『絶望と一筋の希望』
ずっと考え事をしていて周りが何も見えていなかったが、ふと顔をあげて見てみると、そこには短い金髪の女の子がいた。僕の顔を覗き込むようにして首を傾げている。
どうやら近くでずっと僕のことを見ていたらしい。膝に手をついて、まじまじと見つめられるのは少し恥ずかしいだけど……。
2人見つめ合いながら数秒の時間が過ぎ、やっと少女が口を開いた。
「なにかお困りごとですか?さっきからずっとため息をついていましたし。それに見ない服装ですが、どうかしましたか?」
ああ、いい人だ。こんな心配して声をかけてくれるなんて。日本ですらそんな人は少ない。
このご時世、変な人には誰も話しかけないし、そもそも近づいてこないし近づかない。
だから「困りごとですか?」なんて聞くことも、聞かれることもない。
ん? 聞かれる? 、、、、あれ??
なんかおかしくないか? 今喋ったよな、彼女!
確かに喋ったよ! 日本語を!!
あまりの事に驚き、ポカンとしている僕をよそに少女は続けた。
「私は近くの宿屋の者です。何かあったんですか? もしよければ話しだけでも聞か……」
「あなたは……あなたは日本語が分かるんですか?」
本当に優しさで助けようとしてくれている彼女には悪いけど、話を遮って疑問をぶつける。
「えっと、日本語……ですか? なんて言葉かとか、どこの言葉かとかは分からないですけど、通訳の魔法がかかったマジックアイテムをつけているのでお話しはできますよ!」
「ぇ……⁉︎」
『魔法』
彼女の口から出たその単語は、僕が今まで抱えていた不安と、疑問に喜び、その全てを打ち消してしまう程大きかった。僕の脳の全機能はこの『魔法』というたった一言でフリーズしてしまう。
そして、すぐに頭の中で1人討論会が始まるのだった。
この世界じゃ魔法もありなの?
いやでもあれは架空の話じゃなかったのか?
僕は十分現実離れした経験してるよな?
この世界にはドラゴンもいるくらいだし……。
もうなんでもありなんじゃない?
結局討論会の結論は、1つの質問となって僕の口から放たれた。
「魔法が……あるんですか? 魔法ってあの魔法ですよね? 火を出したり雷落としたり、傷を癒したりする」
「えっと……魔法を知らないんですか?
あ、いえ、、魔法、ありますよ。火を出したり雷を落としたり、傷を癒したりする、その魔法」
これは驚きだ……なんて言ってももうしょうがないかな。なんせここは異世界なんだから。もうこれは夢じゃない! 夢な筈がない! と言うか夢なら覚めなくていい!!
こんな絶望的な状況の中、魔法と言う言葉が僕にそう思わせる。なんせ異世界と同等以上に存在しないと思っていた魔法が存在するのだから。
もしも実現するのなら、なんてよく考えてたっけな。
そしてそれは実現した。なんの間違いでもなく、魔法は存在する。だって彼女と実際に話せているのだから。
僕の夢が全て叶うかもしれない。異世界に行って、魔法を使って、異世界の果てまで旅をするという1番大きな夢だ。
だからこそ余計にこう思う。
魔法を使ってみたい、絶対使えるようになりたい!
だけど同時に疑問が芽生えるのも確かだった。
誰でも使えるものなのかな? 僕に魔力なんてものがあるのかな? そもそも僕はこの世界の人間じゃないから体の作りとか違うんじゃないかな?
俄然やる気が出てきたぞ!
こうなったら全部やってやる! ここで、この世界で生き延びて夢を叶えるんだ!
そう意思を固めて、僕は立ち上がる。
まだまだこの世界には夢と希望がありそうだ。
それにしても、なんだかさっきからずっとアニメの世界にいるみたいだ。アニメや漫画で起こることがそのまま起こってる気がする。……最初はちょっと酷かったけどね。
いい感じに進めば、最強の戦士になれたり……。
ま、そんなことないか。
少しは夢見たいものだけど、その存在が分かっただけでも今は満足かな。
なんにせよスタート地点には立てそうだし。
絶望していた中で、親切な人と魔法という存在に巡り合えたこと。その2つの出来事に、僕は感謝と感動でいっぱいだった。
次回もお楽しみ!