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 ゼナスは即位の折、仮初だった条約を前倒しにして、完全な和平条約を結ぼうとカルム王国へ持ち掛けた。しかしステファナの兄であるカルム王は、当初の約束通りに進めると返答してきた。その理由は「三年の期間を使い、我が王国の誠意をお見せしたいと考えている」というものだった。ならばゼナスも残りの期間を、ウイン帝国が敵意を捨てた事を証明する為に用いる意向を固めた。

 以来、カルム王国との関係は良好だ。行き来する親書の数も格段に増えた。両国の君主は互いに若くして即位した境遇を持つ故か、当事者しか知り得ぬ苦悩を分かち合うこともできた。遠くない将来に会える日を楽しみにしているという文言を、内心で同意しながら読んでたゼナスだが、追伸に差し掛かると同時に瞠目した。もしも茶器を片手に持っていたならば、ひっくり返していただろう。念の為、三度も読み直したが内容は変わらない。

 ゼナスは椅子から立ち上がると同時に「ミリアムッ」と叫んでいた。


「はい。いかがされましたか」

「ステファナはどこにいる?」


 いつになく早口な主人に、ミリアムも思わず身構える。


「今頃は花壇の所へ行っておられると思いますが…僕がお連れしましょうか」


 花壇に何を植えるか、ステファナは何日も迷っていたが最終的にネモフィラと決めたらしい。どうやら彼女の母が好んで育てていたそうで、馴染み深い花のようだ。花壇を貰った事は、祖国の家族も既に知っている。ステファナが弾む心のままに筆を走らせ、手紙の中で教えたからだ。そして事情を知った母が、種を分けてくれる手筈となっていた。


「…いや、いい。私が出向く」


 園芸に詳しくないゼナスはよく分からないが、彼女が言うにはすぐにでも種蒔きをしなければいけないとの事で、今日は土作りをすると張り切っていた。日除けのための大きな帽子を被り、楽しみで仕方がないという表情を浮かべていた彼女を思い出し、ゼナスは微笑を誘われるのだった。


 内廷のほんの一画に作られた花壇であるが、今やこの場所が一番活気がある。


「ステファナ様!堆肥を分けてもらいましたよ。このくらいで足りますか?」

「はい。ありがとうございます、イバン。重たかったでしょう」

「なんのこれしき、ですよ!」

「ステファナ様、虫に刺されては大変ですから続きはわたくし達で…」

「わたしが全部やりたいと話したはずですよ。仮に刺されても対処法は知っていますから平気です」


 ステファナは侍従よりも手を泥だらけにしていたが反面、誰よりも生き生きして瞳が輝いている。

 ゼナスはというと、ついうっかり目的も忘れて見惚れていた。しかし直立する大の男は異色の存在感を放っており、間もなくステファナに気付かれたのだった。


「ゼナス様?」

「…順調か?」


 図らずも盗み見るかたちになってしまったゼナスは、あたかも様子見を装って尋ねた。少し白々しい演技になったものの、上機嫌なステファナは不審に思わなかったようだ。


「はい!種が届くまでには間に合うと思います」

「良かったな」


 このままほのぼのと言葉を交わしていたいのは山々だが、ゼナスは彼女に伝えなければならない要件がある。


「ところで…少し手を止めることはできるか?」

「はい。大丈夫ですが…」

「これを見てほしい」


 先ほどから彼が手紙を握っているのは見えていた。だからステファナは彼女宛の手紙をわざわざ持ってきてくれたのかと思った。手についた泥を拭き、受け取ろうとしたところで、ゼナスの宛名を見つけたのである。彼女は慌てて伸ばしかけた手を引っ込めた。


「良いから読んでくれ」


 他人様の手紙を見る事には抵抗があった。しかしながらゼナスの表情からは謎の焦りが窺えたので、ステファナは観念して受け取った。慣れ親しんだ兄の文字を目で追い、やがてゼナスが瞠目した箇所に到達した。すると彼女も同じように目を見開くのだった。


「お父様とお母様がいらっしゃるのですか!?」

「…そのようだ」


 追伸にあったのは、ネモフィラの種は両親が届けに行く、という旨であったのだ。




 ウイン帝国とカルム王国は仮初の和平にある。そのような状況で、カルム国王の両親が来訪するというのは極めて異例だった。だが同時に、重大な意味を持つ行動でもあった。

 国王が両親を使者に立てることを許可したという事は即ち、それだけウイン帝国を信頼している証となる。よって、和平締結は確実なものであると国家全体に知らしめる事にもなるのだ。とりわけステファナの母であるエイレーネは、他国の王族とも親交が深い。影響力の強い女人が訪れるというだけでも充分な意義がある。

