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ダイナマンサー ~恐竜召喚士の異世界冒険~  作者: ほうこうおんち
異世界と地球との関わりの章
19/90

異世界探検計画

「ライト!!」

 ベースキャンプに姿を見せた来人に、ユハが飛び寄って来た。

「寂しかったよぉ。

 なんでもっと早く戻って来てくれなかったのよ。

 私、ずっとライトが帰って来るのを待っていたんだよ」

 中々可愛い事を言って来るが、次の張遼の言葉で台無しになる。

「我が君、お帰りなさいませ。

 お約束通りユハ殿を守っておりました。

 ユハ殿も、自衛官殿から剣の手ほどきを受けておりました。

 中々厳しかったようで

 『ライトが早く帰って来れば、私はもうこんな事しないで済むのに』

 と愚痴を零しておられました」

「張遼さん!

 なんでそれをバラしちゃうの?

 いや、あの、ライト……寂しかったのは本当だよ」

 この娘、段々小ずるくなって来てないか?


「それはそうと、ユハ……」

「え?

 はい、あの……何?」

「……ちょっと太った?

 顔がなんか丸くなったような……」

 もうユハがギャーギャー騒いでそれ以上言えなくなった。

 彼女は、ケンタウロスたちには酒を飲ませているのに未成年だからそれが認められないのを可哀そうに思った地球人たちに、甘いジュースをいっぱいご馳走になって、甘やかされていた。

 ジュースだけでなく、野生種とは違う品種改良されて糖度が高くなった日本産のフルーツも振舞われる。

「なんでこんなに美味しい果物が有るの!?」

 目を丸くして驚き、目を細めて幸せそうに食べる。

 ユハは化粧とかしていないが、掘りの深い白人顔とも違い完全な日本人顔でもない中間型、大人と子供の中間の丁度良い具合の成長期にしか見られない美少女顔なので、男の中には下心を持つ者すらいる。

 無論ユハはそういう感情を感じ取ると即座に逃げてしまうのだが、そういう者じゃなくて女性隊員から見ても可愛いから、ついつい甘やかしたくなるのだ。

 魔合成で生きられる彼女たちの種族は、多くの食糧を必要としない。

 それでも美味しそうに食べる姿に、ついつい色々食べさせたくなるのだ。

 その結果、ブクブクとかぽっちゃりではないにしても、前の瘦せ顔や細い腕よりも、大分ふっくらとしていた。

 逆に前の瘦せぎすに比べ、今の方が可愛いくらいだ。

 だからこそ、皆は太らせているという感覚無しに、どんどん甘い物をあげてしまう。

 ユハ本人は、飛ぶ時に「あれ?」と自分が重くなって来た事に気づき、気にし始めていた。

 そこに女性と付き合った事が無い安鳥来人、デリカシーの無い一言を放ってユハを膨れさせてしまったのだ。

「ダメだわ。

 少し食べる量減らさないと……」

「いや、今のままで全然大丈夫なんだけど?」

「いー--や!

 痩せてやるんだから。

 これはライトに言われたからじゃないんだからね!」

 ユハの精神の成長で、面倒臭い感じになって来たのか、それとも普通の女心を感じ取れない来人がにぶ過ぎるだけなのか……。


「それはそうと、我が君。

 随分とお強くなられたようで」

 張遼が来人を眺めながら話題を変える。

「そう?」

 面倒臭い会話から解き放たれるから、来人も急いでそちらに移った。

「はっ。

 以前に比べ、気配が無くなりました。

 それでいて、気を向けられた時の圧は以前よりも強うなって御座います」

 思念のコントロールが何だかんだで上達したようだ。

 この世界、思念の制御が魔法の制御に繋がり、より制御出来る者が高度な事を行える。

 地球上では実感が無かったが、張遼ら異世界人が「強くなった」と言っているのを聞いて、ちょっと嬉しくなった。


「ではちょっと試してみよう。

 出でよ、『マルセイユ』!」

 プテラノドンの個体名「マルセイユ」を召喚する。

<お、司令官殿、以前よりも指揮力が上がりましたか?>

 翼竜にまでそんな事を言われる。

「そうかもしれない。

 それを試す意味もあるが、もっと重要な仕事を頼む」

<何なりと>

「足にカメラを付けて、それで真っ直ぐ行ける所まで飛んで欲しい。

 このカメラは、1日撮影し続けても大丈夫な特別なものだ。

 真っ直ぐ、曲がったり、上がったり下がったりせず、一定の速度と高さで飛び続けて欲しい。

 出来るな?」

<……別な奴を当たって欲しい……と言いたいとこですが、分かりました。

 空戦出来ないのは残念ですが、司令官殿の命令を第一としましょう>

 空撮から地図を作りたい。

 今まで、地上を足で回った部分は地図化していたし、ポイントポイントで写真撮影もしていた。

 それでも可能なら、空撮で広い地域を確認出来た方が良いだろう。


 デジタルカメラなら、バッテリーと記録容量が続く限り撮影が出来る。

 しかしこの世界は、電子機器は故障をしてしまう。

 今だにその対策は出来ていない。

 そこで倉庫からフィルム式の撮影機材を見つけ出し、フィルムも入手し、撮影速度やレンズの画角等を調整し、連続撮影時間を大幅に伸ばした地図作成用カメラに改造したのだった。

