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異世界の常識破壊者【オーバーブレイカー】  作者: しまらぎ
三章 〜王都とクエストギルド〜
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『不安が招いた危険』

 何故だ、何故なんだ?

 そんな疑問を抱く僕は、またアクアウルフの群れのど真ん中にいた。さっきの爆発で大方逃げたと思っていたのに……このオオカミ達は実に好戦的だな。


「リッタ、この任務って何匹狩ったらお終いだっけ?」

「えっと……確か五十匹だったような気がするよ」

「今何匹目だろう。さっきの爆発は跡形もなく消しちゃったからなぁ」

「三十二匹なのです! 確認したのです!」

「あと十八匹か。ここにいるのがだいたい二十匹だから……これで終わりだね」


 三人で背中を合わせ、お互いの背を守りながら武器を構える。この任務は指定数回収できなきゃ終われない。

 どうにか敵の身体が残るようにしないとだな。なるべく傷もつけたくないけど、それはもうしょうがないからいいにしよう。


「コノハ、どんどん数が増えて来るのです!」

「えぇ……?」

「うわ! ほんとだ! なんだかみんな怒ってるみたい?」


 リッタの言う通りだ。周り全ての方角からグルルルと唸るような鳴き声が聞こえる。さっきの爆発音で警戒心がより高まったのかもしれない。青や水色の艶やかな毛並みがギラギラと太陽の光を反射しながら逆立っている。


「僕が魔法で突破口を開ける! 君らは後ろの敵を出来るだけ片付けて!」


 僕が使える魔法がだんだん限られているし、次はどんな魔法を使うか、なんて考えてたのが全くの無意味となってしまった。

 必要なのは多数の敵を効率よく倒す魔法。それも敵をなるべく傷つけずにだ。いくら調べ物をして新しい魔法案を作って来たとは言え、厨二紛いの少年の考える魔法なんてしれている。

 擬音にしてみれば、バーンだのドッカーンだの、激しくて強い、その二つに限る。無論僕の考えてきた魔法もそんな感じで、小学生の考える魔法に髭が生えたようなものだった。



「燃えちゃえ!『フレイル』!」

「凍てつけ空気よ、『アイスストーム』!」


 僕がそう悩んでいる間にも、リッタとゆぅはオオカミと戦っている。一瞬、水の相手に火を使うかな、とか、燃えちゃダメなんだけどな、なんて思ってしまった事を反省しながらさらに考えた。

 目の前の敵は待ってくれない。逆立った体毛が針地獄のようにも見える。首元は淡く光り、大小様々な魔法陣が僕をロックオンしている。


「僕も迷ってなんかいられないよな! 『ウインドスラッシュ』!」


 ラナリオンに魔法を込めて、大きく横に薙ぎ払うように斬り込む。剣は風を纏い、剣先からは斬撃が飛び出し、正面五体のアクアウルフの前足に直撃する。が、後ろ十体の魔法は未だ健在だった。同時に十個もの水弾が僕を襲う。


「ハッ、ハア、ハアアアアア、アァ!」


 大きな声で自分に気合いを入れながら、一つ一つ切り落とす。『順応』の特性は伊達じゃない。対して使ったこともない剣なのに、何故か体は使い方を知っているようだ。レッドウルフやブレイズウルフの時と同じ、身体が勝手に動いていた。


 だが、僕の心がついていけなかった。小さな不安は大きな不安へ。大きな不安はやがて精神を不安定にさせる。

 自分の力に自信がない訳じゃない。自分が剣を自在に振り回すことが信じられなかった。

 一瞬ブレた剣筋は、水弾を捉えることが出来ず、水弾が僕に直撃する。弾という言葉だけあって、威力も結構あった。抑えきれなかった三つの水弾が連続して僕を襲ってくる。躱すこともままならなかった僕は、全ての弾をその身に受けて後方へと吹っ飛んだ。


「コノハ!」

「心葉!」

「リッタ、ここはわたしに任せて、早くコノハの 手当てをするのです!」


 そう言って、ゆぅは一人で戦っている。僕の元に駆け寄って来るリッタは、すぐに呪文を唱えて僕の回復にかかる。すぐに痛みも引いて、キズも全て完治した。

 流石は回復魔法だ。


「ありがとう、リッタ。ゆぅもありがとう。ごめん、僕がしっかりしてなかったせいで」

「そんなことはいいのです! コノハはコノハの仕事をして下さい! そろそろわたしも魔力が持ちません」

「私も加勢するよ!」

「ごめん! すぐに終わらす。それまでどうか耐えてくれ!」


 そう言い残して僕は走った。ラナリオンを構えてアクアウルフの元へと。奴らの攻撃の準備はもう出来ている。でも僕にはもう関係ない。自分の失敗は彼女たちを危険に晒すんだ。もう失敗なんて出来ない!


「この際倒せればいい! 『サウザンドスピアー』!」


 ラナリオンを媒介にして放たれたその魔法は、地面に魔法陣を作り、細く長い槍を生み出した。千本の細い槍は奴らを貫き、後ろでリッタたちと戦うオオカミ供も巻き込み、その場にいたすべての敵を串刺しにしたのだった。

都合により、後2日間更新が出来ません。

お読み下さっている方々、申し訳ありません。

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