第2章 アイドル再起動! ~オーディション地獄、はじめます~ ――「天使、スカウトされる。」
【第2章冒頭】
朝。
制服のスカートを翻しながら、天音(中身)=美羽(外見)は全力疾走していた。
「遅刻っ、遅刻っ、遅刻ぉぉぉぉ!!!」
通学路を駆け抜ける天使(※現在、JKボディ搭載)。
背後から聞こえるのは、美羽の魂の声。
『ちょっと! なんで走ってんの!? 学校行く意味ある? わたし、もう死んでるんだよ!?』
「だって! 社会復帰は人間界再起動の第一歩です!」
『社会復帰って、軽いノリで言うな……』
息を切らしながら校門をくぐる。
その瞬間、周囲のざわめき。
「え……白石? あの白石美羽……?」
「ニュースで……亡くなったって……」
教室の空気が、一瞬止まった。
当然だ。彼女は“死んだ”ことになっているのだから。
『ねぇ、どうするの? これ、絶対バレるでしょ?』
「だ、大丈夫ですっ! えーっと、えーっと……!」
天音は慌てて机の前に立ち、笑顔で宣言した。
「えーっと! 夢から覚めましたーっ!」
教室「……………………」
静寂。
『終わったね。』
「えっ、違う!? 夢オチは人間界ではダメなんですか!?」
『昭和でもキツい。』
その瞬間、クラスメイトの一人が小声でつぶやいた。
「なんか……雰囲気、前より明るくなったね……」
「うん。笑うようになった。」
「ちょっと……かわいくなってない?」
天音、美羽の身体を通して笑顔でおじぎ。
「皆さん、よろしくお願いしまぁすっ!」
こうして、
“死んだはずの少女が登校する”という超常的な日常が、なんとなく受け入れられた。
それが、奇跡というより――“天音らしさ”だった。
【放課後:オーディションへの導き】
放課後。街中のショッピングモール。
天音(美羽)は、雑誌の掲示板に貼られたチラシに目を止めた。
> 「全国新人アイドル発掘オーディション」
> ~あなたの“夢”、再び輝かせませんか?~
「……これ、ですよね。天の啓示っぽい!」
『啓示っていうか、単なるポスターだし。』
「いや、感じます! 運命の電波を!」
『電波……(たぶん別の意味で)』
天音は勢いよく応募用紙を引き抜く。
『応募動機:天界から降りてきた天使として、奇跡の歌を届けたい』
『バカ正直すぎるでしょ!? バレるよ!?』
「えっ、じゃあ“新しい自分を見つけたい”にします!」
『急に普通!』
笑いながら記入しているその背後で、
一人の青年が静かに足を止めた。
「……白石美羽?」
振り向くと、そこには背の高い男性――
芸能事務所「スターギアプロ」所属の若手マネージャー、佐久間蓮。
彼はかつて、美羽が応募して落ちた事務所の面接官でもあった。
「まさか……生きてたのか?」
天音、美羽(魂)ともにフリーズ。
『どうするの!? バレるよ!?』
「……笑ってごまかすしかっ!」
天音は満面の笑みで、敬礼した。
「奇跡的に生き返りましたっ!」
佐久間「…………」
『天音、それもうギャグじゃなくて事件だよ!?』
しかし佐久間は、驚きながらも微笑んだ。
「……そうか。奇跡でもなんでもいい。
前より、いい顔してる。……もう一度、挑戦してみないか?」
その言葉に、二人の心が揺れた。
天音の胸の奥で、美羽の声が静かに響く。
『……ほんとに、またやるの?』
「うん。今度は、二人で。」
窓の外、夕暮れの空に羽根が舞う。
再び、夢が――動き出した。
【第2章 終盤:オーディション会場にて】
舞台袖。
他の候補者たちは派手なメイクと自信に満ちた笑顔。
その中で、美羽(中身:天音)は深呼吸していた。
『緊張してる?』
「はい……! でも、すごくワクワクもしてます!」
『わたしは、前にここで失敗したんだ。
歌ってる途中で、頭が真っ白になって……』
「大丈夫です。今回は、わたしが隣にいます。」
照明が灯る。
天音はステージに一歩踏み出した。
マイクを握り、観客の光を見渡す。
――胸の奥から、声が重なる。
『……いこう、天音。』
「うん、美羽さん。」
二人の声がひとつになる。
「夢のつづきを、もう一度――」
その歌声は、光の粒となって会場を包み込んだ。
観客の誰もが、涙を浮かべていた。
奇跡は、再び“ステージ”に降りたのだった。




