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Lv2から始めるビルディング生活  作者: ジョージ
2/14

2:ビルティング

レベルが上がると効果音と共に、目の前にガラスのようなものが現れそこに、ステータスが表示される。2レベルも上がったのに、ひとつも能力が上がらない。レベルアップの音を聞いてウキウキしていたエマも、能力の変化はありません。の文字を見ると、しゅんとしてしまった。


初めてのレベルアップでステータス変化がないのは少し悲しいが、エマはなぜか俺よりがっかりしてる。


「アレク君。優しいのに、なんでこんなに恵まれないんだろう。力が無くても今だって、私を守ってくれたのに」


エマが半べそをかきながら手を握ってきた。


「同情ありがとう。でも、ビルディングってスキルにアップグレードしたみたいだから」


「でも多分攻撃できるやつじゃないよね。絶対そうだもん。というか、いまわかった。アレク君は優しいから、攻撃しないスキルしか覚えないんだよ!うん。納得。やっぱり、アレク君は優しい。だから、あんまりきにしないでね。アレク君は私が守るから」


貶されているのか褒められているのかわからないが、悪気は無さそうなので、ありがとうと言った。


街につくと、お腹を空かせたエマがぐうーと可愛らしい音を鳴らした。


「アレク君。お腹空いたね」


ポケットの中を見てみるが、先程コヨーテが落としていった50Gしかない。まあ、エマのぐらいなら買えるか。


「俺はりんご食べるからいいけど、エマはなんか食べるか?さっきコヨーテを倒した分くらいしかないけど」


「私は大丈夫。それより、アレク君こそ食べた方がいいんじゃない?」


「さっきカレーを食べたから大丈夫」


「そっかー。なら、アレク君のりんご……もらっちゃおうかなー?」


「えっ。そんなんでいいの?50Gなら、パンくらいは食べれるぞ?」


「うんうん。私は、アレク君のりんごが食べたいの。とびきりおいしいりんごをおねがい」


エマのきらきらとした笑顔ににやにやしながら、りんごを生成し差し出された小さな両手にぽんと乗せる。


「ありがとう」


エマはりんごをそのままかぶりつくと、おいしそうに食べた。


「アレク君のりんごはやっぱりおいしいな。甘いしボリューミーだし、なによりキンキンに冷えてる。すごいよね。体の中から出来てるのに、冷たいなんて」


体から炎やら氷を出すほうがもっとすごくないですか?


「やっぱり、アレク君のりんごは優しい味がする。ごちそう様でした」


ペロリと平らげたエマは、腰を下ろした。


「なんだか眠くなって来ちゃった」


「どこか泊まれるところないかな?」


「いまからなら、二人一部屋になっちゃうかも。アレク君は大丈夫?」


大丈夫です。むしろ歓迎です。


「うん。大丈夫だよ」


「あっ。お金足りるかな?」


エマが谷間からポーチを取り出した。


「だめだ100Gしかない。冒険の練習として、野宿でもしようかな?」


「野宿かー。夜は冷えるし。外で寝たら襲われたら困るし」


「そいえば、さっきりんご出した時もそうだったんだけど、それ以外のものも出せそうな気がするんだよな」


「えっ。本当?今ので眠気一気に吹っ飛んだんだけど」


「なんだか、今ならベッド出せそうな気がする」


「えっ。すごーい!がんばれ」


りんごを出す時には、頭の中で鮮明にりんごが浮かんでいる。その状態で右手に意識を集中すると、りんごが生成させる。

そして今頭の中にあるベッドが鮮明に映し出されている。

あんまり具現化したくないが、宿代がない今、背に腹は変えられない。


「とりあえずいま出そうだから、あそこの茂みに行こっか」


「うん。アレク君が、どんなベットを作るか楽しみー」


「よし。出すよ」


りんごより重い感じがしたが、煙と共に可愛らしいベッドが姿を現した。


「アレク君?このベッドは、一体……なんのベッドかな?あはは」 


エマの顔が引き攣る。


俺が出したベッドは、ハート型のベットでした。


「なんのベッドかなー?あはは」


エマのげんこつが飛んできたので、もう一つ同じベッドを生成して別々に寝た。


朝起きるとビルディングについて自分なりに試してみた。

午前中の間、ずっと試しているとあることがわかった。

ビルディングで生成できものは、限られている。

自分の中で具体的にイメージできるものであること。


バランの顔を思い浮かべながら、生成しようとしたが無理だった。あんなに鮮明に覚えているのに。生成したら八つ裂きにでもして本人に見せてやりたかった。どうやら、固有の物は生成できないらしい。


