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112話 市場価格とかはスキルじゃわからない

 ひとまず、この階層の調査としては十分だということで大穴の底に戻ってきた。

 パッと見た感じダンジョンの修復は始まって居ないように見える。


 穴の底は瓦礫だらけではあるが、比較的造形物が残っているあたりで各々休憩を取る。

 皆が落ち着いたところで、戦利品を取り出して鑑定をする。

 みんなが見ているので解析ツールは使えないが、今は別に必要ないだろう。


《秘石のセプター》

:全属性を秘めた魔法の発動体。

 旧王国の宝物庫の鍵の一つであるといわれている。


《守りのバングル》

:不可視の簡易的な結界を張ることが出来る

 ある程度までの攻撃を防ぐことができる。


《不渇の瓶》

:周囲から魔素を集め、飲料可能な水を作り出す瓶

 使用者が魔力を込めることでも使用ができる。



 魔石はダンジョン内でよく生成されるソコソコ高品質のものだった。

 ゲームの時の感覚だと、イベントアイテムっぽいのがあるな~というだけで、あんまり良いアイテムには見えないが、どうなんだろうか?


「鑑定結果としては、こんな感じですね」


 結果を皆に伝えると、シークさんがヴァルターさんに魔石を渡し、どの程度の金額相当になるかを訪ねている。

 なんでも同じ品質の魔石であっても、大きさや形、色合い等によって取引の際の値段が変わるからということらしい。

 魔道具の燃料的な使い方のみで考える場合は、品質だけ見れば問題ないそうだが、宝石のように装飾品的な付加価値が付けば、低品質の魔石でも高値がつく事があるそうだ。

 ヴァルターさんは、虫眼鏡のような道具で一つ一つ丁寧に魔石を確認していく。


「内部に傷や不純物も非常に少なく、色合いも深いですな。 通常の魔石ですともっと角が立っているものですが、モンスターが体内に持っていた為か、表面が滑らかになっております。 さらに言えば、ダンジョンの深部で発見されたという希少性から、王都等で売れば無加工でも通常の30倍程度の価格がつけられるかと思われます」


 ヴァルターさんのスキルとはまた別の知識による鑑定結果が出たようだ。

 スキルの鑑定結果では実際の市場価格までは分からないから、それが分かる人がいるというのは助かる。 


「30倍にもなるのですか?」


 これに反応したのは、イーリスだった。

 シークさんを含めた他のメンバーは、品質以外でも付加価値がつく事を知っていたようで、特に疑問は無いようであった。

 俺はもちろん知らなかったわけだが、元の世界でも宝石の原価が数千円だというのは知っているので、それと同じようなものだろうと納得は出来る。


「ツテさえあれば、それなりの武勇伝でもでっち上げておけば、ものの価値の分からん頭の足りない貴族共がこぞって買ってくれるであろうな」


 シークさんが鼻で笑うように言う。

 貴族界の話はツッコむとむと長そうなので、ここはスルーさせてもらおう。


「例えば、私……じゃあなっかったな、ここの領主がコレに白金貨一枚の価値があると言ったとしよう。 すると、血筋以外誇れるものがどーたらと言ってくる様な連中は、これより高値を付けてちっぽけなプライドを満足させようとするのだ。 いっそ、白金貨100枚だと吹聴してやろうかとも考えてしまうな」


 スルーしたのに、黒いシークさんが出てきてしまったが、ここで質問やツッコミはさらに黒さを加速させる可能性が高いので、根気よくスルーさせてもらおう。

 他のマジックアイテムの方に話題を逸らすべきかもしれない。


「あ、あの、その場合、あのような物にそんなに出して、物の価値がわからない奴めーという事にはならないのですか?」


 スルーしてたのだがイーリスが重ねて質問をしてしまった。 もっともな質問なのだが今は自重してほしかったな!


