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エピローグ

 ユウキ達にとって長くて短いような、でも一生忘れることができない夏休みが終わった。今日はバークリーアーム学園の二学期の始業式の日である。

 そして、バークリーアーム学園の理事長であるミレイユの父親のはからいで、ローラとシャイオンも転入生としてバークリーアーム学園に通うことになった。

 ローラは高等部の2年生、ユウキやミレイユと同じクラスである。そして、シャイオンは中等部の2年生。レイナと同じクラスとなった。これもミレイユの父親のはからいだろう。彼女たちにとっては同じクラスに知り合いがいることは不安がることも無く安心して授業に参加することができる。

 ユウキは制服姿でレイナとローラと一緒に登校してきた。

 「おはよー!」

 「おっ、ミレイユか。」

 校門の前でミレイユとシャイオンに出会う。同じく制服姿だ。気のせいか、以前ファミレスで会ったときより顔色はよい。やはりミリーニャを召喚することによってバークリーアーム家の生活レベルが向上したことが影響しているのだろう。

 そして、二人の後ろにはミリーニャの姿があった。

 「あれ?ミリーニャか?背中の翼はどうしたんだ?」

 「ああ、これは自由に隠すことができる。さすがにこの街のなかでは翼を出したままだと目立つからな。」

 確かに黒い翼を持つ女性が街をうろついていたら怪しまれるどころか、場合によっては警察や軍が出動するかもしれない。便利な翼でよかった、とユウキは思う。

 「ではシャイオン様。私はこれで。まだ家事が残っておりますので。」

 「ああ、見送りご苦労だった。」

 そう言ってミリーニャはシャイオン達が来た道を歩いて帰っていった。

 「じゃあ、お兄ちゃんも後でね!行こう、シャイオン!」

 「ああ!」

 高等部と中等部は校舎は隣どおしだが校門は別の場所にある。レイナはシャイオンの手を引っ張り中等部への校舎へと走っていった。

 ユウキ達も高等部への校舎へと歩いて行く。

 「そういえば、あの動画、ものすごいことになっていたな。」

 「そうだね。毎日のようにワイドショーに取り上げられてたよね。普通の報道番組でも取り上げられていたよ。」

 彼らの言っているものは先日撮影し、動画共有サイトWeTubeとニンマリ動画にアップロードした、魔法戦士ローランの動画の事だ。

 「国会でも取り上げられていたね。」

 ユウキは国会中継でミルバポート政府の歴史認識を問いただす、与党政府と野党議員の激しいやりとりの場面を思い出した。ミルバポートの国会は今この件で大騒ぎになっている。

 「そりゃ、歴史教科書が変わっちゃうかも知れないんだ。一部の議員の中には、『魔法戦士ローランに参考人招致を!』とか言っているけどさ。」

 「え?私国会に行かなくちゃ行けないの?」

 驚きの顔を見せるローラ。

 「行かせるわけねーだろ。魔法戦士ローランは鬼神出没で事件のある場所にしか登場しない設定なんだ。」

 「設定、ね・・・。」

 ミレイユは呆れた顔で返事する。

 しかし、ミルバポート政府は魔王シャイオンは1000年前に倒されたのではなく封印されていた、この事実を認識している。そのうち政府が歴史認識の過ちを認めて沈静化していくだろう。

 しかし、ユウキが気にしていることはそのことではない。

 「それは良いとして、魔法研究の件はどうなっているんだ?」

 「うーん、私が調べたところでは『事実確認中』ってところかしら。」

 「なんだそりゃ。」

 「要するに、『本当にシャイオンは復活しているのか、本当に1000年の眠り間に力を失っているのか』ってことが確認できないから調査中って言うところね。」

 「ということは魔法研究のまだ実験は続けられているのか?」

 「中止にはなっていないわね。でも一時的ではあるけど中断はされているみたいよ。」

 「そうか・・・。」

 ユウキは大きなため息をつく。

 「なぁ、俺たちのやってきたのことは全部無駄だったのかな?」

 「そんなことは無いと思うよ。」

 ローラが二人の前に立つ。

 「だって、みんなはシャイオンを助けたり、グレイアンを倒したり、クリスタル・シャイオンを破壊したりしたんだよ。これはみんながいたからできたことだと思うんだ。誰かが欠けてたらできなかったことだと思う。だから、魔法実験を中止させることもみんなで知恵を出し合ってやったことだから、きっと無駄じゃない。いつかきっと結果が出ると思うよ。」

