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インナーヒットマン  作者: 太田
第2章 殺し屋と雛
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第9話 選択肢

 夢を見た。


 どこかの病院で、親父に抱きしめられた時の夢。


 顔の輪郭はぼんやりとしていて、はっきりとは思い出せない。ただ、悲しげな目をしていた。




「起きてぇ〜」


 誰かの声で、身体が揺らされた。重い瞼を無理に持ち上げると、視界の中心に丸い机が見えた。

 

 机の上には一本の蝋燭が揺れているだけで、周囲は闇に飲まれていた。僕は椅子に座らされていた。縛られてはいないが、逃げられる気はしなかった。


「よいしょ。」


 机の反対側に座ったのは、鳩の面を被った男だった。


「君、名前は?」


 声が柔らかくて、どこか人をからかうようだった。


「………田中初です…。」


「初くん、君には、あるお店で働いてほしいんだぁ〜。」


「み、店?」


 頭の中は瞬時に最悪の想像で満たされる。臓器売買だとか、武器の売買だとか──そんなことが脳裏をよ ぎった。


 鳩男は楽しげに続ける。


「そのお店はね、僕を含め、全従業員が殺し屋なんだぁ〜。」


殺し屋。映画やアニメの中の言葉が、現実の空気を震わせる。


「君には、そこで働いてもらいたくてねぇ〜。」


「えっ…。」


「最近、人手不足でねぇ~。君にも手伝ってもらいたいんだよ。」


 現実感が薄れていく。


「…………」


「大丈夫〜!ただの飲食店だよぉ〜。」


「ほ……本当ですか?」


「本当、本当!」


 鳩男は首を何度も縦に振り、頷きを重ねる。


「でもね、初くん──そのお店は、殺し屋しか働いちゃダメだから〜。初くんも殺し屋になってもらうけどね〜」


僕言葉が落ちるたびに、空気がさらに冷たく沈む。


「じゃあ、選びなぁ〜?」


 鳩男はゆっくり立ち上がると、僕の隣に来て刀の柄を引いた。刃を静かに首筋へと近づける。


「ここで死ぬか──」


 刃先が肌に触れる。冷たさが血管を伝う。


「働くか。」


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