 しかし、ゼナスの胸中には別の緊張も走っていた。外交上の懸念は元より、彼にとっては義理の両親がやってくる訳だ。緊張しない方がおかしい。


「歓待に不備があってはならない。ミリアム、各部署の長を至急集めろ。それから…」

「あの…ゼナス様」

「なんだ?」


 ステファナは黙々と彼の手伝いをしていたが、焦りを募らせる様子を見かねておずおずと口を挟んだ。


「豪華であることにこだわる必要はないと思います」

「そうは言うが大国カルムから来る使者へ、貧相な接待はできない」

「わたしの両親は、もてなしにお金をかけてほしいとは考えません。国民のために有意義に用いることを願っているはずですよ」


 ステファナの言う事には説得力があった。何といってもステファナ自身が、そういう考え方の持ち主だからだ。


「豪華でなくても誠意のこもったもてなしであるなら、両親は必ず喜んでくださいます」

「…そうだな。君の意見を取り入れてもう一度、計画を見直そう。手伝ってくれるか」

「はい。もちろんです」


 こうして準備は着々と進められていった。いつもは口うるさいだけの廷臣達も、カルム王国の太后が来ると聞いて流石に顔色を変えていた。それほどまでにエイレーネの影響力は強いのだ。

 だが、廷臣達の狼狽はステファナの一笑に付されてしまう。「きっとお母様も『隣国に友人がいるだけです』って困ったように笑いますよ」とは、母をよく知る娘の弁だった。




 ステファナの両親は、様々な噂が付き纏う存在でもある。大抵が良い噂であるが、中には悍ましい噂もあった。

とはいえゼナスはステファナの言葉の端々から両親への尊敬を感じていたし、育てられた本人を見ていれば彼らの人柄も伝わってきた。だからといって緊張が無くなる訳ではないものの、会ってみたいという期待があるのも本音だった。

 緊張と期待の入り混ざる、来訪初日。

 ゼナスとステファナは来訪者を出迎えるため、宮殿の前に立って待っていた。そこへ大勢の護衛に囲まれた馬車が到着する。馬車は二人から少し離れた位置に停まった。

 護衛の一人が馬車の扉を開ける。先に降りてきたのはカルム国王の父であるリファトだった。皮膚病により異様な容姿をしていると聞くが、間違いではなかった。病変した肌を隠すことなく堂々と晒すリファトを見て、立ち並ぶ廷臣達に小さなどよめきが起きる。

 リファトは馬車の中へ手を差し伸べた。その手を取って降りてくるのは勿論、彼の妃であるエイレーネだ。敷かれた絨毯の上に降り立った二人は束の間、見つめ合って微笑む。そして今度は、柔らかな眼差しをステファナ達がいる方へ向けるのだった。

 寄り添い合うようにしてゆっくり歩いてくる両親に、ステファナは駆け寄って飛びつきたくなる。けれど此処が公の場である以上は、その衝動を抑えなくてはいけない。逸る気持ちを何度も飲み込み、対面の時を待った。


「ようこそ我がウイン帝国へおいでくださいました。私から出向くべきところを遥々、来訪してくださり感謝の念に堪えません」

「戦争ではなく平和を求めてウイン帝国を訪れることは、私共の念願でもございました。貴重な機会を与えてくださり、誠に感謝申し上げます」


 形式に則った挨拶を交わしながら、ゼナスは義両親を見つめた。

 義父の病気について予め聞きはしていたが、こうして目の当たりにするとかなり痛ましい。体の線の細さは、闘病の厳しさゆえだろうか。それでもステファナと同じ色の瞳からは、絶望の一欠片さえ見出せなかった。

 義母はステファナによく似ている。笑い方なんて特にそっくりだ。ステファナが歳を重ねた姿を見ているようである。しかし実の娘より小柄なこの女人に、帝国の廷臣達を動揺させる程の権力を持つとは、なかなかに信じ難い。一部の識者から「カルム王国の繁栄は太后エイレーネなくしてはあり得なかった」とまで言わしめる力を、どこに秘めているのだろうか。

 二人に共通しているのは、凪いだ風のような雰囲気を纏っている事だった。優しげに笑い、穏やかに佇んでいる姿からは脅威も威圧も全く感じなかった。連理の枝、という表現がこれほど似合う夫婦はいなかろうと、ゼナスは思うのであった。


 その後、場所は謁見の間へ、更には客室へと移っていく。

 あまり丈夫ではない父リファトを心配し、ステファナは長々とした挨拶は省略するよう進言しておいたのだ。抜かりなく準備された客室に入り、人払いを済ませると漸く、ステファナは皇妃から娘に戻ることができた。まず父から、次いで母から抱擁を受ける。


