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144話 盗聴防止魔法

「魔法が使えなくなった?」


 一度使えるようになった魔法が使えなくなるって事があるのだろうか?


「俺は他人が使う魔法とかになると正直よく分からんからな、魔法学園から講師を頼まれるようなお前なら、何かわかるんじゃないかと思ってな」


「王子のお付きに詳しい奴とか居ないのか?」


 正直俺に聞かれても困る。 王子にもともと魔法を教えてた先生なり、お付のマジックユーザーなりに聞いたほうがはやいんじゃなかろうか?

 それに、こういうのは俺よりエーリカに聞いてみるほうが良いと思う。


「学園に来る前ならともかく、こういう特殊な事例に詳しい奴は居ないな。 一応聞くが、俺と模擬戦をした時みたいに、お前が何かしたって事は無いよな? お前の講義の後あたりから使えなくなったようなんだが」


「可能か不可能かという話なら出来ないこともない、ただ護衛が張りいてるような相手にバレないようにするのは難しいし、俺がそれをやる理由が微塵も無いな」


 なんか疑われてるのか?

 関係者全員に話を聞いてるとかだろうか。


「絡まれた腹いせとか?」


「腹いせなら、そんな効果があるか分からない地味な事しないで、夜トイレに行くときとかにナマハゲイオリくんで追いかけ回した方が早いだろ」


「お前それ、漏らしちゃうだろ、可哀相だと思わないのか!」


「いやいや、もし腹いせならって話だろうが! 大人ならともかく子供に腹いせするほど落ちぶれちゃいねーって」


 それに俺の講義を受けに来たときは、特に生意気な態度も無かったしな。


「大人にならするのかよ!?」


「大人だったら、トイレのドアを開けた瞬間にどアップで登場したり、寝てる所を天井から逆さまにぶら下がって覗き込んだり、逃げ込む場所に先回りして背後に立ったり、護衛に化けて助けを求められたら、そいつはこんな奴でしたかーってナマハゲイオリくんの顔で振り返えったりするかな?」


「悪質にも程がある!?」


 ナマハゲイオリくんを使うなら他にも、足音もなくゆっくり追い掛けて来ている筈なのに全然振り切れないとか、窓から覗き込んでるのに当人以外には見えないとか、ガラスや水面に背後に立っている姿が見えたのに振り返ると誰もいないとか、絵画の背景に小さく人影があって、日に日に近づいてくるとか、やり方は色々あるな。


「取り敢えず、お前の頭の中どーなってんだよ、悪質なんて生易しいもんじゃねーな」


「こんな子供騙し程度の内容で失敬だな!」


「そんな手の込んだうえに徹底した子供騙しがあってたまるか!」


 まったく、この程度のエンターテイメントで悪質だなんてヌルいな。

 ちょっとしたホラー好きなら誰でもこの程度なら思いつくだりうに、これだから娯楽の少ない世界はダメだな!


「つか、お付の奴等は何やってんだよ、王子なんて身分の一大事なら、雇われのマックスが調べるような事じゃないような気がするんだが?」


「王子だからこそ、俺が裏で動く羽目になったんだよ、まあ、情報収集の前にこの事を隠す方向ではとっくに動いてるみたいだけどな。 王子自身が原因なら醜聞になるし、誰かが何かしたのなら、護衛の手落ちってな」


 なんか、王子の身を案じてってわけじゃなさそうなのが、なんだか可哀想に思えてきた。


「とにかく、ウチでそういった話に詳しそうなのは、エーリカだな。 どうする? 聞きに行くか?」


「あまり拡散したい話じゃあないが、Bランクなら大丈夫か……」


 少し考える素振りを見せるマックスだが、そもそも俺に聞かせて良い話だったんだろうか?


「そうだな、他に宛があるわけじゃないから頼めるか?」


「わかった、この時間なら女子寮で待機している筈だから呼びに行こう」


 こういう時、スマホとは言わないが携帯電話が欲しくなるな。 置き電話でも良いが。

 インフラが必要になるから、すぐには無理そうだけど、仲間内だけでも通信出来るトランシーバー的な魔道具でもワトスンに作ってもらうかな。




 寮に行くとマックスを見た女の子達がキャーキャー言い出した。

 そういや、コイツ見た目も物腰もイケメンだったな。

 ……おのれリア充爆ぜろ!


