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決戦前夜編


 アウム原理教は入会金が三万円で月会費が三千円だ。


 ヨガ初級クラスは一回三時間で十回で三万円、中級クラスは十回で三万五千円、上級クラスは二十回で八万円だ。


 動画による通信講座は第一部と第二部が各七万円。


 集中セミナーは一泊一万円。


 いずれのコースでも計六十回分参加し、さらに五万円布施をすれば導師からシャクティーパットを受ける事ができる。


 出家時は全財産の布施が要求された。


 出家するとまず「布施リスト」を作成し、現金、預金、株、証券、商品券などの金券、退職金、貴金属、電化製品、衣類等、価格の高い物品から書き出す。


 奨学金の未返済額、クレジット負債などの借金は精算しないと出家できない。


 他に「たとえ、いかなることが起ころうとも教団及び導師に一切責任はない。すべて自己の意思によって修行の道に入り、すべての責任は自己にある」という誓約書、「遺産は全て教団に寄贈し、葬儀は導師によって行う」とする遺言状、戸籍謄本、住民登録の転出転入届け代理人選任者、国民年金保険料免除申請書、年金手帳、顔写真付き身分証明書のコピー、車検証、印鑑証明書などの提出が要求された。


 修行生活は睡眠時間が最初は一日五〜七時間で階級が上がると三時間だった。


 起きている間は一日二回の食事と夜礼以外は修行だった。


 深夜一時から夜礼、その後朝六時まで修行、それから掃除、護摩供養、食事、午前九時半から三時間睡眠。


 起床して午後六時半の食事まで修行し食後は深夜十二時まで修行であった。


 信者達は慢性の睡眠不足から頭痛、腹痛に悩まされた。


 そんな出家信者数も千人を超えた頃。


「またヴァジラヤーナを始めるぞ」


 と幹部に告げた。


 新たな信者で油圧シリンダー等を制作する年商四十億円の鉄鋼会社の社長が導師に会社の経営難を相談し、導師と幹部に経営陣を刷新し会社の乗っ取りに成功した。


 そして軍を創設する会議が開かれた。


 自動小銃、プラズマ兵器、核兵器、毒ガス兵器などの開発が提案された。


 自動小銃の密造を試みたり、NBC兵器の開発を試みた。


「ここ数年以内にハルマゲドンは必ず起こる。そして、それへの準備をしているものが勝利する」


 ゆうひは説法した。


「ハルマゲドンで使われる兵器は光の波の合致によって生じる電圧の力によって生じるプラズマを用いたプラズマ兵器であり、既にA国は戦争でプラズマ兵器を使用し、敵の兵士九万二千人が蒸発した」


 プラズマ兵器の詳細について説明する。


「第三次世界大戦で使われるプラズマ兵器は電子レンジの強烈なもので、体の水元素にプラズマを発生させ、体を蒸発させる。A国のプラズマ兵器は、人工衛星でプラズマを反射させるプラズマ反射衛星砲ある。これに対して、R国の恒星反射砲は、三キロメートルの鏡を宇宙空間に打ち上げて太陽エネルギーを地上に反射させる。第三次大戦では、人類が三分の二消滅するのも不思議ではない。プラズマ兵器では人工衛星とA国本土から発信された電波とが焦点を結び、至る所に自由にプラズマを発生させ、低周波数体系の場合は炎となり、高周波数体系の場合は水元素、人間で言えば人間の水元素が蒸発する」


 こうしてゆうひは鉄工所のプラズマ切断機を参考に、マイクロ波を発生させて物を溶かすプラズマ兵器の製造を指示した。


 さらに核兵器の材料ウラン鉱石の国内調査を実施。さらにウラン発掘のためにオセアニアの土地購入を開始、購入した牧場地で一ヶ月ウラン採掘調査をしたが発見できなかった。


 しかしサリンなど化学兵器の合成には成功した。


 教団の研修施設でサリンの生成実験を始め、ダミー会社が購入したメチルホスホン酸ジメチルの反応を得て、サリンの生成に成功した。


 長野サティアンで七十トンのサリンを生成するプラントの建設を指示し、サリンをヘリコプターで散布しようとして信者にヘリ免許を取得させた。


 ゆうひある日の説法で、


「私の今生の目標は最終完全解脱と世界統一である。フリーメイソンが米軍や公安やJCIAに命じて教団にサリンやイペリットを撒いているが、フリーメーソンのボスロスチャイルド家だ。フリーメーソンは際限のない欲望を肯定する物質主義となっており、フリーメーソン国家のA国とオウムは将来戦うことになるだろう。様々な兵器開発は、サティアンに攻めてくる米軍との戦争への準備だ。善のために財を使うならば盗み取っていい、悪業を積んでいる魂は長く生きるほど地獄での苦しみは大きくなるので早くその命を絶つべきだ。私は日本の王になる。ハルマゲドン後に世界の大部分はオウム真理教の勢力になる。真理に仇なす者はできるだけ早く殺さなければならない」


