嘘吐きマーチ
僕らはみんな嘘をついて生きているんだ。小さな嘘や大きな嘘をすました顔して言うのさ。不快でしかないはずの嘘だって、嘘も方便っていうだろう。誰かを救うことだってあるんだ。それでね、嘘は全部でたらめだとすぐ見破られちゃうんだ。真実をちょっとだけスパイスに入れるんだよ、ピリッと程よく辛い嘘になってとっても美味しいんだ。止まらないね。
私たちは嘘をついて生きているのよ。誰かになんかじゃなくて、自分自身に。辛いのも悲しいのも失望も、みんなまとめて自分を護る為に嘘をついているの。それだけじゃあないわ、その嘘は私の唯一の家族だって護るはずだもの。嘘も方便っていうでしょう。お父さんもお母さんも焼け爛れて死んだわ。爛れて見えなくなった両目なんて知らないふりよ。そう、きっと何時までも暗いどこかに私たちは辿り着いたのねそうにきまってるわ。それでも私は幸せよ、だってあなたがいるもの。あら、どうして私の膝に温かい水が落ちてきたのかしら。ここには私がいるのよ、何か不安でもあるのかしら。
「泰一、どうしたの。」
「ううん、なんでもないよ。それよりも今日のご飯はなあに」
「そうねぇ…」
嘘吐きマーチ
「野菜のピリ辛スープなんてどうかしら。」
(嘘吐きはどっち?)(爛れた喉ではそんなものは通らない!)
姉は弟さえ居ればよくて、弟は世の中を捻くれた視点でしか見れないのです。