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・ わたしはかわいそうな女の子

少し前までわたしは最高に幸せだった。

どうしてこんなことになっているんだろう。


次期国王だという王子様、マイヘルに「好きだ」って言われたの。とってもかっこよくて、優しくて、ちょっといじっぱりで、可愛くて素敵なわたしの王子様。

好きで好きでドキドキして、幸せで、いっぱいいっぱい愛してるって言ってくれた。

欲しいものならなんでもくれたし、わたしをいじめる人たちからも守ってくれた。


マイヘルの側近候補だっていう人たちもかっこよくって、マイヘルがいない時に助けてくれたわ。

みんな大好きで、みんなにも好かれてて、いじわるな人もいるけど、みんながいるからなにも怖くない。幸せだった。


でも一つだけ不満だったのが、わたしはマイヘルとしか結婚しないのに、マイヘルにはわたしじゃない婚約者がいること……。

でも、マイヘルはいじわるな婚約者は嫌だって言って婚約破棄して、わたしとだけ結婚するって決めてくれたわ。嬉しかった。こんなに愛されてるんだって、すっごくすっごく嬉しかった。

マイヘルのお妃さまになるには、生まれた男爵家じゃダメらしくって、トウレー公爵家に入ったわ。

そこで一生懸命、マイヘルのお妃さまにふさわしくなるようにって色んなこと勉強した。


学園にいた時は毎日会えたマイヘルには、今はたまにしか会えないのが不満。

毎日会いに来てくれればいいのに……。

さみしくて、ちょっと好きって気持ちが薄れてきちゃってたんだと思う。


トウレー公爵家はお隣のイーハー王国と仲が良いらしくって、わたしはイーハーの王様に会うことになった。

心細かったからマイヘルに一緒に来て欲しかったんだけど、王子だからそんな簡単に外国には行けないって断られちゃった。がっかりしながら行ったそこで、私は本当の運命の人に出会ったの。


カーグス。

強引で、わがままだけど優しくって、わたしを少しも離そうとしない人。

面白いやつだな。って言って、楽しそうにわたしと話をする人。

惹かれるのに時間はかからなかった。

だってあんなにかっこいいんだもん。マイヘルもかっこいいけど、カーグスのが素敵。


カーグスは戦争になるのも恐れないって。

わたしと今すぐ結婚しようって言ってくれた。キュンってしたわ。もうマイヘルなんてどうでもいいって思った。わたしもカーグスがいい。ごめんねマイヘル。でももう好きじゃないんだもの、好きじゃないのに結婚する方がお互い不幸だわ。

イーハーに連れてきてくれたトウレー公爵さまに手紙を渡した。マイヘルが傷つかないように心を込めたお別れの手紙。

トウレー公爵さまが「毒婦が」って言ったけど、どくふってなんだろう。汚い言葉なんだろうなっていうことは分かって困っていたら、カーグスが来てくれて、公爵さまを追い出してくれた。


「どくふってなに?」

「ミレーナと真逆な女のことだ」

「じゃあどういう意味で言ったんだろう……?」

「誤解しているんだろう。説明しておいてやる」

「そっか。ありがとうカーグス」

()いやつめ」


そう言って愛しそうに頭を撫でられた。

すぐ結婚と言ったけど、準備とか色々あって本当にすぐとはならなかった。でも毎日カーグスと一緒にいて、イチャイチャラブラブ幸せな生活をしていたら、本当にマイヘルが戦争をしかけてきた。

なんで戦争なんてするの。そんなことしたってわたしの心はカーグスのものなのに。


カーグスに戦場に連れて行ってもらった。

わたしがマイヘルを直接振ればいいんだって思ったの。

かわいそうだけど、諦めさせてあげるのが優しさでしょう?