 と、説いた。


 そして幹部達に、こう告げた。


「私や教団が毒ガス攻撃を受けている。このままでは殺されるからホテルに避難する」


 ゆうひはA国からも毒ガス攻撃を受けていると主張するようになり、車には空気清浄機を付け、ホテルでは隙間に目張りをしていた。


 ヘリコプターが通過すると毒ガスだと言って車に駆け込み退避を命じた。


「このままでは真理の根が途絶えてしまう。サリンを東京に七十トンぶちまくしかない。サリンによる壊滅後の日本を支配して、オウムが生き延びるための食糧調査の必要だ」


 また、自動小銃千丁を一ヶ月で完成させ、自衛隊を取り込むために自衛隊員の意識調査、及び東京壊滅後の理想社会を作るための作業としての日本社会の調査なども指示した。


「日本を闇からコントロールしている組織やそれと連動する公安が毒ガスを長野総本部、サティアンに対し噴霧し続けてきた。アウムがこのままでは存続しない可能性がある。アウムが存続しなくなるとするならば、この地球は、そしてこの日本は完全なる壊滅の時期を間もなく迎えるであろう。私の弟子たちや信徒は立ち上がる必要がある。皆さんの周りの多くのまだ無明(むびょう)に満ちた魂をしっかりと真理に引き入れ、この日本を、この地球を救う必要がある。もともと私は修行者であり、じっと耐え、いままで国家に対する対決の姿勢を示したことはない。しかし、示さなければ私と私の弟子たちは滅んでしまう。もうこれからはテロしかない警察官全員をポア(殺害し魂を浄化)するしかない。警察組織がある限り、救済は成功しない。ゲリラで警察を全滅させよう」


 自衛隊出身や武道経験のある出家信者十数名に軍事訓練キャンプをさせた。


「お前たちはこれから死んでもらう。アウムから抜け出したら殺す」


 と、ゆうひは信者を脅した。


 さらに映画のエキストラと称し募集したホームレスを「白い愛の戦士」部隊として編成し、山間部の施設で訓練を施した。


 翌年一月一日。


 大手新聞が長野のサティアン周辺でサリン残留物が検出されたことを報じ、教団へのサリン疑惑が表面化した。


 教団は「自治体の肥料会社が教団に向けて毒ガス攻撃をしているため残留物が発見された」と虚偽発表と隠蔽工作をした。


「この中に警視庁に突っ込んで、警視総監の頭を殴ったり首根っこを捕まえて振り回せる奴はいるか」


 と、ゆうひは問う。


「私ならできます」


 熱心な信者が答えた。


「今すぐやるということではない。やる時には私が耳元で囁くから」


 そしてゆうひは集会を開き演説した。


「ヴァジラヤーナ・サッチャは人類を代表して正式に宣戦布告する。人類を大量虐殺し、洗脳支配を計画している闇の世界政府に対して目覚めよ、日本人、立ち上がれ、世界人類、国連は我々の災いである。三百人委員会を超えよ。ロスチャイルド、ロックフェラー家が議長をつとめる三極委員会と外交問題評議会が米国を操る黒幕。フリーメイソンはユダヤ教の一派だから、メイソンの学会会長はユダヤ人で学会もユダヤ系だ。非ユダヤ人は家畜・汚れた者で、その財産を奪い取ってよく、殺してもよい、ユダヤ人でも異教に改宗した者やトーラーを否定する者は殺さねばならない。ナチスのユダヤ人虐殺はなかった。『シオン賢者の議定書』をユダヤ人は偽書だというデマを流しているが、本物で、ダーウィン主義、マルクス主義、ニーチェ主義はユダヤ人が仕掛けた、太平洋戦争、ベトナム戦争、パナマ侵攻、湾岸戦争も軍需産業に仕組まれた、日本への原爆投下はロックフェラーとモルガン財閥の利益のためで、デュポン家も儲けた。サイラス・ヴァンスは報告で戦争や飢餓による三十億人の大量虐殺計画を出し、ローマクラブが実行しており、彼らは核兵器、生物兵器、化学兵器、プラズマ兵器、マインドコントロール兵器を用いて、人類を家畜奴隷として奉仕させることを目指している」


 それから一ヶ月後。


 東京都内で公証役場事務長だった男性を拉致した後監禁し、チオペンタールナトリウムという麻酔薬投与により殺害した。


 この事件で教団信者の指紋が発見され、警視庁は全国教団施設の一斉捜査を決定した。


 その翌日に霞ヶ関駅付近で毒ガスの自動噴霧器が発見された。


 これを受けて警視庁機動隊員三百名と捜査一課捜査員二十名が陸上自衛隊朝霞駐屯地に派遣され、毒ガスによる抵抗を想定して防護服の装着訓練を受けた。


しかし教団は警察より早く動き、翌朝に鉄道毒ガス事件を決行する。


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