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  作者: たね
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 今日の天気は快晴。

 と、いってもじりじりとしたひどい日照りはなく微風が気持ちいい。



 わたしは定位置のベランダで今日は過ごしていた。

窓は開けられていて、薄手の遮光カーテンが揺れるたびに家のなかの様子が見えた。

 家のなかでは黒髪を緩く巻いた奥さんが掃除機をかけている。きれいにはしているけれど、ちっとも派手ではない。服装もどちらかといえば、質素なのだけれど、上品に見えるのは奥さんがきれいだからだろうな、と思う。




 テレビではワイドショーが多分流れているのだろうけれど、わたしはあまり難しいことは知らないからテレビのなかの人たちが話していることはよくわからない。



 それでもわたしは奥さんがかけている掃除機の音や、テレビの音がとても好きだ。

 外部との交流のないわたしからしたら、そんな小さな変化でもたまらなく興味深いし、日々移ろっていくものに触れるのは、生きているっていう感じがしてとても楽しい。


 わたしはいつからこの世に生を受けたのかよく覚えていない。気が付いたら、ここで生活していた。もともと、ぼーっとしているほうだから、恥ずかしながらほかの子たちに比べたら物心つくのが遅かったのかもしれない。




 掃除機の音が止み、奥さんがふとわたしのほうを振り返って台所へ行った。

今までに何回か天気の悪い日に家のなかに入れてもらったことがあるから家のなかのことは何となくだけれど、わかる。

 奥さんは小さなじょうろを持って、ベランダに置いてあったサンダルを履き、わたしのもとへ近づいてきた。今日はふんわりとしたシフォン生地の柔らかそうなスカートを履いていた。それが風で静かに揺れていてとても奥さんの雰囲気に合っている。




 奥さんはわたしの体をそっと寄せて土の部分に水をかけてくれた。

奥さんの触り方はとても優しくてもっと触っていてほしいと思った。


それほど、喉は乾いていないつもりだったけれど、少しすると、ゆっくりと体中に水分が染みわたっていく心地がして気持ちがよかった。奥さんはわたしにかけ終わると、ほかの花や、観葉植物にも水をあげはじめた。わたしたちを見ているときの奥さんは楚々としていてとても綺麗だ。ほんのり赤い唇の口角が上がっていて、わたしもこんな風になれたらな、と思う。






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