自分の銃
某所でコメント頂いた銃の名前をどう読むのか問題!
わたしの近辺では割とバラバラなんですが、本作ではアルファベットは英語読み(当たり前)&数値は一桁ずつ日本語読みにすることにします。
M9はエムキュウ グロック18Cはイチハチシー HK416はエイチケーヨンイチロク
違和感ある方もいらっしゃるかと思いますが、こんな感じにさせて頂きますね。
でもMP5とかは……さすがにエムピーファイブと読ませてくださいw(不統一ですみません
放課後、ゆき達は市民体育館で幾度目かのサバゲに興じていた。
ルールはハンドガンのみ、三対三の殲滅戦。顔なじみになった常連客に志穂が声をかけ、対戦相手になってもらった。回数をこなしたこともあり、ハンデはなしだ。
「あははは! あはははははっ!!」
そして咲美は相変わらずなのであった。
開始早々からフィールドを縦横無尽に駆け巡り、得意の指差し射撃で敵チームを翻弄する。
「ヨシッ! そこヨシッ! そこもヨーシッ!!」
「わっ、ちょ……っ、あんなん、ありかよ!?」
「落ち着けっ!! あの子、動きはすごいけど、射撃は雑だからっ!」
「なにおぅっ! あたしだって、ちゃんと狙えばあてられるんだぞーっ!」
「咲美ちゃん、前に出すぎだよ! いったん戻って!」
忠告を振り切るように、咲美は吶喊した。迎え撃つ敵チームはイマイチ腰が引けてしまっている。雑と評されてしまったが、咲美はターゲットの視認から発砲までが異様に素早く、『だいたいあの辺』にはあたる為、無視できないのがやっかいなのだ。
「おりゃおりゃおりゃーっ! ――あれっ?」
弾が出ない。
見れば、咲美のレンタルM9はスライドが後退位置でロックされていた。M9を含め、ガスブローバック式のハンドガンは弾を撃ち尽くすとスライドストップがかかるものが多い。これにより射手にマガジンチェンジをうながすのである。
「なんだー、もう弾切れじゃん。あははは……あたっ!」
足を止めてしまった咲美は、マガジンを抜く間もなくBB弾をあてられてしまった。
「ヒットー!」
すぱっと手を上げ、セーフティーエリアへ退避していく咲美。思い切り身体を動かせて、ご満悦の体である。
「ああ、咲美ちゃんが……うひゃうっ!」
隠れていた遮蔽物へBB弾が命中し、ゆきは身をすくめた。
居場所は完全にバレているらしい。ちょっとでも顔を出すと、即座に制圧射撃を喰らってしまい、反撃どころではない。
咲美がダウンしたことで気を取り直したらしく、敵チームの動きはよくなっている。
(や、やっぱり撃たれるのは怖いぃぃ……っ!)
ガシャッ! デザートイーグルの巨大なスライドが硬質な閉鎖音を立てた。
ゆきに身を寄せ、志穂がささやきかける。
「大丈夫、ゆき?」
「さ、咲美ちゃんが……」
「まったく! すぐ気をそらしちゃうのよね、あの子。中学の大会で競技に集中させるの、すっごく大変だったのよ!」
「あ、あはは。だろうね」
志穂はゆきに軽く肩をぶつけた。
「落ち着いて。ゲームなんだから楽しみましょうよ!」
「あ、遊びだもんね。大丈夫、大丈夫……痛いけど、怖くない……」
「そうよ。それに、まだ私がいるじゃない」
「……うん」
ふーっと息を吐き、ゆきは気力をよみがえらせた。
「ありがとう。もうホントに大丈夫だよ」
「よかった! じゃあ、この前舞さんがやってたあれ、狙ってみない? 決まったら格好いいわよ!」
「えっ、失敗したら……」
「その時はその時。だってこれは―」
「――遊びだもんね! やってみるよ、志穂ちゃん!」
「じゃあ、私が誘うわ。相手の位置、わかる?」
「ん、待って……」
そっと瞼を閉じるゆき。
呼吸を鎮め、聴覚に集中する――靴が床を踏みしめる、かすかな擦過音がした。
ゆきは右を指し示し、指を二本立てた。次は左、指は一本。応射がないのをいいことに、敵チームは密やかに移動して半包囲をもくろんでいるらしい。
合図をすると志穂は左へ走り出し、デザートイーグルを撃ちまくった。発砲音に驚いたのか、左の敵は慌てて身を隠す。しかし駆ける志穂の姿は、右の敵二人からは丸見えになってしまった。
「――っ、出たっ!」
「よっしゃ、もらいっ!!」
無防備な背を撃とうとした瞬間、軽快な連射音が響き、二丁のエアガンはカカンッと横合いから叩かれた。
「うえっ!? ヒ、ヒット!」
「ヒット! ……え、マジ?」
身体だけでなく、銃や装備への命中も〝ヒット〟扱いとなる。二人はちゃんと姿を隠していたが、エアガンを構えた際に遮蔽物の端からスライド先端部分がちょこんと飛び出してしまった。ゆきはそれを狙撃したのだ。一瞬の早業であった。
「右二人、倒したよ!」
愛銃を構えたまま、ゆきが叫ぶ。
ほどなく残った一人を志穂が仕留め、ゲームはゆき達の勝利となった。
□
サバゲを楽しんだ後、三人は女子更衣室へ向った。
「制服プレイかと思った? 残念、今日は学校ジャージでしたー」
「誰に話してるのよ、咲美!?」
ゆき達は更衣室のロッカーに制服と鞄を預けていた。
レンジでのシューティングならともかく、サバゲを何度もこなせばかなり汗をかく。女子的に事後の着替えは必須だった。