とりあえず能力に慣れる為に、街にある物を観察して回った。

エマがこれ食べたいというと、食事している人をじーっと見ながら頭に焼き付け、店の裏に行ってエマに振る舞った。

見た目こそはうまくできているが、エマの症状からすると微妙だったらしく、一口食べた後俺に律儀にお礼をした。


次は洋服。ショーケースにある洋服や歩いてる人の服を見て、エマのオーダーに合わせて生成した。服は安定しており、エマの体にも馴染んだのか喜んでくれた。


「アレク君の事見直しちゃった」


「えっ。それって、前までは馬鹿にしてたってこと?」


「うんんん。違うよ。いままで以上にいい意味で見直したってこと」


「そう。ありがとう」


初めての感覚だった。りんごを作っていた時は、感謝されることもあったが、なんというか作ってる感じがしなかった。というより、自分のスキルの凄みを感じることができなかった。

でも今は違う。想像力と経験さえあればなんでも作れる。そんな気がする。


「ねえ、アレク君。このビルディング?って能力。なんでも作れるのかな?」


「うん多分。だけど今は、粗悪な物しか作れないと思うよ?あっ。そうだ。剣とかなら作れるかも。覚えやすい形してるし」


「剣かー。それならりんごより高く売れそうじゃない?」


「たしかに」


エマの助言を受け入れて、記憶を頼りに剣を数本用意した。


「おお。結構強そうだね」


エマが目を輝かせてかんげきしている。我ながらにいい出来だ。これなら売れる。そう確信した俺は早速露店を開き、剣を売ってみる。


「安いよ。安いよー。いまなら剣が一本100Gだよー」


市場価格のおおよそ10/1。生成された剣は、あっという間に売り切れたしまった。エマと顔を合わせ、喜び合っていると早速苦情が来た。


「なんだいこの剣。岩に掠れただけで、壊れちまったよ」


苦情もたくさんきて、全部返金+迷惑料金までとられ一文なしになってしまった。


そういえば剣を使ったことなかったな。神にでもなった気分でいたが、このビルディングというスキルは意外と玄人向けのスキルのようだ。


「まあ、最初はそんなものなんじゃない?がんばれアレク君!」


エマとの距離が急激に近くなったかもしれない。

いや、りんごスキルのせいで自分が卑屈だったからもしれない。昔からエマは、俺に懐っこかった。


それからお金を作れば?と試してみたが、もちろん金には識別番号があり、これはつかえないなと断念した。


エマと別れた後家に帰った。

居間に入るやいなや、バランがにやつきながらこちらに向かってきた。


「兄さん。お腹空いたんだが、なんかない?りんご以外で」


「なにを食べたい?」


今日の俺はいつもと違ってのりのりだ。


「そうだなー。街の料理かな?」


「了解」


俺は、外に出てそこらへんで数分暇を潰すと、先程エマに振る舞ったスパゲッティを生成し、バランに渡した。


「えっ。なんで、あつあつ?ありがとう」


冷めた料理に文句を言うつもりだったんだろう。バランは戸惑いながら、スパゲッティを受けとった。


「飲みものはいるか?」


「のっ飲み物。欲しいけど、まだ俺はなにも頼んでないぞ?あっ!ははーん。将来有望な俺に媚を売る為かな?あーそうか。そうか。シャングリラに入りたいのか。でもお兄さんごめんな。りんごスキルじゃいくら俺の人望があっても、さすがに入れることはできないなー」


弟よ。好きな物を飲めるのは今のうちにだぞ?今は、なにかを作るのが楽しくてたまらないんだ。


「そうだなー。牛乳」


「了解」


外に出て、今度は森の入り口でベッドを生成し一眠りする。牛乳は、街にあるパン屋さんでしか手に入れることはできない。


「あーあ。眠たいなー。あの時、エマと寝れたらよかったー」


淡い過去の期待をぼおーっと空想に投影しながら、ゆっくりと目を閉じた。


「そいえば、このスキル。モンスターとか作れるのかな?」


俺は勢いよく起き上がり、コヨーテがいた場所まで向かう。場所につくと、4,5匹のコヨーテの群れが同じ場所にいた。


「たぶんモンスターって、固有の生き物とかじゃないよなー。だったら、同じ場所に同じ数なんてありえないし」


気づかれないようにじーっとコヨーテを観察する。

毛質。目、鼻、口、耳。動きや鳴き声に至るまで、じっくりと観察する。頭の中にイメージが湧くまでに、一時間ほどかかった。

目を瞑りイメージを膨らませる。


黒い毛。鋭い目。筋の通った鼻。異常に発達した犬歯。太い足。やや黄色い爪。


頭の中に一匹のコヨーテが浮かび上がったとき、それを右手から放出される。


ぼわんという間抜けな音と共に、一匹のコヨーテが姿を現した。コヨーテは、こちらに気づくとお利口にお座りをした。しっぽを振りながら、舌を出してはあはあーしている。

試しにりんごを与えて見ると、夢中でむしゃぶりついた。

りんごを食べ終えたコヨーテは、すりすりと身を寄せながらじゃれてきた。どの動きも、警戒心の強いコヨーテのものではない。

俺の事を主人とでも思っているのだろうか?

