『怪しいお店と三つの指輪』
二人の服、リッタは自分でズボンも選んで、計三着を購入し、僕らは魔法具店へと向かった。どっかのオカルトショップのような店構えだ。壺や髑髏が沢山置いてある。それも店先に。
「凄い雰囲気だね……」
「本当に魔法具屋さんなのでしょうか?」
どうしても入るのを躊躇ってしまう。黒レンガ造りの建物は薄暗く、多少の胡散臭さを感じる。
占いとかやってそうだな。蝋燭とか立ててさ、カード並べて、ハッとか言って占ってそう。
ドアとカーテンに遮られて中が見えないためか、あり得ない想像が僕の頭の中を駆け巡っていた。
「ま、入ってみれば意外と明るいかもよ?」
「それもそうですね、行ってみましょう」
「ええ……怖いよぅ……」
怖がるリッタが僕の服を掴む。後ろに隠れてもなにも変わらないと思うんだけど……。それにまだ大通りと言えば大通りな訳で、彼女の行動は周りの視線を集めていた。
「さ、最初から分かってたよ? 分かってて怖いふりしてたんだもん!」
「はいはい分かった分かったって」
「リッタは怖がりさんなのです!」
「だから違うって!」
なんとも微笑ましい。小学生の喧嘩かな? 強がるリッタも可愛い。笑いながら二人を見ていた。
店内はというと、案外明るく日本のコンビニと同じように、棚が数個並んでるだけだった。そこに怖い要素は何一つとしてない。
と、僕らが騒いでいたからか、ただ店内にお客さんがいないからなのか、レジの方から店員が向かってきた。
「今日は何をお探しでしょうか?」
そう言う店員は、これまた意外な白髪のおじいちゃんだ。
「ワシはこの店の店主のグレバーじゃ。ワシの作った魔法具が並べてあるだけじゃが、面白いものも沢山ある。いろいろ見ていくと良いじゃろ。お前さんたちは冒険者かい?」
「はい、僕は心葉、三波心葉です」
「ほう、心葉か。ずいぶんと珍しい名前じゃのぅ」
「よく言われます。遠い国から来たものですから」
「そうかそうか。こんな所で話していても仕方がないからの。閑古鳥の鳴いている店じゃが、どうか見て行ってくれ」
おっとりとしたおじいちゃんだ。僕は結構おじいちゃん子だったから親近感がわく。それとどことなく神さまに似ている。杖をついているところと話し方かな。
リッタとゆぅも自己紹介をして、バラバラに店内を見てまわる。
ペンダントやらリストバンドやら、身につけて使う類いのものが沢山置いてある。そして店の一番奥の方には、僕が探していた魔法服も並んでいた。
「火属性耐性に誘惑耐性、魔法強化か」
デザインなんてのは気にしないからいいんだけど、どの効果が一番良いのか分からないんだよな。属性耐性がある服を着ててもそこまで危険な事はしないだろうし、魔法強化もなぁ……爆発の威力が増すと考えると……。ここは素早さをあげるものがいいかな。いやまてよ? 誘惑耐性って良くないか? 僕は毎晩二人に魘されてるし、正直耐えられない所もある。……これにしよう。
とりあえず服はこれで決まりだ。あとは小道具だよね。
魔法具が沢山並んでいる棚を物色する。
いろいろな魔法具がある中で、目に留まったものがあった。三つ並んで置かれている指輪だ。離れていてもお互いの生存確認が出来る効果がある。元気なら青で、体調が悪いと黄色、死にそうなら赤といった具合で色で示してくれる。
意思疎通が出来る訳じゃないけど、これから先、何が起こるかなんて分からない。もしも離ればなれになってしまったら……なんて考えたらこの指輪みたいな力が必要になるかもしれない。
僕なりに魔法を付け加えて、あとでプレゼントしよう。
そう決めて、指輪と服を持ってお会計を済ませるのだった。
リッタたちも面白い魔法具を見つけては僕のところへ持ってきて、その魔法具の面白さを教えてくれた。そのおかげで買うものがいくつか増えたけど、指輪の誤魔化しにもなるし、欲しいと言われた物は全て買ってしまった。
ちょっと甘やかしすぎかな? 悪い事でもないし、まぁいいか。
「いろいろ買った気がするけど、これって何に使うの?」
「秘密です!」
そんな取りとめもない会話をしながら宿へと歩く。もともと出発した時間が遅かったのもあって、空が少し赤みを帯びてきた。僕もお腹が減り始める。
もう少し急いで帰ろうかな。
少しだけ歩くペースを上げて、僕らは宿に戻ったのだった。
お読みいただきありがとうございます!
突然ですが、次の話しから第四章が始まります。物語は一応四章で終わる予定です。又、一応と言うのは、続きや後日談のようなものがちょこっとずつでも書ければいいと考えていることにあります。
長いようで短い物語になりますが、第四章もよろしくお願いします。




