第6話 学習と誤魔化しと策略と
「うーん・・・・おもしろい本は無いかなー?」
現在は、王宮にある父上の書斎に来ていた。
父上の書斎は、壁全体が分厚い本に囲まれていて、図書館のような造りをしている。
俺は、とりあえず近くにあった本棚に手を伸ばし分厚い本を取り出し始める。
「トール様、私がお持ちします」
女騎士さんが、いつの間にか隣に来て本を持とうと手を差し伸べてくれた。
「じゃあ、お願い」
俺は、適当に本を探し、5冊ほど持ってもらう。
その後、俺用に作られた子供用の机に座り、本を読み始める。
俺が、適当に選んだ本は、魔法に関する知識が載っている教科書が二冊に、童話が3冊だ。
まずは、魔法に教科書を開き、パラパラと捲りながら興味がなさそうに読む。
「うーん・・・やっぱり面白くないよ・・・」
と女騎士に聞こえるように声をあげて、文句を言う。
「トール様? トール様にはその本はまだ早いと思いますよ?」
「トール様は、まだ5歳なんですから、もっと簡単な本を読まれるといいと思いますよ? これなんかどうですか?」
女騎士が当然だというように言い、童話の本を渡してくる。
「うん・・・そうだね・・・僕には、まだ早かったみたいだね・・・」
女騎士から童話の本を受け取り読み始める。
・・・・。
・・・・・・。
・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・。
「トール様」
うおっ!?
童話の本をゆっくりと読んでいたら、もう夕方になっていた。
「ごめん。夢中になってた。そろそろ部屋に戻らないといけないね」
「はい」
女騎士に本を戻してもらい、書斎から出て、部屋に戻る。
部屋の近くに来たときに、女騎士が一つ尋ねてきた。
「あのっ・・・トール様は、なぜ書斎に行くたびに魔法の本をお読みになるんですか?」
この女騎士は俺の護衛をしたのは初めてのはずだ・・・だが、書斎に行くたびにってことは、前に俺を護衛した女騎士達が情報を漏らしたんだろう。
俺が毎回、理解できていない魔法の本を最初に読むものだから女騎士達が不思議がっているんだろう・・・。
まあ、言い訳は考えているから大丈夫だ。
「うーん・・・とね。魔法の授業になったときに眼鏡のお姉さんを困らせないためだよ?」
「眼鏡のお姉さんですか?」
「うん! いつも勉強を教えてくれるんだよ! でも、僕はあまり覚えが良くないから、先に少しでも覚えておこうかなって思ってね・・・」
声のトーンを少しずつ落とし悲しさアピール!
「魔法は難しいって教えられたから、今から勉強して、お姉さんを驚かせたいんだ!」
後を振り替えに笑顔で、女騎士の顔を見る。
「ご立派ですね・・・」
女騎士は口を手で押さえ声を殺して泣き始めた。
俺は驚いた表情で、女騎士に近寄り焦っているように心配するように尋ねる。
「お姉さんっ、どうしたの!? どこか痛いのっ!?」
「ううん・・・大丈夫よっ・・・大丈夫」
5歳児の俺に心配かけないように年上の女騎士は、涙を拭って笑顔をつくってくれた。
よしっ!!
これで、魔法の本を読んでいても、怪しまれない。
すべて、この理由で通せばいい!!
俺は、女騎士がなぜ泣いたか分からないが、心配はしているよ? という態度で部屋に戻る。
そして、止めに女騎士と別れて部屋に入るときに、目を見て、優しい声で「何かあったら僕に相談してね」と言ってから部屋に入る。
ふっふっふっ、これで俺の女騎士サイドの好感度がまた上がるだろう!!
これで後10年もすれば・・・・・うーん・・・どんどん俺が汚くなっていくようだ・・・?
いやっ、神さんの部屋から、俺の心はすでに汚かったんだ・・・。
主人公の将来が心配・・・。
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