 「ローラ・・・」

 「それでもダメだっていうんだったら、いざとなったら魔法戦士ローランが現れて全部解決してあげるんだから!」

 

 しばらくの沈黙。

 ローラの顔に冷や汗が流れる。

 「え?あ・・・私なんか変な事言った?」

 ユウキとミレイユは突然大笑いする。

 「ふふふ・・・そうね。魔法戦士ローランに頑張ってもらおうかしら!」

 「ははは・・・まぁ、中止までいかなくても中断させることはできたんだ。また再開しようとしたらまた別の手を考えるか。」

 「そうそう、ポジティブに考えなくちゃ!」

 

 後で判明した事だが、後日ストリアン・カンパニー社にミルバポート社政府のガサ入れが行われ魔王シャイオンに関しての詳細情報がミルバポート政府にも知れることになる。その結果、魔法戦士ローランの言っていた内容が事実であると判明し、魔法研究の実験は全て中止されたことがミレイユから告げられた。

 

 そうこう話している内に、学園内に授業開始を知らせるチャイムが鳴る。

 「あ、もうこんな時間か。ローラ、俺たちは先に教室に行くから。この廊下をまっすぐ行くと職員室があるから、ローラは職員室に行くんだ。後で教室まで案内してくれるから。」

 「わかった。じゃあ、また後でね、」

 ユウキ達は大急ぎで教室に入り自分の席に着く。ローラは一旦職員室へ向かい、担任教師と一緒に教室の中に教室に入ってきた。

 「えー、二学期から新しくみんなの仲間になる転入生を紹介する。じゃ、自己紹介を。」

 「あ、はい。えっと、私の名前はローラ・エスリファムと言います。みなさん、よろしくお願いします。」

 そう言ってお辞儀をするローラ。

 「あのー質問良いですか?」

 クラスメイトの一人から手が上がる。

 「あのー、ローラさんって、実はあの魔法戦士ローランですか?」

 「そういえば確かにあの顔はあの動画に出ていた魔法戦士ローランにそっくりだな。」

 ざわめく教室内。

 「え?あ、あの、その、よく似ていると言われますけど、・・・全くの別人です!」

 顔を真っ赤にし、両手を前で手を振って必死に否定するローラ。その姿を見てユウキとミレイユは必死に笑いをこらえていた。

 (そういえば・・・シャイオン達はちゃんとやっているかな・・・。)

 ユウキは窓から隣の中等部の校舎を眺める。

 

 

 

 「そういえばシャイオンは学校でやりたいこととかあるの?」

 「うむ、そうだな・・・できれば友達をたくさん作りたい。」

 シャイオンの友達と言えばレイナをはじめ、ミレイユやユウキを中心とした狭い範囲の知り合いしかいない。もっと友達を作りたい。もっといろんな人達とふれ合い仲良くなりたい。シャイオンにはそういう願望があった。

 「シャイオンなら大丈夫だよ。クラスのみんなはいい人ばかりだからすぐ仲良くなれるよ。」

 「そ、そうか。それを聞いて少し安心した。」

 「そうそう、それより挨拶大丈夫?」

 「挨拶?」

 「うん、新しく転入してきたんだから、みんなの前で自己紹介しないと。」

 「ま、まぁ一応練習はしてきたんだが・・・緊張するな・・・。」

 「シャイオンなら大丈夫だよ。リラックス、リラックス!」

 そう言ってレイナはシャイオンを職員室の前まで案内する。

 「じゃあ、私は先に教室に行くからね。また後でね!」

 レイナはシャイオンと分かれ、先に教室に入り、シャイオンの登場を待った。

 学園内に授業開始のチャイムが鳴り響く。

 そして教室に教師と一緒にシャイオンが入ってきた。

 「それじゃあ、二学期から新しくみなさんの仲間になる転入生を紹介します。さ、自己紹介を。」

 シャイオンはガチガチに緊張していた。それはシャイオンを見守るレイナからも一目瞭然だった。

 (シャイオン、頑張って!)


 「余の・・・じゃなかった、わ、私の名前はシャイオン・ツァイクエルだ。みんな、あの、その・・・で、できれば私と仲良くして欲しい!よろしく頼む!」




クリスタル・シャイオン

終わり

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