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異世界の常識破壊者【オーバーブレイカー】  作者: しまらぎ
四章 〜聖龍と最後で最初の日々〜
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『ラストデイズ 1』

 フレイジアを出発して一日目、真夏の日差しが僕らの元気を奪っていた。


「暑い暑い暑い暑い暑い暑いー‼︎」

「余計に暑くなるからやめてくれ」

「もう身体が溶けそうなのです……」

「流石は灼熱地獄の異名を持つだけあるね。この暑さは尋常じゃないよ」


 この通り、ずっと暑さと戦っている。フレイジア付近の森を超えると平原が続き、雲一つない晴天のため、日差しを遮るものは何もなかった。

 風も吹かない平原は、まるでエアコンの無い熱帯夜のようだ。無駄に湿気が多い。


 平原なんだけどな……。湿気のたまる要素がどこにもないのに……。

 自然は時に冷酷だと、この世界でも強く知らされる。気候変動の激しいフレイジア地方は、時に寒く時に暑い、正に地獄だった。


 そんな僕の心に希望を与えてくれたのは、ルナの言葉だった。


「大丈夫だよ! あと三十分も歩けば小さな町に着く。今日は沢山歩いたし、そこで一晩休むとしようか」

「僕は大賛成です……」

「私も私も!」

「お願いします」


 なんだか一人だけ清々しいのがいるな……。

 さっきまで下を向いて暑いと連呼していたリッタの汗が一瞬で吹き飛び、ズバッと身体を起こして賛同するのだった。


 僕にも元気があればと思うけど、簡単にはいかないものだ。目線が一向に上がらない。ほぼ無心状態にあった。



 その後は会話も特になく……約一名は暑いをまた連呼していたが、なんとか『イラム』の町に着くことができた。




 宿に荷物を置いて、汗を流すべくお風呂に入る。冷たい水が頭を冷やして気持ちいい。灼熱用の水風呂と、極寒用の温泉があり、僕は水風呂の小さな滝にうたれながら浸かっていた。


「はぁ……。聖龍に会ったらどうなるんだろ」


 身体に染み渡る冷水の中で、僕は一人考えていた。


 もしも聖龍が異世界転移の方法を知っていたら、その時僕はどうするのだろうか。

 そもそも旅の目的が聖龍に会うこと、その後はどうするのか。考えることがいろいろある。


 顔を全部冷水につけて、一度頭を冷やしてみる。

 こんなこと考えても意味ないよな! 行き当たりばったりで行けばいいか!


「うっし! 上がるか」


 ふかふかのタオルで身体を拭いて、ちょっとした風魔法で髪を乾かす。

 こうやって過ごしていると、向こうの世界と大層変わりはない。


 のれんをくぐってロビーに向かうと、浴衣のような服を着ている三人が僕を待っていた。

 リッタは爆睡、ゆぅはウトウト、ルナはしっかりと起きている。


「随分と長風呂だね。何か考える事でもあったのかい?」

「まあいろいろとね」


 と言ったところでゆぅがすーっと寝てしまった。起こすのも可哀想だし、もう少し寝かせてあげよう。


「丁度良い、二人も寝てるし、君と話しをしたいと思うんだけど」

「うん、眼が覚めるまで話してよっか」


 ルナはゆぅの頭を撫でながら、僕にそう言った。

 小さい子が小さい子の頭を撫でるって、なんだか微笑ましい。


 一呼吸置いて、ルナは話しを始める。


「心葉、君はボク達に何か隠し事があるんじゃないのかい? 言わなきゃいけないことが」


 隠し事ってなんだ? そんなのした覚えはないけどな……。

 この時はまだそう思っていたが、ルナの一言が僕の心に突き刺さった。


「例えばさ、君がこの世界の人間じゃないとか」


 え……⁉︎  声にならない驚きが、心の中に響き渡る。

 なんとルナが口にしたのは、僕がずっと言おうか悩んでいた、異世界転移の事だった。

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