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116話 調査完了

 俺たちは順調にダンジョンの調査探索を続けていった。

 10フロア飛ばしで各フロアで数回普通に戦闘を行い、大体のモンスターの傾向が掴めたら何かしらの宝箱やレアっぽいマジックアイテム等が見つかるまで、エーリカやアリーセが自重無しにモンスターを蹴散らしながら探索して大穴に戻り、魔力回復休憩をして上層階を再び探索をするという作業の繰り返しだ。

 ダンジョンは階層が深くなる毎にモンスターがだんだんと強くなっていくと言うのが定番なので、逆方向である下から上に調査探索をしている為、進むほどにモンスター弱くなっていき進行具合が早くなっていった。


 調査の結果、おおよそ以下のような事が判明した。


1から10階層、ゴブリンやコボルトと呼ばれる狼の様な頭をしたモンスター、強くてアルマベアーが出る程度の森と同じ様なモンスターの出現傾向。

11から20階層、ゴブリンの上位種にあたるゴブリンナイトやリザードマン、オーク等、上層のモンスターが一回り強くなったようなモンスターの出現傾向。

21から30階層、リザードマンや悪魔系の下位のモンスターであるインプに、少数のトロールとたまに遭遇するという傾向

31から40階層、トロールやオーガ等の中型から大型のモンスターにイビルマジシャン等の後方から魔法を使うモンスターが混ざってくるという傾向。

41階層以降50階層未満、リビングナイトアーマー、アイアンゴーレム、ミミック等の物質系、魔法生物系のモンスターの出現傾向。


 モンスターの種類に差と若干の例外はあれど、基本的に人型のモンスターが主体のダンジョンであると断定して良いだろうということになった。

 人型のモンスターは同程度の強さの獣型のモンスターより、1ランク上だと判断されるらしい。

 知恵が回るということではなく、単純に武器や防具を使う事があるからだ。

 そういった理由から、このダンジョンは少し難易度が高いということになるのだとエーリカ先生が教えてくれた。

 まあ、温存しなくて良いから後先考えない全力戦闘が出来るおかげで、大した苦労もなく進んでしまったのだが、これらの情報からフロアボスもダンジョンマスターも人型である可能性が高く、それが分かっていればある程度対策を考えることができるそうだ。 



「日が暮れるよりも早く、調査が終わったのは重畳だった。 私としてはフロアボスとも戦っておきたいおきたいところなのだが、そうなると調査の域を超えてしまうか……」


「大穴の断面からの短時間調査ではございましたが、ダンジョンの端であるとか、階段のような物は一切見つかりませんでしたな。 そこそこの広さがあると推定出来ますので、フロアボスを探すにもそれなりの時間が掛かってしまうかと思われますな」


 ダンジョンの修復がジリジリと進んでいるのか、目に見えて瓦礫が少なくなった大穴の底に戻り、シークさんとヴァルターさんで、この後どうするのかを相談している。

 上に登っていったのだから表層の森に戻っても良かったのであるが、表層ではモンスターが出る可能性があるので、ダンジョンの奥深くではあるが外と認識されている大穴の底の方がモンスターがでなくて休憩しやすいいう、非常におかしな状態になっているからである。


「もう一回給湯器爆破で、もっと下まで穴を掘るっていうのはどうかなー?」


「出来る出来ないで言えば出来るだろうが、ダンジョンそのものが崩壊する可能性があるな。 ダンジョンコアを爆破してしまう可能性も0じゃあない、アレ貴重なんだろ?」


 ダンジョンを消滅させるのが目的ではなく、あくまで調査が目的だからな。

 消滅させるだけなら、時限装置なり遠隔装置なりを作って、500m感覚くらいで爆破してやれば更地というか露天鉱床みたいに出来るんじゃなかろうか?


