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126話 魔法の発動体完成

 その翌朝……。


「で、これは一体どういうことなのかしら?」


 アリーセさんが大変ご立腹な模様です。


「えーと、錬金術式ライフル型発動体で『ライフルロッド』と名付けました」


「そういうことを聞いているんじゃないの、コリンナ様用の発動体を作るだけのはずだったのに、どうしてこんな物騒な感じの物が出来上がったのかって聞いているのよ?」


 別に急いでもいないのにワトスンと徹夜でコリンナ様の発動体を完成させ、それを朝方に徹夜明けのテンションで皆に見せた所、ワトスンと仲良く正座させられてお説教を受けております。


 出来上がった発動体は、ライフルの銃身を大胆に切り落としたような形をしており、銃床の部分に一応魔法の杖だと主張するかのように精霊石がはめ込まれている。

 通常の杖の形をした発動体の場合、この精霊石から魔法が飛ぶわけだが、このライフルロッドは銃のコンセプトなため真逆の柄の先端部分から魔法が飛ぶ。

 緩やかな曲線を描く柄の部分はすべて高品質なミスリルで作成がされ、軽量化のために中空にしてあり、コリンナ様の魔力とよく親和するように調整がされている。

 銃身にあたる柄には上下左右にオプションパーツを取り付ける為のレイルがついており、上部のレイルには、俺が提供した、光ファイバーによってバッテリーを使うことなく照準が発光する固定倍率のショートスコープとレーザーサイトが乗っている。 

 右側には、同じく俺が提供したタクティカルライトを電池では無く魔石で発光するようにワトスンが改造したものを取り付けてあり。

 下部には、魔力切れでも戦えるように、グリップ部分を廃し、弾倉給弾を可能にした改修型の魔導銃と照準を安定させる為の折り畳み式の二脚が着いている。

 全長は50センチ程に抑えてあるが、銃床の肩にあてる部分のチークパッドは、厚さの異なるものと交換する事でコリンナ様の成長に合わせて調整が出来るようになっている。

 また、ワトスンの強い薦めで中空部分に小型の給湯器が仕込まれ、水蒸気を発生させ内圧により金属の弾が先端から飛び出す、言わばスチームキャノンの機能も搭載している。


 以上のことをワトスンと説明をするが、アリーセの眉間のシワは深まるばかりだ。


「で、何と戦うつもりなのかしら?」


「えーと、コリンナ様の行く手を阻むすべての敵かなぁ?」


「少なくとも初等部の子供が持ち込むような発動体じゃないという事は、良くわかりましたわ……」


 話の席に同席していたエーリカにもダメ出しを食らってしまう。

 汎用性では無く、攻撃力特価させすぎだという事らしい。


「いや、本体以外のパーツはオプションパーツだから取り外しが可能だ。 取り付け部分は4面とも同じく仕様になっているので、この規格に合わせれば、様々なオプションを取り付け可能で、状況に応じてオールマイティに戦え……」


「だから、領主の子を率先して戦わせてどうするのよ!?」


 しまったな、確かに銃の印象が強かったせいで戦闘部分ばかり考えてオプションを用意してしまった。

 魔法には補助魔法や回復魔法なんかもあるのだから、そちらも考えておかなければいけなかった。

 確かに、これは反省事項だ。 アリーセが怒るのも無理はない。


「違うからね!?」


 アリーセに即効で否定されたのだが、何が違ったのだろうか?

 結界発生装置や、遠距離回復など補助装置などを作れば、きっと納得してくれるに違いない。

 徹夜明けだが、俺の発想は最高に冴えているようだ。


「まあ、しかし常に護衛がついているとは限りませんし、いざという時に護衛が到着するまでの間に応戦が可能になる、あわよくば打ち倒せると考えるなら悪いことばかりではないかと」


 グレイさんが俺達のフォローをしてくれた。 グレイさんはなかなかアメリカンな思考の持ち主のようだ。

 まあ、モンスターが跳梁跋扈するこの世界では、子供が武装するというのは別に異常なことではないのでグレイさんの意見は、ごく一般的な考え方である。


「しかし限度というものがあるかと、見るからに過剰な装備は対抗する側がそれ以上の戦力を用意することとなり、問題が大きくなる原因にもなってしまうのではないでしょうか?」


 こちらはヘンリエッテさん。ヘンリッテさんは残念ながら否定的なようだ。 こちらの意見はおそらく人が相手の場合を考慮してのことだと思われる。

 一応は王家の血筋なので、権力争いに巻き込まれる可能性が0ではないということからだろう。


「それは、この発動体の性能が周知されている場合のはなしだろう? 貴族の持つ発動体や武器などは無駄に装飾がついているものも多い、そういうものだと認識させておけば、持ち得る戦闘力を減らす必用は無いのではないか?」