 これがやっと完成したから、プテラノドンに取り付けてみる。

 そして来人の能力が上がり、顕現時間が伸びているなら、より地図作成は進捗するだろう。

 予想通り、制限時間は伸びていた。

 より遠くまで飛べるようになったプテラノドンにより、広域の空撮映像が得られる。

 実際に探検する前に、こうしたアナログドローンを飛ばし続けて、周辺の情報を整理するのだ。


 要は、今までの短時間滞在チームのベースキャンプ周辺調査も、来人の魚人たちの宿営地までの旅も、本格調査をする前の予備調査と言えた。

 何が出来るのか、どういう状況にあるのか、どのような方針で挑んだら良いのか。

 余りにも何も知らな過ぎる。

 個人の能力に依存するとはいえ、やっと空撮が可能になった。

 現地協力者が得られた。

 文字という情報を持ちかえった。

 これらは手探りで異世界を調べていた地球にとって、途轍もなく大きな前進である。

「もしも知的生命体が居たなら?」から「知的生命体とどのように対応するか」にテーマが変わる。

 この周辺地域を調べる、から海の向こうの大陸まで視野に入れると範囲が大きく変わる。

 更に、常駐出来るのが安鳥来人だけという状態から、現地協力者であるケンタウロスの群れの一つに、ベースキャンプの警備を依頼出来る。


 プテラノドンの巡航速度は、白亜紀の地球においておよそ時速30km。

 召喚と名付けと異世界の影響での性能アップで倍の時速60kmに上がる。

 来人のレベルアップにより、戦闘さえなければ1日程は顕現可能となった。

 往復で使用可能なのはその半分とは言え、ベースキャンプから720kmの円内は地形まで含めた地図の作成が可能となった。

 半径700km、それは東京を中心にすれば北は北海道は函館を超えた辺りまで、西は広島県は岩国市の辺りまで、南は伊豆諸島と小笠原諸島の中間海域までに相当する。

 ベースキャンプで8日を過ごし、その間に八方位に飛行をさせ、その分しか地形情報を得られなかったが、それでも収穫はあった。

 これまでの調査の旅は、位置を見失わないよう北に向かって進んでいた。

 とりあえず方位磁針は使える為、それに沿って真っすぐ北を目指す。

 2時間程進んだなら、ビーコンを設置し、帰りの為の道しるべとする。

 そうやって北の辺りを、多少ブレながらもフラフラして魚人たちと出会ったのだが、そちらよりも東に行けばより海が近いという事が分かった。

 南と西は行けども行けども陸地。

 南は行動限界であった700km離れた辺りから、砂漠になっていた。

 夜に北極星が見えない、逆に南極星と思われる星を見た事から、このヘキサポーダ大陸は南半球に存在すると考えられる。

 まあ地球でのS極、N極だから実際は相対的なものなのだが。

 そうなると、大陸的には北に海が在り、湿った空気がそちらからもたらされるなら、南側が大陸の奥地になる。

 丁度山地も在った事で、北の海からの湿った風は山地を超える辺りで雨を降らせて植物を育み、その南側には乾いた風が吹きつけ、砂漠になった。

 そう考察した。


 故に、後方支援要員や張遼、更にはユハも加えた話し合いで

「東に向かおう」

 と決まった。

「東に行くと、割と近い距離で海に出る。

 海には魚人のような、別の大陸からの来訪者が居る可能性がある。

 魚人の宿営地は、高空からの空撮だと分からないそうですね。

 ここは接近してみないと分からないので、安鳥君、よろしくお願いいたします」

 地球側担当者の発言に、ケンタウロスの張遼も補足をする。

「確かに海沿いには幾つかの異属がやって来ている。

 一々聞いたわけではないが、多分別の陸地から来たのだろう。

 そいつらに海の事を聞くのは良い事だろう。

 まあ、酒を飲ませて口を開かせる事だな」

 ユハは、東に行く事よりも、西や南に行く事に反対だった。

「理由は分からないけど、西には行っちゃいけないって昔の記憶にあるの。

 別に何か怖い目に遭ったわけじゃないけど、決して行っちゃいけない、そう心がざわついてる」

 

 ケンタウロスたちは、特に西に恐怖心などは持っていない。

 このベースキャンプ周辺と大して変わらない世界だという。


 なお南の砂漠地帯については

「我々もほとんど行った事は無いし、我が君の仲間が見せたような文明といったものは見ていない」

「砂漠はただただ広く、生き物の姿もまばらである」

 とケンタウロス族が話してくれた。

 更に、大陸の事をよく知るケンタウロスたちが、砂漠に行かない理由には獲物が無い理由の他に、行く手前の方に問題が有るからだと言う。

「大森林地帯には、厄介な動物が多数棲んでいるし、我々の口に合う食糧が無い。

 それに泥で足が取られて、進みづらい」

 という事だった。

 図鑑を見せると、ワニやヒョウ、象に相当する動物が居るようだ。

 足や腕の数は異なるが。

 ただ、図鑑のオランウータンを見て

「これも見た事はある。

 樹上に家を作って住んでいる、獰猛な奴等だ」

 と言った事で、ここにも文明レベルは低いとはいえ、知的生命体が存在している可能性があり、いずれは調査対象だろう。


「本当は全体像を明らかにしたいが、安鳥さん1人に何もかもをさせるのは無理があります。

 だから、個人として出来る範囲の事、魚人たちの教えた別の大陸に住んでいる地球人を探し出す事を第一としましょう。

 その為に別の大陸に渡る為の調査旅行を行って下さい」

 こうして第四次調査旅行の目的が定められた。

 出発は2日後。

 準備が進められていく。

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― 新着の感想 ―
[一言] > 西は広島県は岩国市の辺り 岩国市は山口県です。 あ、物語の世界だから読者の世界とは違っていてもいいのかw
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