第48話 しずか *三月*
「あれ? しずかさん!?」
桜小町のしずかさんと米沢の駅でばったりと会った。
「三月さん! どうしたんですか、こんなところで!」
「友人の家が米沢にあるんですよ。その友人の親戚が駅前にあるんです。桝谷商店って知ってます?」
やっぱ駅から出発っしょっ、って思って駅に来たのですよ。桝谷さんも駅前だってことらしいのでな。
「はい、知ってますよ。米沢では有名ですから」
へー。そんなに有名だったんだ。大きい店だとは純が言ってたが。
「しずかさんはなぜ米沢に?」
「わたしの実家が米沢なんです」
「へー。女将さんもそうなので?」
「いえ、伯母は母方のほうです。地元ではなく、近かったのが伯母だったので働かせてもらっているんです」
なんか複雑な事情あり、って感じっぽい。
「近いんですか、実家?」
「西米沢です。時間があったので駅前でもと思って出て来たんです」
西米沢? 西にあるってことか?
「時間があるならお茶でもどうです? 桝谷さんで飲みましょう」
お茶を飲めるか知らんが、商店ならなんか飲むものは売ってんだろうよ。
それとなく桝谷さんに誘導──することもなく、駅から三分も離れていなかった。
……デカいのか……?
コンビニサイズくらいの店で、大きいとは言えなかった。奥があるんだろうか? それとも店は違うところにあるのか?
「こんにちは~。純の友達の三月というものでーす」
店はなかなか繁盛しており、店内は奥に伸びていた。思ったより広いな。惣菜、いや、弁当も作っているのかな?
「はーい」
奥から五、六十の女性が出て来た。
「初めまして。戸川純の友人です。指輪を創った者、と言えばわかりますかね?」
「あなたが!?」
「はい。相原三月と申します。いろいろ純がお世話になったようで。ありがとうございます」
「いえいえ、お世話になっているのはこちらのほうですよ。涼花さん、お客様が来たからお店をお願いね」
「はい、お義母さん」
「三月さん、奥へどうぞ」
戸惑うしずかさんを連れて奥へと進み、お茶を出してもらえた。
「お、お萩ですか?」
「峠の力餅ってものよ。うちの店でも扱っているの。お土産にどうかしら?」
「いいですね。帰りに買わせてください」
販売店や旅館に渡してやろう。
「旦那は出掛けていてごめんなさいね。山形に行っているのよ」
「純の結婚のことでしょう。桝谷さんも出席するので?」
「純くんにはお世話になっているしね、招待されたら喜んで出席させてもらうわ」
「仁井家とは繋がりがあるので?」
「話を聞くくらいよ。酒田では有名な家だから」
米沢まで名前が届くんだ。どんだけの家なんだか。
「移動は任せてください。仕事が忙しいなら日帰りも可能ですから」
転移のことは知っているはず。収納の指輪を渡したってことだからな。
「そちらのお嬢さんは、お付き合いしている方?」
「いえいえ、お世話になっている女性です。駅でばったり会ったんです」
「お、岡田しずかです。西米沢に実家があります」
「もしかして、岡田食堂の娘さんかしら?」
「は、はい。知っているのですか?」
お、実家って食堂なんだ。だから飲み屋で料理を任されていたんだな。
「ええ。篠原商店に品を卸しているからね」
米沢は狭いのかな? まさか桝谷さんが知っていたとは。
「あそこは、息子さんが継いでいたわよね?」
「はい。兄が継いでます。姉は妙寮庵に嫁ぎました」
「妙寮庵、知っているわ。うちで品を卸しているの」
桝谷商店って何屋なんだ? 手広くやっているだけか?
「妙寮庵って?」
「蕎麦屋です。宴会場もある有名なところですよ」
おー! 蕎麦屋か。蕎麦、まだ食ってなかったな。ざる蕎麦食いてー! 海老もついたらサイコー!
「いいな。昼に食べようかな~」
なんだか口が蕎麦の口になってきた。もう蕎麦の味も忘れてんだけどさ。
「しずかさん、案内お願い出来ます? 支払いはオレがしますんで! そのあとも実家まで送らせてください」
押しに圧してしずかさんより承諾をもぎ取った。よし、蕎麦だ! 蕎麦を食うぞ! おー!




