は女の子の方が早いというからその差はあるかもしれない。


「そういう呪いのアイテムみたいな負のパワーは、ナマハゲイオリくんの大好物ですから、むしろいっぱい寄ってきますよ」


「今すぐ取ってくれ 早く!」


「承知しました!」


 危なくなったらいつでも使えるようにと準備していたチートツール使い、呪いのアイテムの効果を改ざんして耐久を0にしてやる。

 改ざんしたアイテムを残しておくわけにもいかないし、外した後に元に戻して効果が発動されても困るから完全に破壊をするつもりだ。

 修復のスキルのような物で復元される可能性も考慮して耐久は最大値も0にするのも忘れない。


 王子の腕の呪いのアイテムは音も無く砕け散り、サラサラと砂のように舞い散った。


 後は減ってしまった王子最大MPを元に戻してやれば良いのだが、元がどのくらいだったのかが不明だし、急にステータスが変わると苦痛を伴うからどうしようか悩みどころだな。






「よくもまあ、ぽんぽんと口から出任せが出るものですわね」


「俺は嘘は言っていない。ホラなら吹いたが」


「違いが分かりませんわ!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