幕間
年明け早々幕間だけというのもなんなので、本日夕方くらいに本編も投稿します。
とある宿の女将の休日
あたしはクーリア・クスケっていう『白兎亭』っていう宿の女将だ。
Aランク冒険者だったんだけどね、結婚して寿引退した事にはなっているし、あたし自身もそう思ってたんだけどさ、調べてみたらまだ冒険者登録されたままになってたんだ。
Bランク以上になると、辞めるのにもいろいろと手続きが必要なんだそうだね。
放っておけば勝手に辞めれるかと思って面倒な書類を書かなかったせいらしいけどね。
それに加えて、行方不明になったわけでも死亡したわけでも無いからそのままだったみたいだねぇ。
この街に住民登録もしてないのに街から出るのも入るのにも入街税とか取られたことが無かったのが不思議だったけど、冒険者のままだったってんなら納得がいったよ。
顔なじみで守衛をやってるスコットが気を利かせてくれてんだと思ってたんだけど、そういうわけじゃ無かったんだねぇ。
どうりであいつに「旨く節税してる」なんて言われるわけだよ。 よくわからないから、旦那が何かしてくれたんだと思ってたんだけどね。
旦那は自分の店を持つという夢を叶えて、この『白兎亭』を開いたんだけど、あたしと違って体があんまり強く無かったから、無理が祟って店を開いて数年であたしを残して死んじまったんだ。
落ち込んだり荒れたりもしたけど旦那が残してくれた『白兎亭』を潰したくなくて、必死になって切り盛りしてきたけど
正直ドラゴンとタイマン張ってる方が楽だったね。 やっぱり旦那は偉かったってつくづく思ったものさね。
うちの常連でアリーセって娘が居るんだけど、この娘の両親も二人とも冒険者で、今は何処で何をしているか分からないけど、あたしとも一緒に依頼を受けた事もあるような間柄だったんだ。
『白兎亭』を始めたばかりの頃に一番最初に常宿にしてくれた冒険者でもあるね。
あたしがいる店なら、どんな宿より安心だっていって、小さいアリーセを置いて依頼に行くこともあったね。
だからアリーセの事もヨチヨチ歩きの頃から知ってるんだよ。
もうすでに一人立ちをしちゃいるが、子供の居ないあたしにとっちゃ、自分の娘みたいに思ってる所もあるんだろうね、つい心配して要らんお節介を焼いちまうところがあるんだよ。
物心付く前から冒険者の両親について、ままごとをするような時期にはすでに弓をふりまわして狩りをしていたような生活をしていて、年頃になっても色恋の話に全く興味がないとなると、あたしみたいに行き遅れになっちまうって心配しちまってね、甲斐性のある良さそうな奴らを何人か紹介してやったりもしたんだけど、ただの冒険者仲間ってくらいにしか思っていなかったみたいだね。
見た目は悪くないから言い寄る男も少なからず居たようだけど、それとなく近づいて来た男達も冒険者仲間という以上の認識はしてなかったようだし、ストレートに告白されても全部断ってたようだね。
そのうち冒険者ギルドの受付のエマっていう受付嬢と仲が良いもんだから、同性愛説が広まっているって話をきいたときにゃあ頭が痛かったね。
そんなアリーセが自分から男をつれてきたのには流石に驚いたね。
そのイオリっていう外国から来た男はパット見頼りななさげだけど礼儀正しいし、なかなか頭も回るうえ、人も良さそうで、どこかあたしの旦那に似た雰囲気を感じた。
旦那に似ているってことは、あたしが紹介したりアリーセに言い寄って来ていた男連中とは全く違ったタイプだったから、好みじゃなかっただけで同性愛ってわけじゃなかったんだなって、ものすごく安心したのを憶えているよ。
それにあたしと同じような好みだったのかと、ちょっとうれしくなっちまったね。
そんな二人が、あたしが冒険者を引退しようと思うきっかけでもあり、旦那と出会うきっかけにもなったスタンピードの原因探しの依頼を受けたっていうから、運命ってものを感じたね。
しかも、たった数時間で思いもしない方法でダンジョンを発見したって報告を聞いた時には、上手く説明ができないけどなんか鳥肌が立ったね。
気がついた時には、ダンジョンに潜る準備をして、現役時代に使っていた『ドラゴンスレイヤー』をかついで、そのダンジョンに潜っていたね。
何ていうか、居ても立ってもいられなかったってやつだね。
現地についたら、なんと45階層まで直接行けるって言うんだから時代は変わったって思ったね。
現役時代の勘を取り戻すのにちょいと手間取って、すこし苦戦をしちまったが50階層目のフロアボスのミスリルゴーレムを叩き潰したあたりで、一緒に着いてきたパトリックのヤツが「これ以上は後輩たちに譲ってやれ」とか言ってきたので、ちょいと物足りなかったが、随分とスッキリとした気分だったから51階層目以降を攻略せずに戻ったんだ。
『白兎亭』に戻ったら、スコットの奴が待ち構えていて「年甲斐もないことをするな」とか説教されちまった。
心配をさせたみたいだったけど、運動不足は万病の元だってイオリが言っていたし、軽い運動をする程度に、またあのダンジョンに潜っても良いんじゃないかね?
ダンジョンに潜る準備(パトリックをリュックに詰める)
ドラゴンスレイヤー(鈍器)
一緒に着いてきた(他の荷物と一緒に持ってきた)
パトリック「私を巻き込むなーーーー!!」
スコット「別に命の心配はしていない。ダンジョンが無事か心配してたんだ」




