決戦編
ゆうひは幹部信者を集めて命じた。
「君たちにやってもらいたいことがある。近く強制捜査がある。騒ぎを起こして強制捜査の矛先をそらすために地下鉄車内にサリンを撒く。月曜日の通勤時間帯に合わせてやる。対象は、公安警察、検察、裁判所に勤務する者であり、これらの者は霞ヶ関駅で降りる。霞ヶ関駅の少し手前の駅でサリンを発散させて逃げれば、密閉空間である電車の中にサリンが充満して霞ヶ関駅で降りるべき人はそれで死ぬだろう」
信者達は地下鉄のガイドマップなどを参考に散布場所と時間を計画策定。運転手役の必要性が論じられる。
ディカウントストアで変装用の眼鏡、かつら、スーツなどを購入。その後、在家信者に依頼し逃走用の車を借りる。
実行役、運転手役全員が渋谷のアジトに集結しPAMなどのサリン解毒剤を配布した。
全員は駅を下見し霞ヶ関駅到着時に警視庁の出口に近い車両を選ぶよう指示した。
コンビニでビニール傘を購入。袋に突き刺すためナイフで傘先を削る。
実行役と運転手が長野サティアンに到着。
サリンを撒く方法を教わり水で練習、その後サリン袋を受け取る。
ゆうひはサリン袋に触れエネルギーを吹き込む儀式を行う。
朝五時頃に渋谷のアジトに再移動。
千代田線の我孫子発代々木上原行きには、散布役が千駄木駅より入場し、綾瀬駅と北千住駅で時間を潰した後、先頭の一号車に七時四八分発の北千住駅から乗車した。八時二分ごろ、新御茶ノ水駅への停車直前にサリンのパックを傘で刺し、逃走した。
列車はそのまま走行したが、二重橋前駅から日比谷駅間で乗客数人が相次いで倒れたのを機に次々と被害者が発生した。
霞ケ関駅で通報を受けた駅員が駆けつけてサリンを排除した。
この時、特に手袋等は使用せず素手でサリンを触ってしまった。
当該列車は霞ケ関駅を発車したが、さらに被害者が増えたことから次の国会議事堂前駅で運転を打ち切った。
その後、回送扱いとなり松戸電車区へ移動。
サリンが入っているとは知らずにパックを除去しようとした駅員数人が被害を受け、駅の助役と応援の電車区の助役の二人が死亡し、二三一人が重症を負った。
使った傘など証拠品は多摩川で焼却した。
事件後、テレビを見て事件の発生を確認し、ゆうひは死人が出たことを知ると大はしゃぎした。
「ポアは成功した。シヴァ大神、すべての真理勝者方も喜んでいる。これはあくまでポアだからな。分かるな。『グルとシヴァ大神とすべての真理勝者方の祝福によって、ポアされてよかったね』のマントラを一万回唱えなさい」
ゆうひは実行した信者達におはぎとオレンジジュースを振る舞った。