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【連載版】「お前を愛することはない」と言われたので、労働対価に食事を要求します  作者: うり北 うりこ@8/1ざまされコミカライズ①発売


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「お前を愛することはない」と言われたけれど、社交界デビューします③



 夜会の会場に入れば、食べ物が目に飛び込んできた。


 おぉ! おぉぉぉぉ!

 すごい! 色んな食べ物がいっぱいだ。

 見たことないものばっかり! 美味しそう‼


「カリウス、どれから食べに行きましょうか」


 遠くに見える食べ物たちに、胸が高鳴る。


 やはり肉か。それとも、人気の高いデザート系から押さえておくべきか。

 悩ましい!


「その前に、挨拶(あいさつ)だ」

「え?」


 ……挨拶?

 そう言えば、王族主催の夜会は、低位貴族から順番に王族へ挨拶するんだっけ?


「ほら、並ぶぞ。子爵家までそろそろ終わる。そのあとは伯爵家の順番だ」

「まだまだ列は長いですよ? 先に少しくらい味見をしても……」

「残念ながら、それはできない。そういうもんだと思って、諦めてくれ」


 そ、そんなぁ……。

 食べ放題な料理たちがこんなにもいるのに、挨拶なんて! 拷問(ごうもん)だ!


 旦那様に促され、どうにか顔に笑みを貼り付けつつ、列に並ぶ。


 王族はきっと、こうやって精神的ダメージを与えて、心理的に自分たちが有利になるように運んでいるんだ……。

 じゃなかったら、空腹で思考を鈍らせてるに違いない。

 気を引き締めて、対面しないと!


 それにしても、なかなか進まないなぁ。


「カリウス、人気なものは品切れないでしょうか。心配です」

「ん? あぁ、食事なら補充されるから安心しろ。足りないと恥になるからな。不足するなんてことは、絶対に起きない」

「そうなのですね。安心しました」


 ということは、残り少ないからと狙わずに待っていれば、出来立てのものが食べられるのか。

 せっかくなら温かい料理が食べたいし、これは心理戦……だな。

 ……しまった! 何も作戦を考えて来てない。

  もっと食事について詳しく聞いておくんだった。

 

 どんなご飯があるんだろ。早くもっと近くに見に行きたいなぁ。


 

「あーら、コレッティーナお義姉(ねえ)様じゃありませんこと」


 食べ物に想いを馳せていれば、妙に甲高い声に話しかけられた。

 声の方に視線を向ければ、義母と義妹が立っている。


「カリウス、逃げましょ……う?」


 あれ? ここで逃げたら列に並び直しってこと?

 せっかく半分くらい進んだのに?

 いや、でも、逃げないと……だよね。


「逃げる必要はない。それに、こんなに人目のつくところでは、何もできないだろ」


 うーん。そんな周りを気にするようなタイプではなかったような?

 まぁ、いざとなれば根っこもあるし、大丈夫か。

 えっと、たしか義妹の名前は……。

 

「……お久しぶりでございます」

「えぇ。相変わらず、()えない顔ですわ……ね…………」


 そう言いながら義妹は旦那様を見て、目を見開いた。


「ちょっと! 早く紹介しなさいよ!!」

「こちらはカリウス・ナビレート。私の夫です。で、この小娘が義妹です」

「小娘ですって⁉」


  義妹が、目を吊り上げる。

 

「はい。十四、五歳の女性ですので、小娘で間違いはございません」

「私はもう十七歳よ!」


 そうだったっけ? 

 って、それよりも義妹の名前だよ。えっと…………。


「お嬢様と呼ぶように言われていたので、義妹の名前を私が口にすることはできません」


 うん。この言い訳で逃げよう。

 実際、「お嬢様と呼びなさい!」ってヒステリーを起こすから、最初の数回しか呼んだことないしね。


「そして、この方がラビソン伯爵夫人です」

「あぁ、はじめまして。娘の結婚式にも来ない薄情なラビソン伯爵夫人と義妹殿」


  あ、旦那様、怒ってる。

  笑顔なのに、声が冷たい。


「義妹だなんて、おっしゃらないでください。どうか私のことはアザリーと呼んでくださいませ」


 義妹がくねくねする。

 私のできなかった、くねくね……。

 見たい、全方向から見たい!

 けど、今の私は完璧なナビレート伯爵夫人(けん)旦那様の最愛。義妹の周りをぐるぐるはできない。


「義妹殿で結構。それとも、俺もお嬢様と呼んだ方がいいか?」

「えっ! そ、そんな、カリウスにお嬢様だなんて……」


 顔を赤らめた義妹のくねくねが加速した。

 義母は何だかにやにやしてる。


「コレッティーナなんかより、アザリーの方がカリウス様とお似合いですわね」

「は?」


  旦那様の口から、地を這うような声が出た。

  私たちの周りから、サーッと人が離れていく。


「そうだわ! アザリーと本当の夫婦になるなんていかがかしら?」

「もうお母様ったら、そんなことをいきなり言ったら、カリウスだって驚くわ。でも、カリウスが私のことを望んでくれるのなら──」 

「望むならなんだ?」

「カリウスのお嫁さんになってさしあげますわ」


 ドヤァとした顔で義妹が言う。


「駄目です!」


 くねっとしている義妹から、少しでも旦那様を隠せるように立つ。


「どきなさい。邪魔よ」

「いいえ。どきません。カリウスは私の夫です。それに、義妹には婚約者がいましたよね」

「あぁ、あの男? カリウスと交換しましょう。私、あれよりカリウスがいいわ。カリウスだって、コレッティーナ(これ)より私の方がいいわよね?」


 自信満々に義妹が言う。

 いつもそうだ。いつだって義妹は自分の意見が通ると疑わない。

 そして、生家(あの家)では義妹の言葉が正義だった。


「……まるで、井のなかの(かわず)ですね」


 いつまでも自分中心の世界が続くはずないのに。


「そもそも交換云々(うんぬん)の前に、家の心配をした方がよろしいですよ」


 今日は調査のつもりだった。

 でも、それじゃ駄目だ。

 私の場所が取られちゃう。


 あぁ、何か口に入れたいなぁ……。

 

少し訂正しました。


明日(5/29)は、悪役令嬢にざまぁされたくないので〜の更新日のため、お休みします。

次回の更新は明後日です。

よろしくお願いいたします。

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