第6話 助け
────カチッ、カチッ。
再び、ペンチの音が鳴る。
────バンリッ!
電球が弾ける、光が消え、闇が爆ぜた。
カラ、カラ、カラ……。
破片が床を転がる音が、不気味なほど静かだった。
「んー?」
男たちが懐に手を入れ、銃を取り出す。
──ヒュッ! ドスッ!
空を裂く音。闇の中で、血の匂いがした。
「逃げるよ~。」
「「へい!」」
暗闇の中で動く数多くの足音が聞こえた。残されたのは、静寂と、僕の荒い呼吸。
───た……助かった………のか……???
窓から差す月明かりが辺りを照らす。血溜まりで倒れている無数の男たち。その男たちの喉元には、
深々とナイフが刺さっていた。
スタッ、スタッ、スタッ──
後ろかは、靴音が響く。
「…だ、誰で──」
「静かにして」
低く冷たい声が、僕の言葉を遮った。女性の声だった。女はナイフで僕の縄を切った。
僕は、後ろを振り向く。そこにいたのは、雀の面を被った女だった。
まるで生きているかのように僕を見つめる、リアルな雀の面。
「た、助けて……くださって、あ………ありがとうございます。」
震える声でお礼を言う。
「あんた、もう街に行かない方がいいよ?」
淡々と、そう言って歩き去ろうとする。
だがその瞬間─倒れていた男が、わずかに動いた。銃口が、彼女の背を狙っている。
「危ない!」
僕は体を投げ出し、彼女を押し倒した。
──バンッ!
銃声。面が外れ、カランカランと転がる。
彼女の手が閃く。
──ヒュッ! ドスッ!
男は、音もなく倒れた。
月が、窓から流れ込む。月明かりが、彼女の顔を照らす。
「──!」
息を呑んだ。綺麗な瞳だった。吸い込まれるようなそんな瞳。月光に照らされ、青みがかった髪がフードの奥で淡く輝く。小さな顔立ち。可愛らしい顔をしていた。
心臓の音が速くなる。
「…。」
モニュ。
僕は、嫌な予感がした。ゆっくりと視線を下げる
僕の手は、彼女の胸の上にあった。
「っ!」
次の瞬間、彼女の拳が目の前にあった。僕は、そのまま気を失った。




