外道編1
ゆうひは山奥の倉庫を買い取り、出家した信者を集めてハルマゲドンを乗り越えるために共同生活を行う施設、サティアンを作った。
電流のイニシエーションをしていた最中、ある男の信者が「うわぁあああああっ!」と大声を上げて暴れ出した。
頭に電流を流す前に飲ませていた幻覚剤入りジュースが効きすぎたのだろう。
ゆうひはとりあえず風呂場へ隔離するするようその場にいた弟子達に指示を出した。
幹部四人に抑えつけられ風呂場に連れてこられた錯乱した信者は冷たい水の張った浴槽に頭部を突っ込まされた。
「頭を冷やしてこい」とゆうひが指示を出していたためだ。
「ゴボゴボゴボゴボッ」
錯乱した信者が水中で助けてくれと叫ぶ。
「頑張れよ。これを乗り越えないと菩薩になれないぞ」
幹部はゆうひの指示通り錯乱した信者が叫び声を荒げず大人しくなるまで空気を吸おうと抵抗する頭部を抑えつけ水の中に沈める。
「ゴボゴボゴボゴボッ……」
とうとう錯乱した信者が溺死し息を引き取る。
「まずいぞ。導師に報告しろ」
幹部はゆうひに報告し、ゆうひは風呂場に急いで直行した。
「エネルギーを送り元に戻す」
ゆうひは死体の眉間を右手の人差し指と中指で抑えつけ念じる。
しかし五分以上経っても当然のごとく信者は息を吹き返さない。
もう面倒くさくなってきた。しかしこの事件が明るみになれば今まで積み上げてきたものがパァになる。
「彼はもう助からない。信心が弱くカルマを落としきれなかったんだ。私の力を持ってしても救えなかった」
「導師。この死体はどうするんですか?」
「教団内で焼いてしまえ。この事は絶対に誰にも言うなよ。他に漏らせばその人間は地獄に落ちる」
「はい!」
幹部の信者は指示通り、教団施設の裏山にドラム缶に詰めて火葬した信者を地中に埋めた。
「いよいよこれはヴァジラヤーナに入れというシヴァ神の示唆だな」
と、ゆうひはつぶやいた。
ヴァジラヤーナとは他人を救済するためならカルマを積んででもよくてむしろ最終解脱へ到達するためにはヴァジラヤーナの段階に入る事が不可欠という教えだ。
こうしてゆうひは教団内での殺人を正当化する事に成功した。