ジャージを脱ぎながら、ゆきはじんわりとした安堵を覚えていた。サバゲは怖くもあるが――だから面白い。緊張してしまうからこそ、終わった後の解放感が凄く、晴々した気分になれる。この〝やり終えた感〟は独特のものだ。やっぱり、こんな遊びは他にはない。
しかもサバゲを一緒に楽しんでくれる友達までできたのだ。
「ゆっきー、今日もかわいい下着つけてるじゃん。期待通りだぜ! でかした!」
「え? そ、そうかな……咲美ちゃんはスポーティーな感じだね。かっこいいよ!」
「ほほう、谷間も控え目で可憐ですなー、お嬢さん。ぐふふふふっ!」
「さ、咲美ちゃんだって、あんまり変わらないじゃない!」
身を引きかけたゆきにしなだれかかり、胸をのぞく真似をする咲美。またしても傍若無人なJK同士のキャッキャウフフが展開されてしまった。今回は女子更衣室であるから、いくらか場所柄をわきまえているとも言える。
問題があるとすれば、組み合わせがいつも同じであることだ。
強めにロッカーの扉を閉め、志穂は髪を揺らして二人に向き直る。
「咲美、ここは部室じゃないのよ! 騒がしくするのはマナー違反――」
噛み付こうとした志穂だが、半端なところで言葉を途切れさせてしまう。
どうしてか、ゆきと咲美はぽかんと口を開け、眼を丸くして志穂を凝視していた。
「な、なによ……?」
「で……っ、でっけーっ!!!!!! 志穂のおっぱい、また一段と大きくなってるじゃんっ!!」
「す、すごいね、志穂ちゃん。身体細いのに……ホントにすっごい……っ!」
驚愕と感嘆のシャワーが浴びせられた。志穂は顔を真っ赤に染め、手に持った制服で豊かな胸を覆い隠す。
「ちょ、じろじろ見ないでよ!」
「すげー。下着も大人ってか、人妻みたいじゃん。すげー」
「仕方ないでしょ、サイズ的にかわいいのがないのよ……!」
「ご、ごめんね? 服越しにはわかっていたんだけど……」
「生ならではのド迫力だよなー。ぼいん、ぼいんとこう」
「咲美、やめてってばっ!!」
「あははは、悪ぃ、悪ぃ。てかさ、ゆっきーに相談する件、あったじゃん」
「えっ? ああ……そうだけど。もうっ!」
「わ、わたしに相談? どうしたの?」
咳払いすると志穂はぐっと背筋を伸ばし、宣言する。
「私、自分の銃を買いたいの。いえ、絶対買うわっ!!」
「あたしもー」
咲美も同調し、
「レンタル料も馬鹿にならないじゃん? こう何度もサバゲするなら、いるよなーって」
「でも、選び方がよくわからないのよ。軽く調べてみたんだけど、エアガンは種類が多すぎるじゃない?」
「あたしは撃てればなんでもいいんだけど……」
「そんなわけにはいかないでしょう。高いものなんだから、ちゃんと選ばないとダメよ」
「志穂もこう言うしさ。ゆっきーなら、どの銃がおすすめかなって」
二人から頼られるのは嬉しい。
それだけに、ゆきはいい加減な返事はしたくなかった。
「うーん……難しいよね。わたしもまだよく知らないし……」
「そっか。よし、くじ引きで決めよう!」
「なにがよしなのよ!? ゆき、あなた今日は自分の銃を持っているわよね?」
「あ、うん。〝M&P9L〟だよ」
ゆきはキャリーバッグから愛銃を取り出した。
M&P9Lは現代的なたたずまいのハンドガンだ。ポートがずらりと並ぶスライド(この為、正確には〝M&P9L ポーテッド〟と呼称される)とエルゴノミクスデザインのポリマーフレームを組み合わせた精悍な印象の銃である。学校から直行する時をのぞき、ゆきはこのエアガンを体育館に持ち込んでいた。
「おー! やっぱかっこいいじゃん、ゆっきーの銃!」
「えへへ、ありがとう咲美ちゃん。ラウンドアバウトとかの競技をやるなら、〝ハイキャパ〟の方がいいらしいけどね」
ハイキャパは有名な〝コルトガバメント〟の装弾数を増やしたモデル――〝ハイキャパシティ・ガバメント〟の略称である。様々な形式があるが、いずれもマガジンが大きい分ガス容量が多く、安定して撃てる。人気の高さから各種カスタムパーツも豊富であり、シューティングマッチの定番なのだ。
「レンタルエアガンにあったよね、ハイキャパ。見た目ごつくて太くて、ちょっと握りにくい銃だよな」
「うん。でも、この9Lはグリップの後ろを交換して、細くできるの」
ゆきが9Lを手渡してやると、咲美は驚きの表情を浮かべた。
「ホントだ、全然握りやすいじゃん! あと軽い!!」
「わたし掌小さいし力もないから、この子じゃないと上手く扱えなかったんだ」
「なるほどね。ゆきはどうやってこの銃を選んだの?」
「えっ? わたしの場合は……」
ゆきはぽんと手を打った。
「そっか! エアガン詳しい人に相談すればいいよね!!」
「しかし、志穂があんなに成長してるとは……見抜けなかった、このサクミの目をもってしても!」
「ちょっと咲美……また胸の話なの? いい加減にして頂戴!」
「だってさ、中坊の最初の頃はあたしと変わらなかったじゃん。びっくりだぜ!」
「えっ? そうなの、咲美ちゃん?」
「だよ。その頃は志穂も短距離走やってたし。でもおっぱいがどんどんでかく、重くなっちまって……とうとう走ることすらできなくなって……引退するしかなかったんじゃっ!!」
「えええっ!?」
「で、マネージャーに転向したってわけ。な、志穂?」
「事実のように言わないでよ、ゆきが本気にするでしょっ!?」