戦争はカーグスのイーハーのが有利だったから、安全だからってカーグスとキスしたりしてた。

ふふ、そろそろいいだろって、色っぽいカーグスに襲われそうになってたところにマイヘルが奇襲(きしゅう)をかけてきたからびっくりした。

そこでわたしはマイヘルに謝って、許してもらった。


カーグスもわたしさえいればいいって言って、戦争はそれで終わり。

お手柄だなってカーグスが褒めてくれた。


それからは、すぐカーグスと結婚して。

カーグスは元気な人だから、今までたくさんいたお妃さまを、元王妃さまだけ残して臣下に下げ渡してくれた。

もうわたしだけいればいいんだって。

元王妃さまは大国の元お姫様だから、第二妃にしないといけないから許してくれって言われた。もう絶対に抱かないって約束して、それならってわたしも受け入れたの。


しばらくしてマイヘルが新しい婚約者を作ったって聞いた。年上の、気が強いと有名な人だって。

わたしのことをいじめていた前の婚約者じゃないのはちょっと嬉しかった。


幸せだった。


でもカーグスが急死して、全てが消えてしまった。


目をつぶされた。

痛い。見えない。怖い。

喉もつぶされた。

痛い。ひどい。

食事だけできる程度に回復させられて、声は出ない。

カーグスが、かわいいほっぺと言ってくれた両頬は、何かを刺されてからブクブクふくれた。強く触ると痛い。わたしどんな顔になっているんだろう。くすくす笑う人の声がわたしの外見をバカにしてのものに思えてしまってつらい。

わたしが悪いんだってみんな言うけど、でもわたし、人を好きになっただけよ。両想いになっただけなのに。それを悪いと言うなんてひどい。


みんなだって人を好きになるじゃない。

婚約者から、お妃から奪ったっていうけど、でもそれはカーグスとマイヘルが勝手にしたことで、わたしは悪くない。

わたしはなにもしてないのよ。


わたしはいじめだってしていないし、人に優しくしただけだし、好きな人に好きって言っただけ。

マイヘルだけには浮気しちゃってごめんねって思うけど、でも他の人を好きになっちゃったならしょうがないじゃない。

恋って落ちるものなんだよ。好きになっちゃったらどうしようもないでしょう?


わたしは悪いことをしようとしたわけじゃないのに、悪いことをしたことになっちゃう。


今はいじわるな人ばかりの場所に放り込まれて。なにも見えない手探りの体で、なのに全然そのことに配慮してくれないひどい人たちに毎日毎日こき使われている。前はわたしが命令する人だったのに。

手が痛い。見えないけど、水で痛んで切れてるんじゃないかな。

寝るところも寒い。毛布がもっと欲しい。

でも言いはしないわ。だってそんなのワガママじゃない。わたしはいい子でいたいの。


カーグスやマイヘルといたころは幸せだったなぁ。

二人ともいっぱいいっぱい愛してくれた。優しくて、ちょっと強引で、ふふ。

なのにどうして今はいないの?

どうして死んでしまったの?

マイヘルも、迎えに来てくれたらまた好きになれるのに。

幸せにしてくれるって言ったのに。二人とも、嘘つき……。


カーグスの子どもさえできていたらよかった。

心の支えになったし、きっと幸せだったのに。


どうしてこんなことになってしまったんだろう。

わたしはただ愛し合っただけなのに。

恋することがいけないの?

愛することがいけないの?

正義と愛なら愛をとってはいけないの?

愛をとったら、どうしてこうならないといけないの。

どうして両方はとれないの。


きっと、両方とれる未来だってあるわ。

いつかまた素敵な人に愛されて、私は幸せになるわ。

だってわたしは王族二人に見初められた女の子なんだから。


二人とも私の性格をかわいいって言ってくれた。面白い、いい子だって。

だから見た目なんて関係ない。きっとまた愛される。

今の仕事はつらいけど、がんばる。


わたしの状態はひどいものだしかわいそうだから、いつか優しい人が助けてくれるわ。だってわたしならそうするもの。


がんばるけど、くすくすと笑う声が聞こえて、つらくなったらこっそり泣くんだ。

今はそんなわたしを見てまた笑ったりバカにしたりする人しかいないけど。

そのうちきっと誰か優しい人が気づいて助けてくれる。

でも助けられない今はつらい。

早く誰か気づいて。






*****

そこは外部から閉ざされ

厳しい監視下で罪人に仕事をさせる場所。

〔続編シナリオ〕


前作でのマイヘル王子編ハッピーエンドの続きから始まる。

妃教育が大変な日々。王子と過ごす時間がもてなくてすれ違い気味。

そんななか、隣国イーハーの王城に登城するという話がもちあがる。


シナリオ分岐の選択肢


「婚約者なのだから、王子の都合がつくときに一緒に行こう」

→マイヘル続編ストーリー(結婚するまで)


「いい気晴らしになるし、王子の都合がつくのはいつになるか分からないし一人で行こう」

→イーハー王国編ストーリー


イーハー王国内での分岐

カーグス国王との謁見後に向かう場所で攻略対象が決まる。

(シナリオが交差しないのでハーレムエンドはない)


マイヘル続編ハッピーエンドでは

ラブラブイベントをいろいろこなした後なので幸せに結婚し、王位継承の後は王妃さまになりました。という文字だけでその後が語られるが、現実では評判の悪さと王妃としての才覚のなさによりお飾りの王妃となる。