「お父様、無理はしていませんか?」

「ありがとう。大丈夫だよ。お前にそう聞いてもらえるのが既に懐かしい」

「ふふっ、お父様ったら。お母様もお変わりありませんか」

「ええ。皆、元気に暮らしています。後であなたのお庭を見せてくださいね」

「はい!まだ何も植えていませんが、ぜひ見てもらいたいです」


 ネモフィラの種は母が持ってきてくれるという話だった。ちょうど花壇の話題になったので、エイレーネは大切に包んできた種を娘に手渡す。顔を綻ばせる娘を見つめていたエイレーネの瞳が、ほんの少し細められる。


「昔を思い出しますね、リファト殿下」

「そうですね。ただ私も自ら手掛ける事ができたらどんなに…と、ゼナス陛下を羨んでしまいます」

「…私ですか?」


 聞き役に回っていたゼナスの名前が突然登場したため、彼は目を瞬かせた。


「リファト殿下もわたしに庭園をくださったのですよ」


 怪訝そうな表情にでもなっていたのか、エイレーネが端的に説明してくれた。しかしリファトは何となく苦い顔になっている。


「私は枯れ枝しかない庭を嬉々として披露したにすぎませんが…」

「これから咲く楽しみがあるから良いのではありませんか。それに、今ある庭園は殿下と一緒に造り上げたものです」

「そうですよ、お父様。わたしのためにしてくださった、それが一番肝心なのですから」


 リファトの謙遜は論破されてしまったが、それを述べたのが最愛の妻と愛娘なのだから、却って嬉しそうであった。


「それにしても、お父様達が来てくださるなんて吃驚しました。お兄様の頼みだったのですか?」

「いいえ。そうではなく、わたしが直談判したのです。ウイン帝国への使者にはわたしを立ててほしい、と」

「お母様が!?」


 両国は平和な関係が始まりかけたところである。カルム人を良く思わない者は、この帝国に必ず潜んでいるのだ。兄はまだしも、父がよく反対しなかったものだと思う。でも悠然と見守ることが殆どの母が、我儘を貫く事なんて滅多にない。たまの願いくらい聞き届けようとした結果なのだろうか。だとすれば母ひとりでは行かせられず、長旅の負担を覚悟で父も同行を決めたと思われる。


「…私の所業は諸外国に届いていると思いますが、カルム国王は難色を示されなかったのでしょうか」

「ゼナス様…それは…」


 ゼナスとルイーズの反逆は"父親殺し"として近隣国に伝わったであろう。世情に詳しい者なら、力づくで帝位を奪った背景も察せようが、他国の人間からすれば所詮ゼナスは肉親を殺した息子だ。良い心象は持たれていないはずである。

 ゼナスが先程から芳しくない表情をしているのはそのためだ。今さら取り繕うつもりはないが、義理の両親を不快な気分にさせるのは申し訳なかった。義両親がゼナスにまで、愛娘に向けるのと大差ない眼差しで見つめてくるので、気が咎めて仕方がない。

 だがしかし、彼の言葉を聞いても二人の態度は少しも変わらなかった。


「複雑なご心中かとお察しいたします。私も血族と争いました。家族が殺し合う様を見たのは一度ではありません」


 そうリファトは語る。

 ステファナは記録に目を通したことがあるが、兄が在位するまでに数多の波乱があったという。書かれた文字をなぞるだけだったステファナと、実際に波乱を潜り抜けてきた父達とでは、当然ながら心諸が違う。


「叶うことなら戦わずに済む道を進みたかったことでしょう。しかし傷つき、苦しみながら掴み取った現在(いま)だからこそ、尊ぶ気持ちも深まるのだと思います」


 そうエイレーネは説く。

 父の傍らでどのように時代を駆け抜けてきたのか。母の口から聞かされたことはない。ステファナが見てきたのは、二人が幸せな思い出を紡いでいる光景ばかりだった。けれど、いざ己が政略の波に呑まれた時、女の立場の無力さを痛感した。自身を守ることさえ儘ならぬのに、父を支え、子を守ってきた母は本当に偉大だ。


「娘からゼナス陛下のことは聞き及んでおります。ただ、手紙には褒め言葉しか並んでいませんので…私としましては一つくらい欠点もあるくらいが、人間味があって良いかと思う今日この頃です」

「ふふっ、そういう事ですのであまり自責の念に駆られませんよう。娘を大切にしてくださっているのは、リファト殿下もわたしも一目見て確信いたしましたよ」


 ゆったりとした優しい笑みを浮かべる二人に、ゼナスは唇を引き結びながら低頭することしかできなかった。




 食事の席にはルイーズも加わった。ゼナスと違って饒舌な彼女は、場を盛り上げるのに一役買っていた。ステファナも笑顔を絶やすことなくずっと頬を上気させているので、食事中はずっと昼間みたいに明るかった。

 リファト達は今夜は早めに休むと言い、客室へ戻っていった。明日は花壇を見せる約束をしている。ステファナは浮き浮きした気分のまま、寝支度を整えてようとしていた。

 毎晩アニタが髪に香油を塗りに来るので、今晩も同じように待っていたのだが、いざやって来た彼女の手に香油の入った瓶は見当たらなかった。その理由はアニタ本人から告げられる。


