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異世界の常識破壊者【オーバーブレイカー】  作者: しまらぎ
一章 〜異世界と旅立ち〜
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『重なる問題』

 

 商店街を歩いている人達を見ていて、1つ気がついたことがある。みんな何か喋っている筈なのだが、なにを喋っているのかまったく分からない。

 気分は……そうだな、海外に一人で取り残された感じかな。でもそれよりひどいかも……。

 道行く人やその他いろいろな種族が何を話しているのか何一つ分からない。発音すら聞き取れないのだ。知っている言語であればまだいいんだけど……全く分からん。と言うか知ってても何も良くないよな?


 異世界なんだから当たり前、なんて言われたらそれで終わりだけどさ……。僕だって最初は英語とか何かかなとか、それぞれの種族で違う言葉があるんだろうな、とか考えてたよ?きっとこの世界の言葉なんだって。

 でもよく考えると、どこの言葉だとか、何を喋っているのかだとか、そういう問題じゃないんだよな。

 言葉がなにも通じないって言うことが問題だ。

 僕と話せる人、僕の言葉が通じる人、それがこの世界にはいないのではなかろうか。

 断言しよう。少なくとも僕の周りにはそんな人はいない!

 今の僕に必要なこと。それは誰かの助けだ。

 だけどこれじゃあその助けさえ求められない。


 終わった……。

 諦めることは良いことじゃない。今までの経験でそれは痛いほど分かっている。でもダメなものはダメだし、出来ないことはどんなにやっても出来ない。根本を変えなきゃ何も変化は起きないんだ。結局今はそれも不可能なんだよな。


 アニメの主人公だったらこういう時は言葉の通じる世界に行くとか、なんかの衝撃で話せちゃうとかあるんだけどな。ここは3次元だ。現実を見なきゃいけない。

 お金もない道具もない、言葉も分からない。

 おまけによくよく見てみれば、お店の看板の文字も見たことがない。どこまでも地球とは違う。

 僕の知識だけじゃあどうにもならないんだ。


「はぁぁ……」


 大きなため息に自分の無力さを実感する。


『人間やればなんでも出来る』

『やる事、挑戦すること、挑戦し続けること、それが大切だ』

『努力は結果を裏切らない』


 そんな言葉は幻想だ。

 それを成し遂げるためのスタート地点に誰もが立てる訳じゃない。

 自分を変えることや努力することの大切さはよく知っているつもりだけど、今の僕に出来る事がない事もよく分かってる。

 僕の目的はここで生きる術を探して身につけること。それが僕のスタート地点。身につけて本当に生き延びることが出来たらその時をゴールと言えるだろう。

 でも今の立ち位置はどこだろうか?

 これが運動会の競争、かけっこだとすれば、僕は風邪をひいていて家にいる。

 そのかけっこのスタートに僕は立てていない。いや、立たせてもらえない。これと同じ状況だ。

 生き延びる術を探す術を探している。

 そしてその術はない。努力すれば、万が一くらいでなら、いつか言語を理解できるかもしれない。

 だけど、それが出来るのは生命があってのこと。僕にそれだけの時間は残っていない。

 この得体の知れない世界では、生き延びるために何かをやる事、挑戦すること、挑戦し続けること、努力すること、その全てが今の僕には不可能なのだ。

 このままいけばせいぜい生きられて3日ってとこだろう。


「はあぁぁぁ…………」


 さっきよりよりも大きなため息が漏れる。

 ため息ばかりついていると幸せが逃げてく、なんてよく言われてたっけなぁ。だけど僕は違うと思う。

 幸せが逃げてくからため息が出てくるんだ。

 余計に虚しくなってきた……。


 僕は道の端っこに縮こまって、何度もため息をついて下を向いていた。

次回もお楽しみ!

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