第13話 ナイフ
「自己紹介をしたいけど、まだ、全員来てないんだよね〜。」
店長が言った、その時だった。
ガチャッ
という音が聞こえた。
「お!来たかなぁ〜!」
店長が軽い足取りで廊下に出ていく。
僕と青年もそのあとを追った。
──そして、息を呑んだ。
そこに立っていたのは、青髪の少女だった。
無表情で、眠たげな瞳。長い青髪が頬にかかるが、彼女はそれを払おうともしない。
ただ、ゆっくりとまばたきをして、ぽつりと言った。
「……おはよ…。」
その声は、小さな鈴の音のようだった。冷たい空気の中で、ほんの一瞬だけ、空気が和らぐ。
彼女と目が合う。
──次の瞬間。
彼女の手が、胸元へとすばやく伸びる。白い指先が、光を反射する刃をつまみ出した。
「……っ!」
腕の動きは迷いがなく、まるでそれが呼吸の延長であるかのように滑らかだった。
ナイフが、空気を切り裂いて飛ぶ。音よりも早く、危険の匂いだけが、僕の肌を刺した。
「危ないッ!!」
ドンッ!
赤毛の青年が僕を突き飛ばした。視界が揺れる。
次の瞬間、鋭い金属音が響いた。
ガンッ──!
ナイフがロッカーの扉に突き刺さっていた。刃先が震え、わずかに金属粉を散らしている。
あと数センチずれていたら、僕の首を貫いていた。
「………何でそいつがいるの?」
少女が、氷のような声で店長を睨む。その瞳の底には、静かな怒りが燃えていた。
店長はというと、まるで気にも留めないような顔で笑っていた。
「彼は、今日からここで働いてもらいます!」
少女は眉をひくつかせ、深く息を吐いた。
「はぁ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」




