第3章 天使、バズる。~奇跡はトレンド入りしました~ ――「天界、通信障害です。」
【第3章冒頭:朝のニュース】
翌朝。
テレビの画面に、自分の顔が映っていた。
> 「昨日行われた全国新人アイドル発掘オーディションで、
> 一人の少女が奇跡のような歌声を披露――」
「え、えぇぇぇぇ!? 全国ネットですか!?」
美羽=天音(中身)は、リビングの前で叫んだ。
ニュース映像には、ステージで光に包まれて歌う彼女の姿。
観客の涙、審査員のざわめき、
そして――“光の羽根が舞う”奇跡の瞬間。
『あーあ……完全に“やっちゃった”ね。』
「いやいやいや、やっちゃったじゃなくて、成功ですっ!」
『天使の力、モロに出てたよ? 羽根、思いっきり見えてた。』
「だ、だって! 感動したら勝手に出ちゃうんですもん!」
『それ、鼻血みたいな言い方やめて。』
画面の下には、テロップが踊る。
> “奇跡の少女、光と共に歌う――ネットで拡散中”
> “天使みたい” “亡くなった子にそっくり” “幽霊説”
SNSのタイムラインは、まるで嵐だった。
「わぁぁ……“#天使ボーカル”がトレンド1位……!」
『しかも“#生き返った美羽説”まである。どうすんのこれ。』
「……うーん、コメント返信したらダメですかね?」
『やめろ。地獄に落ちる。』
【シーン2:事務所での大騒動】
数日後。
芸能事務所「スターギアプロ」の会議室は、戦場だった。
「この子、正体は一体……?」
「SNSじゃ“奇跡の生還”って騒がれてるけど……」
「でも再生回数、24時間で500万超えだぞ!?」
蓮は頭を抱えていた。
「……本当に、どうなってるんだか。」
ドアを開けて入ってきたのは、当の本人。
天音(中身)=美羽(外見)、キラキラの笑顔で敬礼。
「おはようございますっ! 奇跡、続行中ですっ!」
「……お前が原因なんだよ、それ。」
『ほら、怒られた。』
「だって、奇跡って止められないじゃないですか!」
『いや、止めて。』
蓮はため息をつきつつも、優しく微笑んだ。
「でも……ほんとにスゴかったよ。
あの歌声、誰にも真似できない。
お前が戻ってきてくれて、よかった。」
その言葉に、美羽(魂)は少し沈黙した。
『……ねぇ、天音。』
「はい?」
『この人、前にわたしが落ちたときも“よかった”って言ったんだ。
でも、その後のわたし、全然よくなかった。』
天音は静かに頷く。
「……だから、今度こそ、ほんとの“よかった”にしましょう。」
【シーン3:天界からの通信障害】
夜。
天音が寝ようとした瞬間、
頭の中で“ピピピッ”という電子音が鳴った。
「ひゃっ!? な、なんですか!? 誰か入ってきた!?」
『まさかの天界Wi-Fi?』
「こちら天界管理局。見習い天使・天音、応答せよ。」
天井に青白い光が広がり、そこから現れたのは――
ハロウィンの飴玉を両手に持った上司・セラフィム上官。
「お疲れさま。堕天中の不正干渉、確認しました。」
「えっ、不正じゃないですよ!? ちゃんと救済活動してます!」
「救済……? SNSで“天使アイドル”としてバズることが救済と申すか?」
『た、たしかに。』
「バズるって、天界的に違法なんですか!?」
「人間界での“奇跡の乱用”は天律第37条に抵触。
罰として――一時的に奇跡権限を停止します。」
「えっ!? そんな!?」
「以後、人間として努力せよ。それもまた試練なり。」
そう言って、光の通信はぷつんと途切れた。
『……要するに、“奇跡ナシでやれ”ってこと?』
「……うぅ。努力、苦手なんですよぉ……!」
『天使なのに。』
【第3章クライマックス:試される舞台】
数日後。
テレビ局の収録ステージ。
SNSでバズった天音(美羽)は、ついに全国生放送に出演することになった。
だが――その直前、楽屋で事件が。
「マイクが……反応しない!? 照明もおかしい!」
「スタッフ、早く!」
天音の羽根が、光らない。
奇跡の力、完全封印。
『どうする? もう、力は使えないよ。』
「……大丈夫。奇跡がなくても、歌える。」
ゆっくりステージへ。
照明が落ち、観客のざわめきが止まる。
マイクを握り――深呼吸。
「奇跡なんて、なくてもいい――
君が笑ってくれるなら。」
光がなくても、彼女は輝いていた。
人間の声で。
魂の声で。
会場が静まり返り、やがて大きな拍手。
その中で、美羽の魂が小さくつぶやく。
『……ねぇ、天音。
本当の奇跡って、こういうことかもね。』
「……はい。やっと、わかりました。」
涙が頬を伝う。
それは、天使が初めて流した――人間の涙だった。




