意志の連鎖
とある場所にユウシャと呼ばれる少年が居た。幼い頃から戦うことを宿命づけられ、魔王を倒すためだけに時間を使ってきた。
時が経ち、ユウシャは青年になった。様々な準備を整え、声援を背中に受け旅に出た。
ある日、森に潜み一夜を過ごそうとしていた。そこで、暴れた馬に轢かれて死んだ。
意志は繋がれる。
馬に乗っていた一般人の青年は、ユウシャのことを理解した。そして、それを忘れないために、自分に刻むために日記を付けた。
そして、事故で殺してしまった彼のために旅に出た。
しかし、あっさりと魔王の手下に殺され死んだ。
意志は繋がれる。
青年を殺した魔王の手下は、日記を読んで理解した。しかし、常に魔王に監視されている身。魔王の手下には不可能だった。
行動もできずのたれ死んだ。
意志は繋がれる。
魔王の手下の妻は死ぬ間際にそれを聞いて、理解した。夫の身分を利用し、城に潜入しようとした。しかし、性別を理由に捕まり慰婦にされてしまった。時が経ち解放された頃には、親の知らない子を授かり、同時に死んだ。
意志は途切れた。
子は親の遺書を見た。しかし、知識が無く理解できなかった。全てを理解しないまま、違う種族の友達に渡してしまった。子は何も知らずに死んでいった。
意志は運命かのように繋がれる。
違う種族の友達は、成長しいつか友に貰った遺書を理解した。自分の力だけでは不可能だと考え、村の仲間達にそのことを言った。しかし、周りとの意見が違う、自分たちに害を及ぼす可能性がある、そんな言葉を浴びせられた。そして、かつての友に殺された。
意志は繋がれる。
そんな時に、友達の家に火事場泥棒が入り、書を見て事実を理解した。しかし、臆病だった彼は行動に移さなかった。頭の片隅で理解しつつも、いつも通りに火事場泥棒をしていた。しかし、おぼつかない頭でやった火事場泥棒は失敗に終わり、家主の老人に殺された。
意志は繋がれる。
家主の老人は火事場泥棒の遺品整理の時に、書を見て理解した。しかし、高齢で老人は動きまわる力が残されていなかった。
年齢が若ければ、若ければと言い訳し、私は死んでいくだろう。そして身寄りのない私は意志を残せず死ぬことになるのだろうか。それだけはやっていけない。今までの数々の無念。運が無かった。力が足りなかった。身分が動けなくした。性別が行動を防いだ。知識が無かった。信頼が無かった。勇気が無かった。そして、年齢が――いや、私も勇気が無かったのだろうか。
私は、これらの意志を繋ぐために一冊の本を書くことにした。本ならば100年、200年、世界を越えて、この事実を知るものがいるだろう。次の意志を継いでほしい。その頃には、魔王はいないかも知れない。しかし、様々な困難はあるだろう。数々の人間は失敗してきた。表舞台に立つこと無く。だからこそ、失敗から学び、次こそは意志を繋ぎ、成功させてほしい。
次はあなたの番だ。
童話的な話が作ってみたくなり、思いつきのまま作ったお話。