「錬金術って凄いんですわね。 自信無くしますわ」


「これを基準に考えちゃ駄目よ? 非常識が服着て歩いてるようなものだと思った方が良いわ、それにすぐ錬金術じゃないからどうたらこうたらって始まるんだから」


「酷い言われよう!?」


 最近アリーセの俺に対する態度が酷い気がする。

 え、自分の胸に手を当ててよく考えろ? 心音しか聞こえないから、ちょっと何のことかわからないな。


「制御の出来ない大きな力は、いずれ身を滅ぼす力となると言います。 ご自愛くださいね」


 イーリスの言うことも一理ある、HPを上げていなかったら即死だった場面は非常に多かったのも確かだし……。


「今の限界や常識を超えて新しいものに挑戦し続ける優秀な錬金術師ほど爆発回数が多いのは有名な話だよー?」


 ワトスン、それ全然フォローになってないからな?



「疲れているところすまないが、皆聞いてくれ」


 一通りの依頼であった調査が終わって、雑談をしていた俺達にシークさんが声をかけてきた。


「少々物足りないが、私は調査としては十分以上の成果をあげられたかと思っている」


 シークさんは一旦言葉を切って、皆を見回した。

 なんか、会話にこういうタメのような間を入れてくるあたり、やっぱり多人数に対して話慣れているんだなと、思ってしまう。

 まあ、そうりゃそうだろって言われたらそうなのだが。

 シークさんは、全員が自分を注目しているか確認をとったあと、再び口を開いた。

「本来であれば、この後ギルドに帰還し報告をしに行くわけだが、脱出経路がダンジョンの修復によって塞がらないように修復を阻害する結界石の陣を敷いているのは皆の知っての通りだが、追加調査をするにも今後のためにも出来ればこの陣を維持しておきたいと思っている」


 要するに、誰か残って陣が壊れないよう見張っとけってことだろう、流石にシークさんが残るとか言い出さないよな?


「今現在大丈夫だからと言って、この先この場所が安全であるかはわかりませんわ。 修復が想定より大分早くなって、ダンジョンの深部に取り残されるという可能性だってありますから、大変危険かと思いますわ」


「それは、重々承知しているから、無理強いはするつもりはない。 最悪誰も残りたくないということであれば、私が残ろうとも思っている」


 いやいやいや、それはマズイでしょう。 口には出さないが皆も同じ事を思ったのだろう、全員同じような表情で、シークさんを見ている。

 あ、ヴァルターさんは平常通りだった。


「それなら、私とイオリが残これば良いんじゃない?」


 アリーセが、残っても良いと言う。 って俺もかよ!?

 まあ、俺と俺の事情を知っているアリーセなら、もし閉じ込められてもなんとかなるか。

 最悪また爆破しても良いわけだし。


「爆破するなら、僕も残るよー」


「いや、爆破すると決まったわけじゃないからな?」


「巻き込まれると大変そうですわね、わたくしは街に戻ることにしますわ」


「いや、爆破すると決まったわけじゃないからな?」


「確かにこの規模ですと、私も未熟ゆえ信仰心が足りません」


「いや、爆破すると決まったわけじゃないからな? それに信仰心で爆破の衝撃は受けられないからな?」


「命を守るために使用するのならば仕方がないが、この大穴を開けた規模の爆発は可能ならば控えてくれると嬉しく思う」


 なぜ、皆俺が爆破する前提で話すのだろうか? 解せぬ。

 とはいえ、シークさんをココに残して帰るという選択肢は無いので、俺とアリーセ、爆破目当てのワトスンが残って陣を維持することになった。


「明日の昼過ぎには、開発の第一陣が資材等を持って到着するはずだ、それまでよろしく頼む。 報酬や今回の戦利品などの分配は私が責任を持って執り行うことを約束しよう」


 いきなり、もう開発とか早すぎな気もするが、判断すべき領主がすでに最新の情報を最速で手に入れたわけだからな、対応が早いのも不思議ではないか。

 簡単に戻った跡の段取りを話して街に戻るメンバーを見送り、残った俺とアリーセとワトスンは、大穴の底で野営の準備を始めた。

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