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114話 そしてお説教へ

「魔力はすっかり回復いたしましたわ!」


「なるほど、精神的に疲労を溜めたり飲酒等でも進行してしまうと言うのだな?」


「若いからといって油断が出来ぬとは存じませんでした」


 いつの間にか参加してきていたシークさんとヴァルターさんが真剣な表情で原因と予防についての話を聞いている。

 ヴァルターさんは今の時点でフサフサだし心配なさそうだけど真剣だな。


「不摂生から進行が進むという部分は、納得がいくな、不摂生の塊の様な貴族連中ほどやけにカツラを買い求めているという話は商人の間では有名だ」


「あ、あの……。 魔力が回復しましたわ」


「教会で治療出来るという事実も、意外に知られておりませんな」


 教会では何が治せて何が治せないとか、治療の程度や内容を自分達で特に宣伝活動は行っていないし、治療を受けた方も内容が内容だけに吹聴しないので、意外と知られていないらしい。

 貴族の治療を行う事ももちろんあるそうだが、治療出来ることを知らないので、わざわざカツラを取ることもないし、その事を相談したりもしないようだ。


「社交界でずっと似合わないカツラをつけていた伯爵が居たが、ある日を境にカツラの着用を止め、別に薄くも無いのに何故今までカツラを被って居たのかと不思議に思っていたのだが、同時期に不信心で有名だったはずの伯爵が教会へ多額の寄付と布教の支援を始めていたという事があったのは、つまりそういう事だったのだな」


 シークさんが一人で何か感心している。


「はいはい! ハゲの話の続きはダンジョンの調査が終わって、帰ってからじっくりやって!! エーリカが可哀想でしょ!!」


 パンパンとアリーセが手を叩いて、大事な話を中断してくる。

 あまりスルーされ慣れして居ないのか、膝を抱えて地面にのの字を書いている。


「いやしかし、これは男性の永遠の悩みで……」


「か、えっ、て、か、ら!」


「イ、イエスマム、サーセンっしたぁ」


 怖い笑顔のアリーセに顔面を鷲掴みにされてギリギリと締め付けられる。

 あ、やばい、持ち上げないで、首取れる! 首取れちゃうからー!!


 反省の意を一生懸命伝えて、意識が飛びそうになった辺りでドサリと落とされて開放された。


「HPを上げていなかったら即死だった…」


 スキルをミスってぶっ飛んだ時よりダメージがあった気がするぞ……。


「それで、何か僕に用があったんじゃないのかなー?」


「あーそうだった。 エーリカの魔力を回復してた魔道具って周りから魔素を集めてるんだよな? あれみたいに魔素を集める機構をコイツにつけられないかと思ってな」


 ひとまず、思い付いた内容をワトスンに話して、この場でなんとか出来ないかを聞いてみる。

 身につけるようなサイズでは無理でも設置型なら大型化しても問題は無いだろうしな。


「効率良く集める方法については研究中だから、なんとも言えないけど、出来たとしても道具も材料もないから、流石にここでパパっと作るってわけにはいかないなー」


「さっき見つかった不渇の瓶とかいうやつを改造したら応急的に出来たりしないか?」


 周囲から魔素を集め水を作り出す瓶なら、すでに魔素を集めるという部分をクリアしているんでは無いだろうか?


「機構式じゃなくて完全な魔術式っぽいから改造するなら、それこそ解析に時間がかかっちゃうよー」


 そんな区分があるのか。

 やっぱり、魔法陣的なモノがびっしりと内側に書かれていたりするのだろうか?


「いずれは出来るけど、今は諦めるしかないって事か」


「瓶に縄の端っこを突っ込んでみたらー? すでに水があるとこで魔素から魔力、魔力から水に変えるってやるのは効率が悪いから注ぎ口近辺で変換していると思うんだよね。 だから瓶の中の水が溜まってない部分は多少魔力が溜まってるはずなんだよー」


 なるほど、焼け石に水かもしれないが専門家がそう言うのであれば試してみよう。

 早速注連縄しめなわの端っこを、瓶に突っ込んでみるが、特に何かが起こったようには見えない。


「何も起こらんな?」


「魔力の供給だけでなにか目に見える反応なんか出ないよ、何か起るとしたら供給過多で爆発するくらいかなー」


「爆発するかもしれん事をさらっとやらせないでくれ!?」


 注連縄しめなわこと「注連縄しめなわ君一号」は、魔道具扱いになってはいるが、ぶっちゃけ筒状に巻いた金属のメッシュに結界石を詰め込んだだけという代物だ。

 メーターがあったりするわけではないので、どの程度魔力が残っているかとかはわからないだ。

 解析ツールで見れば解るかもしれないが、今は使えないので、今の状態が見た目通り何も起こっていないのか、魔力が充填されている状態なのか、はたまた爆発寸前なのかが不明である。


「どれどれー……補充率がどのくらいかわからないけど、魔素から変換される度にどんどん補充されていってるっぽいね、これなら爆発はしないねー」


 ワトスンがゴーグルのような魔道具を使って覗き込んでいる。


「なんで、爆発しないという部分で若干残念そうにしたのか小一時間問い詰めたいところだが、そいつは、魔素か魔力が見えるようになる魔道具かなにかか?」


「ご名答ー。 魔力が見えるようになる魔道具だねー。 まー魔力しか見えないからこのまま歩くといろんなものにぶつかって危ないんだけどねー」


「半々くらいにしとけよ!?」


「そういうのもあるけど、文字通り半分までしか見えないから、僅かな魔力が見えなくなっちゃうんだよねー」


 そうそうはうまくいかないらしい。

 ともかく、爆発の心配なく、魔力の供給が出来るようになったのなら一先ず問題ないか。

 わずかすぎて焼け石に水ってことになるかもしれないが、今はこれで良しとしておこう。


「終わったのか?」


「ああ、はい、とりあえずの応急処置ですけど、このまま半日程度なら大丈夫かと」


 普通に補充をしておいたしな。


「よろしい、では引き継続きになるが……」


「あ、はい準備します」


「えーじーえーとやらの予防に最適な食事についてなのだが……」


「あ、えーと、基本的にコレさえ食べればというものはありません、偏食は別の病魔を呼びび寄せますので、野菜を中心にバランスの良い……ん? 何だアリーセ話なら後に……ひいい」


 後ろからアリーセに肩をたたかれたので振り向くと、現実の女の子がしてはいけない非常に黒いオーラの出た笑顔で立っていた。

 こいつは、絶対逆らっちゃ駄目なやつだ!



「しーくさんにいおりー? その話は帰ってからにしましょうねぇ?」


「「イエスマム!」」


 背筋を伸ばし返答する。

 シークさんまで一緒になって返事して、一緒に正座して叱られているんだが、なんでシークさんは楽しそうなんでしょうか?

 アリーセに非はないと思うが、コンディションポーションの効果切れたあとが大変かもしれないな。


「また、他のこと考えてるでしょ!?」


 あ、はいすみません。

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