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参政党とナショナリズム

作者: 相浦アキラ

 排外主義的な極右政党である参政党が支持を広げ、外国人だけでなく多くの国民が危機を感じている事から、ナショナリズムそのものに対して否定的な意見も出て来るようになりました。しかしナショナリズムというのは本来悪い物ではないと思います。


 人間と言うのは利己的で主観的な存在であると同時に、生まれながら共同体に所属している社会的な存在でもあります。そして人間は基本的に共同体に所属しなければ生きていく事はできません。個人が利己的な行動ばかりとっていると社会が壊れて結局個人も損失を被る事になりますし、個人が利他的な行動を取る事で社会が良くなると個人も恩恵を受ける事ができます。もちろん過剰な自己犠牲は相手を依存させてしまう恐れもあり場合によっては不健全とも言えますが、自己を保った上で自分の所属する共同体を愛し利することは、単純に利他的行動では無くある程度功利的で自然で健全な感覚に基づいていると言えます。


 一方で愛というのは度が過ぎると、愛する対象以外がどうでもよくなってしまうという危険もはらんでいます。また家族愛や地域愛なら実際的な愛たりえますが、愛国心ともなるとどうしても抽象的になってしまいがちな事にも注意が必要です。私なんかは子供の頃に福岡に引っ越してきてからは殆ど県内で過ごして来たので、九州はおろか別の地方の事も殆ど分かりませんし、別の地方出身の方と話す機会も殆どありません。私は福岡の事は身近に感じていますが日本という国家については正直よくわかりません。これは大多数の人が似たり寄ったりで、自分の生活圏以外はあまり知らない人が殆どでしょう。


 日本とか日本人といっても殆どの人が抽象的なイメージしか持つことが出来ません。だから国旗や天皇という実体で国民を統合し、共同体としての認識を固める必要があったのです。これは有体に言ってしまえば虚偽ではありますが、同時に国民を統合する為に腐心した先人達の知恵でもあるので「王様は裸だ!」みたいにあげつらうのは品が無いというものでしょう。ただ先の大戦で明白になった事でありますが、国旗や天皇で象られた国家像を唯一無二の実体だと本気で神格化してしまうと、個人や実際的共同体は国家に隷属する一部に過ぎないとする全体主義が蔓延り、中間共同体はもちろん結局国家も破壊的結末を辿る事になります。


 参政党も恐らく同じような状態になっていて、抽象的な国家像を本気で信奉するあまり自分たちが巻き起こしている実際的な社会の分断について全く無頓着になっているように見えます。維新後の日本は強烈な愛国心と欧米列強への対抗心が結びついたからこそ急速に発展できた側面もあるわけで、愛国心にも功罪があるともいえますが、ああいうやり方は現代の実情には全く合っていません。SNSの流行もあって過剰な愛国心は余計に国民の対立を招く事になりかねませんし、少子高齢化で衰退の一途をたどる日本がアメリカや中国に勝つのも全く現実的ではありません。


 しかし資本主義経済というのはどうやっても格差が拡大し続けるように出来ているので、ナショナリズムがなければ格差を是正する事ができずいずれ国家は分裂し破綻する事になります。国を維持する為にはナショナリズムは必須といえるでしょう。


 ではどうすれば健全なナショナリズムを広げられるかというと、カルト的な愛国ではなくもっと普遍的な人類愛に着目した上でナショナリズムを掲げるのが時代に即していると思います。人類の為に行動しようとするなら、まず身近な人に優しくするのが一番です。次に地域の為に活動するといった感じで、この感覚を広げていく過程で国家への愛が出て来る、という考え方です。この考え方だと排外主義にも結びつきにくく、ナショナリズムと多文化共生の両立も可能だと思います。


 何にせよ国民同士の無駄な対立を煽り平気で差別的発言までする参政党のような党が出てきて、そういう連中が愛国を騙ってナショナリズムのイメージを最悪にしてしまったのは全く絶望的な話ではあります。参政党はまるで、自分勝手で周囲に当たり散らしまくるくせに変なyoutubeチャンネルに被れて愛国心がなんだの語り出す、全く実際が伴ってないくせに理想だけはいっちょ前のオッサンのようです。いい加減そういう中身のない似非ナショナリズムとは袂を分かち、もっと現代に合った実際的なナショナリズムを目指していくべきだと思います。


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