『ラストデイズ 2』
あれからというもの、結局僕はリッタとゆぅには話しをせずに、聖域への道を歩いていた。
ルナは君がしたいようにすると良いって言ってくれた。いつか耐えられなくなった時にでも話せばいいと。
そもそも、研究者のルナにとっては重要な話だったけど、後の二人にとってそんなことはどうでもいいらしい。
まぁ何はともあれ彼女のおかげでいろいろと吹っ切る事が出来た。自分の良き理解者として、ずっと側にいてほしいと心から願う。
「ありがとう、ルナ。君のおかげで随分と楽になったよ」
「ボクはせめて愛人に昇格できるように君の為に動いただけだよ」
「ハハ、愛人ね、愛人……」
「ホントなら君の一番になりたいけどね」
ルナはそっと耳元で囁いた。いつもふざけている彼女が急にそんな事を言うから、僕は耳まで真っ赤になってしまった。
実は昨日からルナのアピールが強くなってきている。彼女も彼女で初めて自分の想いを真面目に伝えたから、今まで抑えていたものが吹っ切れたらしい。
嬉しい反面対応に困るんだよな……。
人から好意を向けられた事なんて何もない僕にとって、ルナのアピールは、核爆弾のようなものだ。破壊力が強すぎる。
真っ赤な顔をそっぽに向けて、彼女から視線を外して言う。
「頼むからそういうのはよしてくれ。似たような子があと二人もいるんだ。ルナまでそっち側に行っちゃったらもう終わりだよ……」
「ボクとも一緒に寝てくれるんならかんがえようかな」
「……終わりだね。うん、終わりだ」
「じょ、冗談って訳でもないけど、半分くらいは冗談だからー!」
リッタとゆぅの目の前で、堂々とイチャイチャしようとしてくるのが、ルナの一番困るところだ。
今日はずっとそんなもんだから、僕の後ろでリッタがむくれていた。
「もう! なんで心葉とルナの距離がそんなに縮まってるの!」
「愛人特権だよ」
「じゃあ私も愛人になる!」
「ちょ、何言って……」
「そしたらボクは正妻に昇格だね!」
うーん……途中に阿保の子がいたような……。会話全体が阿保かもな。
「ゆぅはこういうのには参加しないんだね」
意外にもゆぅは会話に参加していなかった。不思議に思って聞いてみる。
「当然なのです! コノハとわたしはパートナーなのですから。正妻がいようと愛人がいようと関係ありません。何があってもコノハと一緒なのです」
「なんだか複雑だけど、ありがとう」
なんだかんだ言ってゆぅだって同じなんだと、彼女の言葉で実感する。
そうして、ゆぅが僕の右腕に抱きつき、リッタがそれを真似して両腕を塞がれる。おまけに後ろからはルナだ。
嬉しいような違うような……複雑な気持ちで聖域までの道を歩き続けるのだった。




