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130話 貴族嫌いの青年

 一悶着……ん? 二悶着? まあいいや、イロイロあったがワトスンは錬金術師ギルドの方でAランクの術師であことを説明して、何とかねじ込んだ。

 なんか、上の者に確認をしてきますとか言って、ワラワラと人が出てきて、あーでもないこーでもないと、議論がはじまってしまった時はどうしようかと思ったぞ。

 すっかり忘れていたが指名依頼を受けられるのはCランクからなので、冒険者としてはFランクであるワトスンは、本来であればコリンナ様の護衛としては認められないのである。


 しかし、給湯器ばかり作ってるワトスンがAランクの錬金術師だったとは恐れ入る。


「ふっふっふー、どうだい? 僕に投資してみたくなってきたでしょー? というわけで僕にも何か凄い物をプレゼントしてくれても良いんだよー?」


「だが断る!」


「なんでだよー!?」


 性格はともかく腕が良いのは認めてるけどな。

 ワトスンは俺の琴線に触れるような物を作るのがうまい、浪漫をわかっていると言うべきか。


「まあ、もともとはCランクだったんだけどね。スタンピードのときに君が使ってた魔導銃の評価でBになって、ダンジョン発見のときに使った魔道具についての実用性の証明なんかで領主様のお墨付きの書面を貰ってたんだ。 お陰でAランクになったんだよー」


「そういう方面には抜かりが無いな!?」


「僕はこう見えても腹黒いからねー」


「自分で言うなし!」



 ともあれ、全員無事に登録を終えて、今は受付をしてくれた青年に学園内を案内してもらっている最中だ。


「この辺りが初等部の教室です。 作りは一緒ですが試験結果次第でクラスが決まりますので、どの教室で学ばれるのかは、まだわかりませんのでご了承ください」


 案内された教室は、小中学校の教室というより大学の講義室のように生徒側の座席が傾斜のついた作りになっていた。

 席は広めに取ってあり、護衛が一緒に席に着けるのであろう。


「昔の名残りで、護衛の方の為のスペースがありますが、現在は基本的に教室の後方か別室に待機して頂いております」


「それだと護衛の意味が無いのでは?」


「もともと要塞だった所ですからね。 結界を始め探知の魔法が常に何重にも働いております。 常駐の警備もおり、不審者の侵入を許したことは開校以来一度もありませんのでご安心を。 ……護衛の方が起こす問題事は山ほどありましたが……」


 最後の方の話は小声だったが、しっかり聞こえてしまった。

 まあ、セ◯ム以上の警備体勢で外から不審者が侵入するのは難しいようだ。

 そうなると、問題を起こすのは正規の手段で入ってきた俺らのような冒険者達や正規の護衛達ということになるってわけか。

 暗殺者を正規の護衛として連れてきて、政敵の子供を事故に見せかけてーって感じなら、誰でも考えそうだ。


「そうすると、冒険者が護衛だと、そういう問題が起きやすそうに思えますが?」


「いえ、逆です。 冒険者はギルドで身元や能力などが保証されていますし、何か問題ごとを起こしても追求が可能です。 しかし、貴族の正規の護衛ともなりますと、知らぬ存ぜぬで通されてしまったらそれまでですし、護衛自身がそれなりの身分だったりしますと、余計にややこしいことに……」


「それは確かに大変ですね」


 身分の違いによる格差は、ここでも大きいようだ。 護衛の数に制限が出来た理由である見栄が際限なくエスカレートする為っていうのは表向きの理由で、本当はこれが理由なのかもしれない。


「基本的に護衛のついている生徒はそれなりに身分がありますので、なるべく揉め事は避けてください」


「あ、厳禁じゃなくて、なるべく、なんだ?」


「ええ、なるべくです。 向こうから突っかかってくる場合がありますのでお気をつけくださいね。 主が幼いこともあり、どちらの護衛が強いか勝負しろだとか、自分の護衛になれだとか、軽い調子で無茶を言い出しますので」


 何かあったのであろう事は、苦虫を噛み潰したような表情から容易に想像ができるが、そんなフラグを立てないでほしい。


「そうなったら、ぶっ飛ばしちゃって良いってことなのかしら?」


「自信がおアリでしたら構いませんが、不敬だ何だと言った事態は自己責任でお願いします。 それと学校設備などに被害が出た場合は弁償していただきますよ」


「お、大人しくします!」


 薄暗い笑顔で微笑む青年に、アリーセが慌てて答えた。 まあ、身分差があることで行動に制限が掛けられるから冒険者の護衛が認められたってのもあるんだろうな。

 今までの話から察するに、問題を起こすのはだいたい貴族だ、と言っているわけだな。

 まあ、コリンナ様は血筋的に王族だけど、なんかすごく謙虚だし素直だから、案内の青年が言うような問題は起こさないだろう。


「さて、今はまだ営業していませんが、こちらが食堂です。 カウンターに行って好きなメニューを注文する形式ですね、護衛の方も利用できますが、アルバイトも随時募集していて、生徒が学費や生活費の足しに働いていたりしますので高級店のようなサービスは期待しないでください」


「学園の食堂にそんな過度な接客を期待するやつなんか居るのか?」


「主に貴族の生徒や護衛の方が……。 値段は格安ですが、味もサービスも値段なりだと思って頂ければと思います」


 一通り主要施設を案内してもらい、その都度注意事項を聞いたが、ほとんど貴族に対する注意事項ばかりだった。

 ってか貴族連中問題起こし過ぎじゃね?

 学園にいる間は身分は関係ない! とか言うのかと思ってたが、現実は厳しいようだ。


「もう、貴族専用の魔法学園とか作れば良いのに……」


「本当にそう思いますよ!」


 案内の青年が力強く俺の呟き同意してきた。


「貴族の方々の大半は、この学園の権威を求めて来ているわけですから、それは難しいかと思いますわ」


「学びに来いよ、ちくしょーっ!!」


 青年がまた叫んでいる。 ああ、うん、何か嫌なことがあったんだろうな……。

 とりあえず、主要な施設の確認はしたわけだが、最後にコリンナ様が生活することになる寮に案内された。


「男子寮と女子寮で別れており、初等部から高等部までの生徒が一緒に生活しております。 全てではありませんが異性の立ち入りが禁止な場所がありますのでご注意ください」


「具体的には?」


「他の生徒の個室、トイレ、浴室ですね。 まあ女子寮で男性の護衛の方は、護衛の控室とラウンジ以外の場所をあまり動き回らない方が良いかと思います」


 そりゃそうだろうな、痴漢扱いとかされたら人生終わりそうだ。


「貴族の正規の護衛や高ランクの冒険者はかなりの優良物件なわけですからね、既成事実を作って嫁か愛人になろうとしてきますので」


「襲われるの男の方なのかよ!?」


「君はすぐに食べられちゃいそうだから、寝泊まりは外で宿をとった方が良いかもしれないねー」


「そうね、ココは私達が居れば問題ないから、その方が安全ね」


「護衛のハズの俺が身の安全を心配されている!?」

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