しかし賢王が当たり前でないように優秀な王妃が当たり前というわけでもないので、目立ったところはないが普通の家庭を築いていける。

王の多忙さと色んなストレスがあるので、穏やかで幸せなとは言えないが、苦労があっても幸せだと思う心がもてれば幸せになれるだろう。


カーグス以外のイーハー王国攻略キャラルートの場合は、円満にマイヘルと婚約破棄するハッピーエンドにたどり着けても

捨てた婚約者が次代の王なうえに、その王も元々は略奪だったというネックにより、攻略キャラが優秀でも仕事で要職にはつけず、苦労する。

やはりこちらも、苦労しても幸せだと思える心がもてるかどうかが幸せの分かれ道。


バッドエンドではマイヘルが放った刺客に攻略キャラが殺され、ヒロインも(マイヘルの指示ではないが)刺客に殺される。

ノーマルエンドでは、民間で成功しそうになった攻略キャラを見つけた刺客に攻略キャラが大怪我を負わされたり、ヒロインだけ奪還されて離れ離れになったりする。その場合ヒロインはヤンデレ化したマイヘルに監禁されたり、宰相の指示で罪人の刻印を押された上で遠い異国に追いやられたりする。


カーグス国王ルートはハッピーの他にノーマル、バッドとあるが

シナリオではハッピーエンドである王妃エンドが、その後は最悪のルート。

ハッピー、ノーマル、バッドがくるっと逆転する。


ノーマルでは後宮に入れられ第6妃となるが、寵愛され、寵妃として人々にかしづかれる。

エンディングでは軽く流されるが、他の妃からの嫌がらせなどは終わらない。子供はできても殺される。

なお本編となったハッピーエンドでは子ができない薬を知らずに飲まされていた。

ノーマルで飲まされていないのは、カーグスを殺す予定がないため、薬を飲ませていると察せられる可能性が高いことと、王位継承順位は変動しないとカーグスが言っていたため。


バッドエンドは第6妃となるまでは同じだが、寵妃とはならず、普通に妃の一人となる。なおマイヘルには「君がそんな人だったなんて」と自分棚上げなセリフを言われてお別れになる。

その後も愛は得られないが、妃仲間とそれなりに仲良く、たまに嫌味を言い合う仲でまぁまぁ楽しく生きられる。寵愛を得ようと画策するとノーマルエンドとの中間な感じに。



イーハー王国でキャラルートを選んでからもイベント無視して適当に過ごしていると、強制的にマイヘルバッドエンドになる。


マイヘルバッドエンドではすれ違いばかりのまま、互いに歩み寄ることをしない冷めきった夫婦になり、マイヘルは第二妃をめとる。

マイヘルノーマルエンドは、ルート攻略時にときめきイベントをいくつか取り落としているとたどり着く。前作ハッピーエンドのときほどラブラブではないものの結婚する。その後はハッピーエンドと大した違いはない。




〔乙女ゲームのシナリオはこわい〕




追記

ヒロインがかわいそうすぎるとの声がありましたので当番外編の解説


彼女の問題点は

浮気することを一切悪いと思っていない(かわいそうなことしちゃった、てへ。くらいには悪いと思っているが)のでこれからもチャンスがあれば、浮気の自覚すらなくガンガン浮気する点。


他人の迷惑を一切考えず、自分の都合よくすべていくに決まっていると考えている自己中心さ。

(王妃から第2妃に落とされ愛されることも一切なくなるという大国の姫さまの気持ちを考えたら、まともに優しい人なら身を引くし、せめて王妃の座はそのままにとか言う)


自分を優しい人だと思っているけれども、表面上の優しいパフォーマンスが得意で悦に入っているのであって、本当に相手の気持ちなんて考えてはいない。(戦場でほかの人が死んでいるときにイチャイチャしか考えていないことからもにじみ出ている)


王妃になること、王族に好かれることに喜びを感じていて、けっこう野心が強いがそれにともなう責任は一切考えていない。


イケメンで国王という野心ある女性からしたら垂涎もののいい男を、元の妻たちから奪ったなら、王妃のみならず元妃たちからの敵意はいかほどのものか。野心ある女性の敵意の強さ、性格悪い人がいた場合のやばさを甘く見ている。(本編主人公だけが被害にあった人の場合、甘いので仕返しもここまでにはならなかった)


がゆえの当然の帰結であったと書いたつもりでしたが、ヒロイン自身がそれに気づいていないがために分かりにくかったかと思い、邪道ながら追記いたしました。

ヒロインを癒し系だと思った方は詐欺にお気をつけください。

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