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栗鼠と狐と狼の物語  作者: Neight
序章 ~過去~
2/9

1.騎士契約

始めましての方もいるかと思います、Neightです。

思いつきで始めた(←ヲイ)“龍と獅子と猫の物語”の20年前のお話です。


矛盾文章、誤字・脱字スキル発動して駄文ですが、読んでいただけると幸いです^^;



サブタイトルはあちらとほぼ同じ感じで進んでいくかと思います。

…それでは1話目をどうぞーー。

「アルティー!」



色取り取りの花が咲き誇る草原が近くにある海から来る海風に揺れる。


幼い少女はスキップを踏みながら振り返り、手を振った。



「如何したんです? 姫様」



呼びかけられた少年は苦笑しながら彼女の後ろを付いていく。



「このお花、アルティーみたい!」



そう言って差し出されたのは藍色の小振りな美しい花だった。



「そうですね、僕みたいですね」



少年は少女から花を貰い受けると自分の上着の胸ポケットに差し入れる。


嬉々として見上げてくる少女を見て思わず顔が綻び、頭を撫でると少女は気持ちよさそうに目を細めた。


心地良い風に吹かれ、少年と少女の髪がふわりと舞う。


少女は暫くにこにことしていたが、ふと、何かを思い出した様で、少年の服を引っ張った。



「あのね、また“あのゆめ”を見たの」


「“あの夢”ですか?」



こくりと頷くと嬉しそうに微笑んだ。



「今回は如何だったんですか?」



そう少年が問い掛けると少女は手を口に当てるという少年が考えるときに取るポーズを真似しながら唸りだす。



「んーとね…くろちゃんは『あと10年たったら会おう』って言ってたよ」


「後10年ですか…」



少女は意味が分かってないらしく可愛らしく首をこてんと傾けながら少年を見上げた。


と言っても少年にも良く分からないのだが。


少女は最近ずっと同じような夢を見ていた。


黒い外套を羽織ってフードを目深に被っている人物と会う夢を。


かなりの長身な体躯と重低音の声なので恐らく男性だと思われる。


少女は夢の中でその“彼”との出来事を少年に毎回話していた。


少年にとって信じられない話ではあったが、少女から話される話はどれも信憑性がありすぎた。


会話だけではなく、この国の遊びや、他国の遊びを教えてもらったりもしているようだ。


それも不思議なことではあるが、少年は夢の中だとはいえ、何故少女が見ず知らずの懐くのか不思議だった。


少女は、人前では大人しくにこにこと見た人が思わず微笑むような笑顔を振り撒いているが、本当は人見知りが激しいという事を少年は知っていた。


皇族故の致し方無い事なのかもしれない。


少年はそう思考を巡らせていると、段々嫉妬の念がふつふつと沸いてきた。


少年は歳の離れたこの幼い少女に淡い恋心を抱いていたのだ。


尤も、その感情が“恋”だとはわからず、正体不明の感情に戸惑っていたが。


少年はともかく、そんな存在するかどうかすら怪しいフード付き外套男に取られたくないと思った。



「姫様…僕と“騎士契約”していただけないでしょうか? 確かにまだまだ修業の身で新米ですが、必ず貴女を危険な目に合わせないと誓いますから」


「いいよ? だってアルティーは“がんばりやさん”だから、ぜったいにつよくなるよ!」



小さい掌を握り締め、一生懸命力説する彼女を見て、少年は思わず吹き出してしまった。


まさか、自分が誰にも見つからないように裏庭で鍛練していたのがばれているとは。



…やっぱり姫様には敵わないな。



そう少年は思うと、笑いを納め、真剣な表情をした。


少女の方も、何故笑われたのかわからず、膨れっ面をしていたが、少年の雰囲気が変わったのを読み取ったのか、一生懸命真面目な顔をして向き直った。


少年はそれを見て、腰に下げていた剣を鞘ごと外して少女に渡し、膝を折って地面に付ける。



「アルティレオ・レト・フェリアールは貴女に忠誠を誓い、身、心、全てを貴女に捧げます。 貴女の忠実なる騎士となり、命尽きるその時まで傍らに要ることを誓いましょう」



少女は重そうに剣を鞘から抜き出すとポンッと剣の腹で少年の肩を叩く。



「ローゼンブルグだいにこうじょ、リィアレース・ラルカ・ローゼンブルグはあなたをわがきしとみとめます。 わたしはあなたがいのちあるかぎりかたわらにいつづけることをきょかします」



唄うように紡がれた契約の言葉。


言い終えた時、少年と少女の手の甲に菫色の花弁の様な紋章が刻まれた。



「姫様、良く難しい言葉なのに覚えましたね?」


「うん、アルティーと“きしけいやく”したかったから前かられんしゅうしていたの」



他の人に取られたくなかったから…と少女は剣を鞘に収めると花の様に微笑んだ。


少年は驚いた。


何処まで自分を買っているのかと。



「あ、にじっ!!」



少女が剣を少年に返し、ふと上を見上げて言った。


少年も顔を見上げると、そこには七色の弧を描いた橋が存在していた。


花々に囲まれた中、風が吹き、サラサラと舞う少年の藍髪と柔らかそうな少女の甘い茶髪。


暫くの間、二人は花の絨毯の上に座り込み見上げていた───。

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