「ん? 今なんか悪寒が……」


「優良株の護衛や冒険者を襲って既成事実を作って玉の輿を狙う逞しい女子が多いらしいから、それじゃないか?」


 俺の所には誰も来なかったし、むしろ微妙に避けられてるような気がするけどな!

 このままココにマックスと居ても惨めになるだけなので、さっさとエーリカが居るはずの部屋に向かう。

 もちろんドアをいきなり開けたりもしない。 命は惜しいからな……。


「エーリカ居るかー?」


 ノックをして、声をかける。

 すぐに、ぱたぱたと小走りに走るような音が聞こえて、ドアが開かれた。


「はいはい、なんですの?」


 いつものローブではなく、ゆったりとしたチュニックにふわりとしたロングスカートという、少しおしゃれな普段着といったテイストの服装をしたエーリカが出てきた。

 ゆるふわ? 森ガール? その辺りの区分けは、ゲーム機を全部ファミコンっ言っちゃうおじーちゃん並に分からないが、とにかくそういう感じの服装だ。

 

「へえ、いつものローブじゃないんだな」


「この前王都で買ったやつですわ」


 あの時か……。


「それでどうしましたの?」


「あー、すまん用があるのは俺なんだ」


 マックスが前に出て、守秘事項にかかわる話がある旨を伝えた。


「わかりましたわ。 そういうことでしたら中へお入りくださいまし」


 俺とマックスは、エーリカに部屋に招き入れられた。

 仮住まいとは言え女の子の部屋に入るのは緊張するな。

 なんだか良い匂いとかも……無いな?

 お香を炊いた感じだなこれ、エスニックなお店とかの匂いを思い出す。

 

「何の匂いだ?」


 マックスがスンスンと鼻を鳴らし、エーリカに聞いた。


「虫除けと気持ちを鎮める効果のあるお香ですわ。 特に害は無いのでご安心を。 それでお話とはなんですの?」


「これから聞く話は口外しないで欲しいのだが……」


「では、少々お待ちを」


 そう言って、エーリカが傍らに追いてあったケイリュケイオンを軽く振る。


「サイレンスフィールド。 これで、話し声も物音も外には聞こえませんわ」


「へぇ便利な魔法だな、イオリはこれ使えないのか?」 


「一回やって死にそうになった」


「いやまて、どうやったら音を聞こえなくする魔法で死にかけるんだよ!?」


 音は空気の振動だから真空の空間を挟めば音が伝わらなくなるんじゃないかと思って、一定のエリアを取り囲むように真空の層を作ろうとしたら、猛烈な気圧差が起こって魔法発動中ずっと掃除機みたいに内側の空気も吸い出され続けて危うく窒息しかけたのだ。

 慌てて魔法を止めたら、気圧の下がった内部に外からの空気が急激に流れ込んできて爆発したのだ。 正確には爆縮か?

 あれはHPを上げていなかったら即死だった。

 まぁ「ホロウボム」って別の魔法と「バキュームエリア」って規模で別の魔法扱いにしているけど、そこまでの破壊力は無い。

 真空を使った窒息魔法としての運用も考えたが、魔法発動後に爆縮するまでがセットなので迂闊に使うことが出来ない。

 小規模でやると、電球を割ったみたいな音がするから、ナマハゲイオリくんの効果音にたまに使ったりしてたくらいである。

 うっかりブラウン管くらいのサイズにすると焦るくらいの音がするので注意が必用だ。

 


「イオリさんの場合、規格外っていうより問題外って感じですわよね……」


 大きなお世話である。


「って、今は俺の話はいいだろ、本題に入れよ」


「そうだった、実はコイツの講義を受けたあと、王子が魔法を使えなくなってしまってな、その原因について意見を聞きに来たんだが、なにか知らないか?」


 その言い方だと、俺が悪いみたいに聞こえないか?

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