2話:魔弾
エルミナ平原という場所がある。大陸の人々が住んでいる場所よりはるか南。
半径100kmほどあり、木が一本も生えず短い草しか生えていない平坦な場所である。
ここには希少な薬草があり、精霊が多く存在し、マナがあふれている。そして凶暴な生物が居ない。
だがごく稀に凶暴な生物が進入し暴れることがある。
そう、たとえば…今暴れている『翼火竜」
「くそっ!!エイルが腕もってかれちまったぁ!回復頼む!!血を止めろ!」
「傷ひとつつきゃしねぇ!!老竜なんてきいてねぇよ!」
竜にもランクがあり幼竜・少竜・成竜・老竜の4ランクあり、老流は種類によっては最上位クエストとして出されるほどだ。
「増援は!?増援はまだかよ!!」
―――ガアアアァァァァァ!!!!
竜が雄たけびをあげ大きく口を開けた口から白い炎を吐き出そうとする
「白炎だぁ・・・!!!逃げろぉ!逃げろおぉぉぉ!!!」
竜がその炎を吐き出そうとしたとき、空気を切り裂き飛んでくる小さな物体が顎に当たり口の中で炎が爆発し後ろのめりになる。
「はぁ・・・王都に帰って5分で送られるってひどくねぇ?ったく・・・」
ブツブツ文句をいいながら少し長いマスケット銃を2丁肩に担ぎながら歩いてくる男
髪は背中の中ほどで顔は上の上、凛々しい顔立ちだが今その顔に浮かんでいるのは怠惰の表情
「めんどくさいからすぐに終わらせるぜ【リロード・徹甲弾・自操】」
発砲音と共に銃弾は見えない速度で竜へ迫り貫く。
その弾痕は小さな銃弾の3回りほど大きな穴を開けていた。
―――グガアアァァァァアァ!?!?
貫いた弾丸はそのままどこかへ飛んでいくことなくカクンッと方向を変え竜を貫き、そしてまた方向を変え竜を貫く。
何度も二つの銃弾に貫かれ無残な姿になった竜に見向きもせずに増援に来た男は立ち去っていった。
「あ・・・あの老竜を一瞬で・・・あいつだれだよ!?」
「お前しらねーのかよ?ゼクだよ。ゼク!【魔弾のゼク】」
「え!?あんな若いやつが・・・」
「ホントだぜ?それより早く負傷者の治療だ!おい!止血剤くばれ!治療師は欠損部分を可能な限りくっつけてくれ!」