「確かにいざという時のことを考えればコリンナ様自身の戦闘力を上げておくことも必用ですが、これを装飾と言い張るのは些か無理があるかと思うのです、せめてもう少し装飾などがされていれば……」


 グレイさんとヘンリエッテさんの護衛コンビがコリンナ様がすべき適切な武装はどのあたりか? という、微妙に脱線した議論を始めてしまった。

 正規の護衛の立場の人が議論を始めてしまっては、アリーセやエーリカとしても口を挟みづらいので、なんだか雰囲気がグダグダになってきた。


「グレイさんもヘンリエッテさんも、イオリの非常識さを知らないからそんなことが言えるんだと思うのよね。 どうせまたおかしなことになるんだろうし、これを使ってコリンナ様自身が無事に済むって保証が無いのよ!?」


 アリーセが、頭が痛いといったジェスチャーでコメカミに指を当てている。

 最近すっかり癖のようになってしまったポーズだな。


「安全装置なら今回に限ってはいくつも着いてるしすでに安全テストは何度もやったよー。 万が一に備えて、すべての安全装置を解除して魔晶石を使用しての広域殲滅魔法なんかにも対応出来るようにはなってるけどー」


「だから何と戦う気なのよ!?」


 一応、コリンナ様が使用するものなので安全装置的なものをいくつも付けたのであるが、それによって、全性能の半分以下まで増幅や効率といった発動体にリミッターがついた状態なのである。

 万が一エンシェントドラゴンなどに襲われ無いとも限らないので、そんな場合でも対処出来るように、リミッターを外してフルパワーで使用出来るモードを用意しておいたのである。

 ちなみにその場合、安定した増幅効果を得るために銃身が3倍ほど伸びるので、フルバレルモードと命名をした。

 そのあたりを説明したのだが、グレイさんとヘンリエッテさんは、そこまでの性能を秘めていると思わなかったのか、まったく信じていない様子である。


「え、エンシェントドランゴンですか? 流石にそれは人の力でどうこうできるようなものでは無いかと……」


 以前にエンシェントドラゴンをさっくりと殺っちゃった事を知っているアリーセは、冗談などではないと理解出来たようで、バツが悪そうに全く目を合わせないどころか首まで回して顔ごと反らしているので、みるみるとグレイさんが硬い表情になっていく。


「え、まさか、本当に? ……いやしかし流石にそれは盛りすぎなのでは……?」


 ヘンリエッテさんも信じきれないようで、そんなまさかと否定をしているが、エリーセが頑なに目を合わせないので、なにやら不安になって来たようだ。

 あれかな? 小型のピストルだと思っていたらロケットランチャーだった! みたいな感じだろうか?


「いやいや、これは魔法武器や魔道具じゃなくて、あくまでも発動体だからね。 何かあってもこれが爆発したりはしないし、ドラゴンが倒せるかは使用者の力量しだいだねー」


 ワトスンがそう発言したことで、周囲の空気が一応軟化したようなきがする。

 追加武装はともかく、本体はただの発動体であるわけだから、使い手によってその効果が変わるのは当然だ。

 まあ、ワトスンに聞いた話では、ちょっとばかし使っている素材の品質が、この世に存在しないと思っていたレベルってだけである。

 あと、こっそり、精霊石の品質も1ランク上げておいたりもしたが。


「あ、あーそうですよね! 普通の剣でも伝説の勇者が使うのと、子供が振り回すのでは違いますからね! そういうことですよね!?」 


 何故かグレイさんが必死な感じで「弘法筆を選ばず」的な話を出してきたのはなぜなんだろうか?

 一応エンシェントドラゴンのステータスは知っているので、魔晶石を5個程度使ってやればコリンナ様でも十分倒せると思うんだけどな。

 まあダンジョンの時に失敗したのは俺自身の身を守る手段が足りなかったせいでもあるから、あらゆるモノから守れる魔改造した結界発生装置を作れば、身の安全も確保できて良いだろう。

 と、このときは徹夜明けで若干ハイになった思考で考えていたのだった。


「床が硬くて痛いんだけど、もう足崩しても良いかなー?」


「あ、俺も足崩していい?」


「駄目よ! 私は誤魔化されないんだからね!?」

徹夜明けのテンションって、なんであんなにおかしいんでしょうね?

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