えんどれす・ロード
俺は前へ進む。
ただ全力で。
誰に好奇な視線を浴びせられようとも、誰に笑われようとも止めることはない。何がそこまで俺を駆り立てるのかは俺自身もわからない。
だが、なぜか進まなければ俺という存在が俺で無くなるような恐怖に襲われるのだ。
だから走る。
足を前に大きく踏み出し、着地と同時に次の足を送る。簡単なことだが、ひたすらに繰り返すことは誰にでもできることじゃない。
おっと、今のは危なかった。余計なことを考えて気をとられるとはらしくない。
どうやら自分のスピードに足がついてこなかったようだ。この鍛えあげられた俺の足でも、ぶっ通しで走ればさすがに少しは危ないということか。
俺の足。
筋肉質であることは間違いない。他の追随を許さない強靭な脚力を活かして一歩の距離を伸ばしている。
短時間でこれだけの距離を走れるやつはいないはずだ。
実はひそかな自慢だ。
だが、それにしても殺風景な風景だ。
風もなければ、森の匂いもしない。鳥のさえずりどころか、虫の鳴き声だって聞こえない。
どれほど走ったところで、こうも景色が変わらなければ愚痴の一つは言いたくなるぞ。
ん、少し待て。
これはどうしたことだ。
陽が落ちてから散々走ってきたが、よく見れば同じ場所じゃないか。
おかしい。
確かに横道に入って、まっすぐ走ってきたと思ったが。
もしやこの俺が迷ったのか。
いや、ありえないはずだ。
しかし、鼻のきく俺が匂いを間違えるとは思えない。
ここは確かに俺の家。
「チビスケー、ひまわりのタネだよー」
おっと、どうやら食事の時間だ。
いぃやっほぉー!