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サイバーアタック  作者: 文月獅狼
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第八話 新種のmob?

 レアmobのくせして意外とあっさり倒せた。まぁあっさりと言っても14分ほど倒すのにかかったが。

 しかしサンドスコーピオンの尻尾が厄介だった。通常のサソリの尻尾は大体からだと同じ長さなのだが、サンドスコーピオンの尻尾は体の倍の長さがあった。その尻尾の先から発射する毒の対処がまた厄介だった。毒には麻痺効果があり、おまけに広範囲にとぶため、回避するのは難しかった。

大佑に毒がかかってしまったときはひやひやした。動かなくなったところをハサミと尻尾で攻撃してくる。間一髪のところで俺が大佑をぶっ飛ばしたから尻尾やハサミのダメージは食らわなかったが、俺は大佑のHpバーが少し減少するのを見た。それと同時に自分のHpバーが5分の2近く減少するのも見えた。

しかし攻撃パターンはそれだけだったため、その後は難なく倒すことができた。俺が2発、大佑が3発撃ち込んでサンドスコーピオンは動かなくなった。ラストアタックは大佑に譲った。というよりもいつの間にか倒されていた。

まあ、ファラマのラストアタック持ってったのは俺だからサンドスコーピオンのを持ってったことでチャラにしてくれるかもしれない。


「ドロップ品はたいしたことなかったな。」


 大佑が自分のアイテム欄を見ながら話しかけた。俺も自分のドロップ品を見るために例の六角形を腰から外し、アイテム欄を見る。ドロップ品には白い枠で囲まれているアイテム名の左側に赤い文字で「NEW」と書かれる。今回そう書かれているのは3つ。

 一つ目は「サンドスコーピオンの毒」。説明欄には「触れた者を麻痺させる毒。10秒間麻痺させる。単体で使うのも良いが爆弾などにするのも良い。」と書かれている。

 二つ目は「銃弾」。動物型モンスターを倒したからと言ってそれに関係するものをドロップするとは限らない。こんな感じで全く関係ないものをドロップすることだってあるのだ。ただmobからドロップした銃弾はどの銃の銃弾かが決められていないため、ハンドガンからロケランまでどれにでも使うことができる。説明欄にもそう書かれている。

 三つ目は「回復薬」。これもサンドスコーピオンとは関係ないものだな。きっと制作者が「モンスターを倒してHp減ってるだろうから使いたまえ」みたいな感じでドロップするようにしたんだろう。

こういう気づかいはうれしいけど、どうせならmobと関係のあるものをもっとドロップするようにしてほしかったな。今回なんてサンドスコーピオンと関係があったのは3つのうち1つだけだった。


「ろくなもんがなかったな。まあこの『サンドスコーピオンの毒』は何かに使えそうだから別にいいけど。『銃弾』や『回復薬』は正直今はいらねえな。」


 どうやら大佑のほうにも俺と同じアイテムがドロップしたらしい。


「ラストアタックお前が持ってったのにほかに何もないのか?」


「ああ。ったく。レアmobのくせしてドロップ品は全然レアじゃねえな。」


「10分近く戦ったなのにこれじゃあがっかりだな。」


「まったくだ。ところで今何時だ?」


 自分で見ないとまた卓也君に怒られるぞ。

 俺は腕時計を見た。


 …は?四時?

 と思ったが俺が見ていたのは長針だった。アナログだとなぜか時々短針と長針を間違えてしまう。俺はもしかして小学生で成長止まっちゃったのだろうか。


「今10時だな。上がるには早すぎるな。いったん戻って次の仕事を探すか。」


「そうだな。」


 そう言って俺らはゲートまで歩いた。




 

 ゲートの近くの町、いや村、いや市場というべきか?まで来た。昨日卓也が帰りに物資をそろえるために寄った店も見える。しかし今日は用がないのでスルーした。正しくはしようとした、だな。

 店の前を通り過ぎようとすると五人ほどの団体の客が店の前に行くのを見た。


「おい勇義。昨日買いだめしたのってあいつらじゃないのか?」


「俺もそう思った。」


 団体の客。昨日卓也が言っていた人達かもしれない。昨日買いだめしたのに今日また買うのか?いったい何があるってんだ。


「昨日のことを聞いてみるか。」


 大佑がそう言って団体に近づいて行った。俺も後ろから大佑の後を追う

 

「おいあんた達。」


 団体の客が一斉にこっちを向く。アバター自体はごついおじさんたちだが、実際の人の年齢は分からない。それどころか男なのかもわからない。男のアバターのほうがもともとの筋力が高い。そのために男を選ぶ人だっている。逆に女性のアバターを選ぶと素早さが高い。


「あんたらもしかして昨日買いだめしたっていう団体か?」


「誰だお前は。」


 団体の中のリーダーらしき男が至極まともな質問をしてきた。


「相手の名前を聞くときは自分からだぜ。小学校で習わなかったか?」


「人に話しかけるときは自分の名前を名乗る。幼稚園で習わなかったか?」


「なにぃ?」


「落ち着け大佑。彼の言うことは正しい。」


 俺は大佑を左手で制して後ろに下がらせた。


「うちの友人がすみません。俺はユウギと言います。こっちは友人のダイスケです。」


「俺はウォーカーだ。こいつはロック。こっちはロッキー。二人は兄弟だ。ロックが兄でロッキーが弟。そしてこっちはウェルズで最後がケイス。」


 ウォーカーは右側の兄弟を親指を立てて差しながら紹介し、次に左側の二人を紹介した。紹介された彼らの反応はそれぞれで、軽く手を振ってきたり握手するために手を差し出したりしてきた。悪い人たちではなさそうだ。


