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101話 意外と皆真面目に捜索開始

「この辺りが10年前に怪しいと言われていた場所に近いかと思われます」


 ヴァルターさんが、馬車を止めて振り返り皆に伝える。

 該当の場所までは流石に徒歩での移動となる。

 森の中なので、正確にどの辺りかまでは流石に分からないが、この辺だと言う意味は俺にもよくわかる。


「木がみんな同じ方向に倒れてるわね」


「足跡なんかも同じ方向に向いているように思えますね」


 アリーセとイーリスが馬車から降りてきて、周りの様子をうかがっている。

 二人が言うとおり、なぎ倒された木の向いている方向と大型モンスターの足跡は同じ方向に向いている。

 つまり、この足跡や木の倒された方向と逆に辿れば、目的の場所につけると言う事でもある。


「10年前のモンスターの発生場所と今回の発生場所は同じ可能性が高いわね」


「多少ずれてるかもしれませんわよ?」


「そうだな、まったく同じ場所であると断定するのは早いのでは無いのか?」


「一応、根拠はあるわよ? 大分朽ちてはいるけど、古い倒木が結構あるわ。 それも新しい物とまったく同じ方向に倒れて居るのよ」

 

 わりと皆、真面目に捜索を開始しているな 。

 驚くべきことにアリーセが、ジ……シークさんにもタメ口だ、微妙にエーリカの方しか向いていないので、エーリカに対して返答をしただけかもしれないが。


「この辺だと、まだ何も反応はないねー」


 二本のL型の棒状の魔道具を持ったワトスンが、その場でクルクルと回りながら、ダンジョンの魔力を検知しようとしている。

 なんか、見たことある魔道具だな……。

 あ、ダウジングとかいうやつに似てるんだ。


「その魔道具、ダンジョンの魔力を検知すると、二本の棒が開いたりするのか?」


「よく知ってるねー、そうだよ、検知した方向に向けるとこの棒がこんな風に開いてお知らせしてくれるんだよ」


 それ本当に魔道具なのか?

 水漏れした水道管を見つけるやつじゃないのか?


 皆が真面目に捜索を開始しているが、俺は微妙に手持ち無沙汰になっている。

 手当たり次第に鑑定をして、一緒に捜索をしている風味に見せているだけだったりする。

 今のところ、木や草の種類に詳しくなって行くだけで、とくにこれと言ったものは発見していない。

 あ、あのキノコ薬の材料になるな。 モンスターに踏み潰されてなければ……。


 馬車の番をするという事でヴァルターさんを1人残して、モンスターの通った痕跡を辿って行くことになった。

 アリーセを先頭にジー……シークさん、ワトスン、エーリカ、イーリスという順で俺は一番後ろだ。

 馬車の中でそれぞれの戦闘スタイルであるとか、得意な魔法であるとかを自己紹介とともに聞いて、隊列を決めたのだ。

 まあ、ほとんどモンスターは出ないだろうが、一応と言うやつである。


アリーセは一応先頭であるが、先行して周りを見たりするので、実質的な先頭はジ……シークさんだ。

 本人が率先して先頭に立ちたがったので、好きにさせているだけとも言えるが……。

 次に探知機を持っているワトスン。

 真ん中にエーリカ。物理防御の低いマジックユーザーを守る形である。

 Bランクともなれば、近接戦闘が出来ないわけでも、物理防御が弱いわけでも無いらしいので、何処でも問題ないらしいが、ジ……シークさんの手前そういう事にしているようだ。

 その後ろのイーリスは少し意外だったが、しっかりと戦闘訓練を受けており、実際にモンスターとも戦えるらしい。

 ただの旅装に見えた服は、その下に白銀のプレートが入っており、ごっついメイスと小さな丸盾を持っていた。

 女神に仕えると言っても、別に非暴力というわけでは無いようだ。

 まあ、元の世界でも宗教関連の人達の方がむしろ何かと戦ってるから不思議ではないか……。


「治療や回復を主としている私が、こういった、殺傷のための装備を持っている事が不思議ですか?」


 ジロジロ見ていたら、イーリスに気づかれてしまった。


「いや、歴史を紐解けば、その事になんら不思議は感じないな、思ったより力持ちなんだなとは思ったが……」


「あ、いえ、私はこれでも獣人ですので、多少ですが力が強いんですよ」


 少し顔が赤いな、女の子に力持ちって言うのは無かったな、恥ずかしい思いをさせてしまったようだ。

 メイスゴツいけど、普通のメイスの2倍は大きいような気がするけど。


 ともあれ、一番後ろが俺だ、後方警戒という建前だが、一番後ろにいる事で注目される事なく解析ツールを使ってやろうという魂胆でもある。

 ジ……シークさんを始め、皆のHPも減らないようにする必要が出てくるかもしれないからな。


 この点において、ヴァルターさんが馬車に居残りしてくれると言うのは正直助かった。

 何故かと言うと、皆が見ていない隙に解析ツールを使おうとした瞬間、御者をしているヴァルターさんが振り返ってこちらを見てくるのだ。

 察しが良すぎるだけかもしれないが、もしかしたら、解析ツールを使おうとすると、なんらかの不思議エナジーみたいなものが漏れるのかもしれない。


 そんな感じで、ヴァルターさんを除いた皆のコードを収集しつつ、モンスター発生ポイントらしき場所に足を進めた。


 小一時間ほど、進んだ辺りでアリーセが全員に止まるように指示を出した。

 一瞬モンスターが出たのかと身構えたが、そうではないらしい。


「この辺りから、足跡や倒木の方向がバラけ始めているわ。 この先に行くともうメチャクチャになってるから、何かあるとしたらこの辺りだと思うわ」


 少し先行して見てきたらしいアリーセが、そのように言うので、各々周りを見渡し始める。


「そうか、報告ご苦労だった。 ではアンドレアは魔道具を、エーリカ、イオリは魔法とスキルによる捜索を開始してくれ。 私とイーリスは周囲の警戒をする。 アリーセ、範囲を広げて引き続き周囲の斥候を頼む」


 ジ……シークさんが嬉々として皆に指示を出していく。

 皆返事を返してそれぞれの役割をこなしていく。

 一応リーダーは俺なんだけどな……。

 まあいいや、鑑定しまくるか。

 何があるかな、

 木、木、岩、草、何かの粘液、小石、瑪瑙の原石、踏み荒らされた薬草、何かの肉片、倒された木、踏まれて砕けた魔石、潰れたキノコ、砕けた石、踏み荒らされた花各種、封印石のかけら、木、草、木片、無事な薬草、岩、小さな魔石、何かの肉片、朽ちた剣……。


 キリがないけど、売れそうな物くらいは、ちゃんと鑑定してるぞってアピールに拾っておくか。

 粘液とか肉片とか魔石とか朽ちた武器なんかは、大きなモンスターに踏み潰された小さなモンスターの痕跡だろうな。


 そういえば、ベヒーモスが通ったような痕跡がないな、あれが通った所は酷い事になっていたが、あれはどっから涌いたのだろう?

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