「ステファナ様。エイレーネ太后陛下から二人でお話しがしたいとのお申し出がございました」

「お母様がわたしにですか?」

「はい。いかが致しましょう」

「わたしから伺います」


 母を内廷に入れてもゼナスは文句を言わないだろう。だが皇帝の私的な宮に他国の人間を踏み入らせる事は、頭の固い廷臣から顰蹙を買う行いである。ステファナはゼナスに一言伝えてから、内廷から出て行くのだった。


 エイレーネは最初に案内した客室ではなく、別の部屋にいた。これは二人きりで話ができるように、というアニタの配慮だった。


「お母様、入ります」


 扉を開けると、窓の外の星を眺めていたらしい母が振り向いた。一年前と何ら変わらない、優しい微笑が口元に浮かんでいる。


「就寝前にごめんなさいね」

「いいえ、構いません」


 ステファナは向かい側に腰掛けようとしたが、母は己の横に来るよう促してきた。


「あなたが結婚する前にも、こうして二人で語らいましたね」

「はい。夜通し話してしまいました」

「もう一年が経つのですね」


 不意に母は手を伸ばしてきて、娘の頭を撫でた。慈しむような手付きであった。


「今宵だけは太后ではなく、あなたの母として話をします」


 撫でる手を止めたエイレーネは体を少し斜めにずらして、ステファナの顔がよく見えるような姿勢をとる。蝋燭の灯りに照らされるエイレーネの顔が、見様によっては泣いているように見えた。


「あなたが両国の和平に命をかけようとした事、誇らしくもあり、それ以上に恐怖でいっぱいでした。娘を喪ってしまうところだったと…」

「…っ!!」

「本当に、本当によく頑張ってくれました。あなたを信じて送り出したのは正しかったと、今は確信を持って断言できます」

「お母様…どうして、そのことを……」


 宮殿内で勃発した"帝落の血戦"に関する発表の中で、ステファナの処刑については一切触れられていなかった。元より一部の廷臣達が隠蔽工作をしていたが、その上で厳しい箝口令が敷かれ、宮殿の外へ情報が漏れないよう徹底されたのだ。オダリスと同じ思想を持っていた寵臣は、ゼナスが父の後を追わせた。そこまでして秘匿としたのは、まかり間違ってもカルム王国に小さな噂さえ流れてはならなかったからだ。

 だからこそステファナは驚愕させられた。帝国の民でさえ知り得ぬはずの情報が、母の口から語られたからである。


「古い友人が密書を送ってきたのです。友人なんて呼んではお顔を顰められてしまうかもしれませんが…あの方の視野の広さには恐れ入ります」

「そのような方、ご友人にいらっしゃったかしら…?」

「あなたは知らないと思いますよ。かくいうわたしも、ずっと昔に別れたきりです。ただ、ほんの気まぐれに便りをくださるのですよ」

「あの…お母様。この件はお父様も知っておられるのですか?」

「いいえ。わたしだけです。密書も既にありませんし、この先口外するつもりもありません」

「…お気遣い感謝します」

「お父様やお義兄様の耳に入っては、和平交渉に支障が出てしまいそうですから」

「ふふっ…」


 怒り狂う伯父が想像できてしまい、ステファナは小さく吹き出す。


「母と娘だけの秘密にしておきましょう」

「はい!」


 エイレーネも娘とそっくりな顔で笑っていた。

 実のところ、ネモフィラの種や和平は此処へ来る口実に過ぎなかった。ステファナがそれを理解したのは、久方ぶりに母の抱擁を受けた時である。娘を抱き締める母からは、微かに薬草の香りがした。


「こうやってまた、あなたを腕に抱く事ができて良かった…」

「お母様…っ」


 エイレーネはただひたすら娘のことを案じていた。ひと目で良い、己の眼で娘の無事を確認したかった。我が子を腕に抱き、そこに命があることを肌で感じたかったのだ。

 その為にエイレーネは大きな我儘を言った。下手をすれば国を揺るがす我儘である。安易に出歩ける立場でない事は重々分かっていた。それでも動かずにはいられなかった。リファトは多くを聞かずに、貴女が行くなら共に行きますと微笑んでくれた。虚弱なリファトを連れ回すことに良心が痛んだが、事情を知らないはずの彼は終始エイレーネの肩を持ってくれたのである。


「ご心配をおかけして申し訳ありません。でも、どうかご安心を。わたしは今、とても幸せです。ゼナス様の最愛に選んでいただけたんですもの。お母様なら分かってくださるでしょう?」

「ふふっ…ええ。よく分かりますよ」


 娘が確かな幸福を掴んだ事は、エイレーネにとって何にも勝る吉報であった。

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