第21話 一方的な暴力
その後、店長から銃のリロードの仕方、構え方、呼吸の合わせ方までを叩き込まれた。
ゲームで慣れた「リロード」とはまるで別物だった。指先の力加減、薬室の感触、金属の擦れる音──どれも現実の重さを持っていた。
「じゃ〜銃は、ここまで!」
店長は唐突にそう言って、銃を回収し僕に何かを手渡す。
それは鞘に収まったナイフだった。
「次は、刃物の練習だよ〜。そのナイフで僕に一撃でも入れたらクリア〜。死ぬ気でやってね〜」
僕は、息を呑んで鞘を引き抜いた。
刃渡り十五センチほど。黒光りする鋼が夕陽を受け、鈍く反射する。手に馴染むグリップは、妙に生々しい。
これを人に向ける──その事実が、胃の底を冷たくした。
だが相手は、店長だ。躊躇えば、逆に殺されかねない。
僕はナイフを強く握りしめ、全身の力を振り絞る。
「うゎぁぁぁぁぁ!」
「ん〜。遅い!」
コ゚ッ!
店長の回し蹴りが、正確に顎をとらえた。視界がぐにゃりと歪み、地面が斜めに傾いた。
「だめだよ〜そんな、バカ正直に来たら〜。」
「は…………い…。」
そこからが、本当の地獄だった。
店長の一方的な暴力。
ナイフを構える間もなく、蹴り、拳、膝が飛んでくる。
顔面、腹、背中。受けるたびに骨が軋み、息が漏れた。
振るえば、かわされる。
振るえなければ、殴られる。
気づけば、地面に転がる時間の方が長くなっていた。
何回気を失ったかは、定かではない。ペットボトルの水が顔を打ち、無理やり現実へと引き戻される。
一瞬、三途の川を渡った気がした。そんなこんなで、気づけば、日が沈んでいた。
「ん〜。今日は終わり!」
店長は軽い声で言い残し、車へと戻っていった。
僕はその背中を見送ることすらできず、崩れ落ち、気をを失った。