「それで一つ伺いたいのですが。」


「買いだめの話か?」


「そうです。昨日ポーションを大量に買っていったのはあなたたちですか?」


「そうだがなぜそれを知っている。」


「昨日俺の後輩がポーションを買いに来たらほとんどなくて。それで店長に訊いたらあなたたちが買っていったことを話したんです。」


「そうか。それは悪いことをしたな。」


 ウォーカーは頭を右手でポリポリとかきながら申し訳なさそうに言った。


「いえ、まったく買えなかったわけじゃないので大丈夫です。それに責めるつもりもありません。大佑のほうは知りませんが。」


「俺だって別に責めたりしねえよ。ゲームは楽しまねえとだからな。」


 大佑は横を向きながら言った。


「それでなぜそんなに買いだめしてるのかが気になりまして。」


「買いだめくらい珍しくないだろ?」


「確かに買いだめは珍しくありませんが昨日大量に買ったばかりなのに今日も買うっていうのは消費が速すぎるなと思いまして。」


「……。」


 黙り込んじゃったな。そんなに言いたくないのか?まさかアップデートか何かでレアmobが出現したのか?しかしそんな通知はなかったな。


 俺はいろいろ考えたが結論は出なかった。


まあそこまで知りたいわけじゃないからもういいか。


そう思い、「言いたくないなら大丈夫です」と言おうと口を開くと


「実は最近やばいやつが現れたんです。」


 とロックが言った。


「ロック。なぜ言ったんだ。」


 ウォーカーがロックのほうを向きがら言った。


「ウォーカー、別に言ってもいいじゃないか。それに俺らじゃああいつは倒せない。やられるたびにポーション買って攻撃してちゃ金が全部なくなっちまうよ。」


 ウォーカーはまた黙り込んでしまった。


「やばいやつってのはなんだ?」


 大佑が食いついた。俺も聞こうと思ったけどよくこの状況で聞けたな。


「あれはなんて言うべきだろう。」


 ロックがロッキーのほうを向いた。


「人間…なのか?」


 ロッキーが首をかしげながら言うと、今度はケイスが口を開けた。


「ロボットじゃないか?おそらくmobじゃないかな。いや、新種のmobかもしれない。」


「俺にはあれはプレイヤーに思えるんだが。」


 今度はウェルズが言った。


「だからあれはmobだってことで話は終わったじゃないか。」


 ロックがイラついたように言い返した。この話題でだいぶ話したらしいな。そしてウェルズは頑固者らしい。


「なんでプレイヤーだと思うんだあんたは?」


 大佑がウェルズに話しかけた。


「mobってたいてい動きがワンパターンだろ?でもあいつはパターンが決まってないんだ。まるでプレイヤーみたいに臨機応変に動きやがるんだ。」


「ふ~ん。」


 大佑は右手を顎に、左手を腰にあてて考えた。今度は俺が質問する番だ。


「逆にロックさんは何でそいつがmobだと思うんですか?」


「頭の上に出るアイコンの色がmobのそれと同じ色なんだよ。」


「なるほど。」


 ロックの説明はとても分かりやすく簡潔だ。ロックが言ったとおりプレイヤーのアイコンとmobのアイコンの色は違う。プレイヤーのアイコンの色は緑だ。対してmobのアイコンの色は赤だ。おそらく彼らが言ってるやつはアイコンが赤色なのだろう。

 俺はウェルズとロックの証言をもとに考えた。


「どう思う勇義。俺は何となくだが見当がついた気がする。」


「俺も何となくだが分かった気がする。」


「そうか。じゃあお前のほうから言ってくれ。」


 大佑は少し後ろに下がった。


「そいつはおそらくウイルスです。」


「なっ!?」


 5人は驚き、目を見開いて少し後ろに後ずさった。


「な、なんでウイルスなんだよ!?」


 今まで黙っていたウォーカーが唾を飛ばしながら訊いてきた。現実に近づけるのはいいがここまで再現しなくてもよくないか?


「ウイルスとmobのアイコンの色は似ているんです。ウイルスのアイコンは少し鈍い赤でmobのアイコンは鮮やかな赤なんです。一般人がウイルスを見て不安にならないように、そしてバスターが見たらわかるように似ているけど違う色になっています。慣れてくると見分けがつきますが一般人なら気づかないでしょう。」


「…あ、あんたなんでそんなこと知ってんだよ。チートバスターオタクかなんかか?」


 俺はチートバスターに配られる警察バッジのようなものを見せた。大佑も同じように見せる。


「俺はチートバスター第3部隊隊長、固有名『ユウギ』No.0127。」


「同じくチートバスター第3部隊副隊長、固有名『ダイスケ』No.0139。」


 5人は唖然とした様子でこっちを見ている。そりゃそうだ。さっきまで普通のプレイヤ―だと思っていたのが実はチートバスターだったなんて。俺が彼らの立場だったら同じように何も話せなくなるだろう。


「あなたたちが言っているやつはウイルスの可能性があります。俺たちをそいつのところまで案内していただけますか。お礼は致しますから。」


「…あ、ああ。分かった。こっちだ。」


 そう言ってウォーカーが動き出した。それに続いて残りの4人が後を追う。その後を俺と大佑がついていった。


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