ためしに手を出して見ると、ぺろぺろと舐め始めた。


「なるほど。これはすごい」


さらに、もう一匹コヨーテを生成してみる。

二匹のコヨーテは、喧嘩をするどころか大人しく座っている。


「これって攻撃できるのか?」


コヨーテの群れに向かって、攻撃の指令を与える。

攻撃を始めたコヨーテは、群れに向かって攻撃を仕掛けた。

コヨーテ達はお互いを攻撃し合い、こっちのコヨーテは全滅し、相手側は四匹が死に、一匹だけ生き残った。どうやら、生成したモンスターは、対象にしたモンスターより少しだけ強いようだ。

生き残りの一匹が最後の力を振り絞って飛び掛かってきた。俺はコヨーテを生成させ、返り討ちにする。


レベルが3から4になった。


生成したモンスターが獲得した経験値は入るようだ。残念ながら、ドロップ品は手に入らなかった。

俺は、コヨーテを5匹ほど生成し家に帰った。


家に帰るとバランは、ソファーでいびきをかきながら寝ていた。明日は昼まで寝る予定なので、起こされたら困ると思い、牛乳を生成しついでに作った氷水の中に瓶ごと入れ、起こさないようにバランの横にそっと置き紙を置いた。


自分の部屋に着きひと段落した後、箪笥の奥から昔誕生日プレゼントで買ってもらった料理本を取り出す。昔は、りんご関係のものばかり作っていたせいか、りんご関係のページはすべてぼろぼろになっていた。


俺はりんごを生成し、かぶりとリンゴを噛み締める。


「昔はよく料理してたっけなー」


りんごスキルだとバカにし始められた頃、自分の存在意義を示すために料理をしている時期もあり、最初はみんな喜んでくれたが、あまりにもりんご料理を出し為、りんご野郎と呼ばれる原因のひとつとなってしまった。


今のこのスキルを知ったらみんなはなんて言うだろうか?

いやいや、このスキルは自分が楽をするために使う物だ。信用できる人間の前以外では、いままで通りりんご野郎を貫くことにしよう。


とりあえずは、おいしい料理を生成できるようにしよう。

作り方を覚えれば、なんとかなるっしょ。


この日俺は、久しぶりに夜更かしをした。


朝起きるとレベルが2レベル上がっていた。

森の中に行って確認してみると、既にコヨーテは全滅していた。てっきり寝ている間にめちゃくちゃレベルが上がるものだと思っていたが、現実はそう甘くないらしい。


「回復技を持ってるモンスターが必要だな」


モンスターのことはまったく知らない。地面に座り込み考えてみる。


「作ったモンスターって、レベルって上がるのか?」


コヨーテを生成し、コヨーテの群れに俺が飛びかかり四匹を誘き寄せる。その間に生成したコヨーテと残りのコヨーテを戦わせる。これを10回ほど繰り返した。コヨーテの群れが消滅した後、再び姿を表すのは1時間後。気づけば、深夜になっていた。


「さすがに疲れた」


「強くなったのか?お前は」


コヨーテも流石に疲れたのか、俺の膝下に座り込みいびきをかいて寝始めた。


「モンスターも寝るんだな。そりゃそうか。お前達も生きてるもんなー」


コヨーテのレベルは見ることが出来ず、成果があったかどうかわからない。


「やっぱりレベルを上げる為には、バランみたいにモンスターとちゃんと戦わないといけないのかな?」


正直諦めたくはない。あと少しだけ知恵を働かせればなんとかなる。それはわかっていた。だが、いままで自分自身に諦めてきた生活をしていたため、こういう状況には弱い。


「どうやにかしてこのりんごを食べさせる事ができればなー」


りんごにはHPを回復する力がある。コヨーテにりんごをぽいっとあげる。コヨーテは、くんくんと匂いを嗅いだ後、目を瞑りながらりんごを食べた。コヨーテの傷が少しだけ癒える。

もう一つりんごをあげると、コヨーテはバクバクと食べた。


「俺がつきっきりってわけもいかんしなー」


リンゴを与え続ければ効率良く経験値稼ぎが出来るが、モンスターに殺されるのが怖いので出来ればやりたくない。とりあえず家に帰らず、暖炉とベッドを作り眠りについた。

閲覧ありがとうございました。

よろしければ、ブックマーク・感想よろしくお願い申し上げます。


毎日 12:00に更新します。それ以外にすることもあります。

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