プロローグ
2025年、ある事件が起きた。
ゲームの中に入りたいという人々の願いを背に、必死に研究する者がいた。名を冬月拓海といった。彼は何度失敗してもあきらめずに修正点を探し、修正しては試すという作業を繰り返していた。
何度も何度も失敗するうちに、他の研究員はあきらめかけていた。しかしそんなとき、奇跡が起きた。そう、ついに成功したのだ。
ゲームに入るための道具は高さ2メートル、横1.2メートルのゲートだ。
彼らは実験段階ではネズミに紐をつけてゲートを通らせていた。成功するまではネズミは行ったきりになってしまい、ひもも切れてしまっていた。
しかし成功したときはネズミがちゃんと帰ってきた。その様子を見た研究員たちは夢でも見ているのかと思い、仲間同士でほっぺたをつねりあったという。
ネズミがうまくいったから今度は猫を入れた。次は犬。その次はヤギという風に、少しずつ大型の動物にしていき、何度も実験をした。
そしてついに人体実験を開始した。
はじめは冬月本人がゲートをくぐった。彼が入っていたのはほんの10秒ほどだったが、彼はきっとこう思ったに違いない。ああ、やってよかったと。
次に10名の研究員がゲートをくぐり、無事に戻ってきた。皆喜んだが、冬月はあることに気づいた。ゲームというものは大人も遊ぶが主に子供が遊ぶものである。ならば子供も試さなければならないのではないかと。彼はそのことをほかの研究員たちに話した。そして皆は確かにそうだとうなずいた。明日にでも試してみようという話になった。しかし新たな疑問が皆の頭の中に浮かんだ。それは、誰で試すかだ。
何度も実験したからと言って、完全に安全というわけではない。そんな場所に子供を入れるのはとても気が引ける。
皆自分の子供を実験台にされるのではないかと思い黙り込んでしまった。その静寂を破ったのは冬月だった。
「皆さん、心配することはありません。おそらく皆さん自分の子供のことを考えたでしょう。私もそうです。ですが安心してください。皆さんのお子さんは実験台にしません。これはチーフである私の息子たちに行かせましょう。大丈夫です。私の息子は大きさで言えば先ほどの犬と同じです。」
次の日、冬月は息子の双子を連れてきた。
「煉を連れて行こうとしたら啓も行くと言い出しまして。」
彼は笑いながらそう言った。
実験はすぐに始まった。先に煉が入り、次に啓が入った。そして事件は起こった。
よりにもよってこんな時にウイルスが入ってきたのだ。そして制御不能となってしまった。煉と啓が中に入った状態でゲートは閉じそうになった。閉まりきるまで残り数十秒というときに冬月は二人を連れ戻そうとして中に入った。中で何があったかは分からないが、彼らが帰ってくることはなかった。
こんにちは。文月獅狼です。
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