「そうはならぬから、頭が足りんと言う理由だな。 あの連中はより多く財力を示した方が偉いと思っているのだ。 その財力は領民からの税であるにもかかわらずだぞ? 特にこういう深層のダンジョン産という、価値が曖昧なものに関しては、先に価格を決めた相手にその程度の価値しか認められないとは驚きだ、希少価値が非常に高いものなのに、もしかして安く買い叩いたのですかな? と、さも自分の方が価値をわかっているとばかりに勝手に値段を吊り上げてくるからな、心配には及ばんよ」


「わたしにはよくわかりませんが、そういうものなのですねぇ勉強になります」


 実感のこもった説明にイーリスが関心したように頷いている。

 鰯の頭も信心からーなどという言葉があるが、バリバリの宗教関係者であるイーリスが言っているのが、俺の日本人的感覚ではなんだが不思議な気持ちだ。

 まあ、居るのか居ないのかはっきりしない元の世界の神様と違って、こっちの世界では本当に居る可能性は高いので、別におかしくはないのだろうが……。


「どれも、いわゆる当たりに該当する品々だと思いますわ、特に旧王国の宝物庫の鍵の一つがあったことが驚きですわ」


「やっぱり珍しいのか?」


 実際にあったのかどうかわからないらしいが、俺が使っている金貨といいダンジョン産のものに旧王国絡みのものが時々あるという話は聞いている。


「この宝物庫の鍵だという物は今までにも幾つか発見されておりますわ、それ自体でもマジックアイテムとして非常に優秀であるために、発見者がそのまま所持している事が多く、なかなか市場には出回りませんし、出てきてもかなりの値段なのですわ」


「まあ、その旧王国の宝物庫どころか、何かしらの建物や存在した形跡すら見つかっていないかったりするけどね、もし発見されたら~って考えて手放さない人が多いのよね」


 そういうことなら、複製して持っておこうかな? 別にお金は要らないけど、なんというか隠された秘境の失われた秘宝だとか、どんだけ秘密なんだよとか思いながらも浪漫を感じてしまう自分がいる。


「そういや、なんで旧王国とか地味な呼び方なんだ? 王朝とか王国ともなれば、なんだか偉そうな名前がついていそうなものなのだが」


 素朴な疑問が湧いてきたので、誰にともなく聞いてみた。


「気にしてなかったけど、そう言われれば確かにそうよね」


「旧王国金貨って言うのがダンジョン産の金貨であるってことすら、今知ったよー」


 皆知らないようだ。やはりここはエーリカ先生に教えてもらう。


「旧王国というのは通称ですわ、正式名称は、伝説の古代フェアガンゲンハイテンヴァルツェルフェンバイントゥルムハーフェンミュンデ王国という名称ですわ。 このように長い名前ですので、誰が言い出したかは不明ですが通常の金貨のことを王国金貨という事から、旧王国金貨という言い方が商人を中心に広まって定着した呼び名だと記憶しておりますわ」


 確かに舌を噛みそうだし省略して呼びたくなるな。


「しかし、エーリカはなんでもよく知っているな。 敬意を込めてウィキリカ先生と呼ばせてもらおう」


「よくわかりませんがお断りしておきますわ、普段通りエーリカとお呼びくださいませ」


 すげなく断られてしまった。 残念!


「深層から入ったとは言え、コレだけの物が手に入ったというのは重畳だ。 見つけた物の分配については冒険者のガイドラインに従って平等に行うつもりだ、魔石については直接これが欲しいという者が居なければ私の方で売却後に均等に分配するが良いか?」


 シークさんが、そういえば決めていなかった発見物をどうするかの確認を皆にしてきた。

 先程の話を聞いているので、シークさんの気分次第で、自分たちで売るよりも確実に高く売却されることが分かっている。 これには誰も反対はないだろう。


 「よし、では一時的にアイテムボックスを持つイオリがまとめて持っていてくれ。 上層のフロアでの調査も引き続きよろしく頼むぞ」


旧王国の呼び名に特に裏の意味はありません

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