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インナーヒットマン  作者: 太田
第2章 殺し屋と雛
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第10話 契約

 死ぬか──殺し屋として生きるか。選択肢は、それしかなかった。


 どちらを選んでも、もう「普通の人生」には戻れない気がした。

 

 首筋に押し当てられた刃が、微かに震えた。冷たい金属の感触が、まるで「死」という言葉そのもののように重く感じられる。


「10〜、9〜、8〜…」

 

 鳩男の声が、淡々と空気を刻んでいく。遊ぶように、ゆっくりと。


───ここで死ぬくらいなら……。


「や、やります……。やらしてください……。」


 言葉は震え、涙のようにこぼれ落ちた。


「おっ! やる気になったぁ〜?」


 金属音がかすかに鳴り、刀が鞘へと戻る。部屋の空気が一瞬だけ緩む。けれど、胸の中の恐怖は消えなかった。


 鳩男は、机の上に、ある紙とペンを置いた。


「そこに名前書いて〜!」


「これって…?」


「ん〜…?契約書。早く書いて〜!」


 鳩男は軽く指をさし、せかすように微笑んだ。僕はその笑顔に背中を押されるようにして、内容も読ま

ずに名前を書いた。鳩男は僕が名前を書くやいなや、紙を素早く奪い取った。


「これで、君も晴れて『トリカゴ』の一員だぁ〜」


 声が軽く響く。


「あ、あの、『トリカゴ』って?」


「ん〜?『トリカゴ』はねぇ〜。殺し屋の組織みたいな所だよぉ〜。まぁ、また説明するよぉ〜。」


「そ、そうですか…。」


──ぱちっ。


蛍光灯が明滅し、闇が一気に退く。


「とりあえず、今日からここで働いてもらうよぉ〜?」


 目に飛び込んできたのは、見覚えのある赤と灰のソファ、木目調の天井、カウンター。


「『りうか』の定員としてね。」


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